コラム

絶対王者・下野璃央と15歳の新星・松井沙麗。女性限定レース「KYOJO CUP」10年目の挑戦を関谷代表らが語る

KYOJO CUP 代表の関谷正徳氏(中央)、下野璃央選手(左)、松井沙麗選手(右)
KYOJO CUP 2025年シーズンの様子
KYOJO CUP 代表の関谷正徳氏(中央)、下野璃央選手(左)、松井沙麗選手(右)
KYOJO CUP 下野璃央選手
KYOJO CUP 松井沙麗選手

「ドライビングアスリート」たちが描く新たな地図。10周年のKYOJO CUPが切り拓く未来

2026年、設立から10年目の節目を迎える女性ドライバー限定のモータースポーツ「KYOJO CUP(競争女子)」。5月9日(土)と10日(日)に富士スピードウェイで行われる開幕戦を前に、同シリーズの代表を務める関谷正徳氏と、昨年の初代フォーミュラチャンピオンに輝いた下野璃央(しもの りお)選手、今年から新たに参戦する15歳の新星である松井沙麗(まつい さら)選手が、ル・ボラン編集部を訪れてくれた。選手たちを「ドライビングアスリート」と呼んで育成する同シリーズの現状と、ドライバーたちの今シーズンに向けた熱い意気込みをお届けする。

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「運転技術」に価値を。究極のイコールコンディションが育む「ドライビングアスリート」

KYOJO CUPは一昨年まではVITA(ヴィータ)車両で開催されていたが、シリーズ9年目となる昨年(2025年)からフォーミュラ車両へと移行した。関谷代表によると、使用される車両はかつてヨーロッパのFIA F4カップ用に作られたものであり、サスペンションやエンジンのパワーなど、使っている道具はすべて同一に揃えられているという。関谷代表は「車高とかキャンバーとかの数字も全部同じにして貸し出す。触っていいのはスタビライザーと内圧と、車高のリアだけ前後5ミリ。この3つだけ。あとは触らない。触らない分だけ、腕の差が出ます」と語り、究極のイコールコンディションの中で運転技術を磨く重要性を強調した。

関谷代表が10年前にKYOJO CUPを立ち上げた背景には、社会においてモータースポーツがスポーツとして正当に認識されていないという強い危機感があった。過去にスーパーフォーミュラやF3000においても、女性が表彰台に上がることはなかったという。「クルマで楽しむ・遊ぶというのはいいんですけど、スポーツとして見た時には、女性の活躍がどうしても不可欠です」と語り、これからは運転技術に価値をつけたモータースポーツとして、将来的にはオリンピック競技にも取り入れられるように活動していきたいとも付け加えた。

関谷代表は選手たちをレーシングドライバーではなく「ドライビングアスリート」と位置づけ、女性がこの業界に入ってこられるような「光」となる存在を育てようとしている。

初代フォーミュラ王者の自負。下野璃央が語るファン増加の手応えと、さらなる高み

昨年のフォーミュラ化初年度において、5大会10レース中8レースで勝利し、圧倒的な強さで初代チャンピオンに輝いたのが下野璃央選手だ。2021年から参戦を開始し、今シーズンで計5シーズン目を迎えるベテランでもある。今年1月にはドバイでの24時間レースにも参戦し、さらなる経験を積んできた。

下野選手は今シーズンに向けて、「今年はちょっと松井選手とか、強いライバルが増えたので難しいと思うんですけど、今年も絶対ぶっちぎりでチャンピオンを獲りたいなという気持ちでいます」と力強く連覇への意気込みを語った。また、スーパーフォーミュラとの併催によって観客層が広がり、トークショーなどのイベントも増えたことで、ファンが増加している手応えも実感しているという。

「日本のレベルは低くない」。ヨーロッパのレース文化を知る15歳が見せる、高い志

その下野選手の強力なライバルとして注目を集めているのが、今年新たに参戦する現役高校生ドライバー、15歳の松井沙麗選手だ。松井選手は5歳からカートを始め、直近の2年間はウィリアムズの育成ドライバーとしてヨーロッパで活動してきた実績を持つ。今年4月に限定ライセンスを取得し、満を持して母国でのフォーミュラデビューを果たす。

松井選手はヨーロッパのレース文化を肌で感じてきた経験を振り返り、「街中を歩いてたら普通にF1の服を着てる人が多い。まずそこが日本と違う」と環境の違いを語る一方で、日本のレベルは決して低くないと断言する。「自分がまずアスリートとして、ドライビングアスリートだという認識に変えたい。もっともっと女性がクルマに憧れるような、そういう存在に自分がなれたらなと思っています」と語り、日本のモータースポーツ界の現状を変えたいという高い志を見せた。

世界中の女性が日本に憧れる環境を。グローバル化が加速する「10年目のKYOJO

10年目の節目となる今年は、海外からの注目度も飛躍的に高まっている。昨年のトライアウトには海外から7名が参加し、オーストラリアからはF1アカデミー出身のジョアンヌ・チコンテ選手ら2名がシリーズ参戦する。オーストラリアのテレビ局が密着取材を行うなど、これまでの国内中心のイメージから、一気にグローバルな舞台へと変貌を遂げつつあるという。

今年の開幕戦は5月9日(土)と10日(日)に富士スピードウェイで開催される。フォーミュラクラスには20台がエントリーしているほか、復活となる「KYOJO VITA」も同月10日のワンデイで15台を集めて開催され、パドックには総勢約35名の女性レーサーが集結する予定だ。

関谷代表は日本のモータースポーツのレベルの高さに自信を見せ、「世界中のクルマ好きな女性が日本のKYOJOに憧れる環境を作っていく必要があります」と熱く語る。日本人が海外に憧れるのではなく、世界中の女性が日本を目指す環境を作っていくことが目標だという。今年は新たにFODでの配信も決定し、より多くの人々に彼女たちの戦いが届けられる環境が整った。富士スピードウェイが女性のレースの聖地として世界から認知される日を目指し、ドライビングアスリートたちの新たな挑戦が幕を開ける。

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フォト=KYOJO CUP、LE VOLANT

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