コラム

旧車の走りと佇まいは「足元」から。試走と計測で探るタイヤ空気圧の最適解【デューンバギー恍惚日記】第13回

メイヤーズ・マンクスの近況

2〜4月と3ヶ月にわたってお休みを頂いた【デューンバギー恍惚日記】だが、その第13回目を久々にお届けする。電気自動車が水すましのように音もなく走り回る令和の世に、浮世離れも甚だしき「メイヤーズ・マンクス」のストーリーを紡いでいこう。2017年末にレストア完了してから早くも9年の月日が過ぎていく今日この頃、2〜3月は家人が入院し、一時かなり重篤な状況だったのでクルマにかまけるわけにもいかず、4月に寛解をみた故、ようやくマンクスに触ることができた。今回の主題は、以前から気になっていたタイヤ空気圧である。

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タイヤ空気圧の適正値を予測する

1960年代半ばのCG誌記事によると、当時のアメリカに於けるマンクスの通常空気圧(クロスプライ・タイヤ)は、「前0.8:後1.1」であったという。ちなみに同時期、VWビートルに於けるメーカー推奨値は「前1.8:後2.0」。マンクスの車重が如何に軽いかがご理解いただけるだろう。

自分のマンクスはフロントが「アウトバーン製バイアスルック・ラジアル」、リアが「グッドイヤー・ポリグラスGT(復刻版クロスプライ)」を履いているが、従来なんとなく前後共2.0程度にしていた。これは、やはりVWビートルの空気圧を基準に考えていたこと、現代においては一般的とは言えないタイヤのビード落ち(タイヤがホイールから外れる)を恐れていたことから、「低いよりは高い方が安全だろう」と考えた結果である。

簡単なエアゲージを使って現在のタイヤ空気圧を測定。スナップインバルブのキャップを外し、エアが漏れないようにエアチャックをしっかりとバルブコアに押し当てる。リアは1.8kg/cm2だった。

しかし2.0は、上述の数字と比べていかにも高過ぎる。フロントは細いなりにラジアルだし、リアのポリグラスは構造的にはクロスプライだが、トレッド直下にファイバー製ベルトが巻かれている点はラジアルに近い。これらの条件を併せ、敢えて前後共にラジアルと考えて、0.2ぐらいずつ高く見積もり、自分のマンクスの適正空気圧は「前1.0:後1.3」程度と仮説を立てた。

空気圧を少しずつ下げてみる

さて、空気圧が気になりだしてからリアのトレッドをチェックしてみたら、案の定センター部の磨耗が目立つ。しかし「前1.0:後1.3」はいかにも低い。怖すぎる。そんなわけでいきなり下げるのではなく、少しずつ下げて走ってみて、自分なりの最適解を見つけることにした。

まずは2ヶ月全く触れていなかったマンクスの空気圧を簡単なエアゲージで測ってみたところ、やや減っていて「前1.5:後1.8」であった。まずはこれを「前1.35:後1.5」に下げてみる。トルクトラストDホイールに装着されているエアバルブは、一般的なスナップインバルブで内部に真鍮製のバルブコアがある。エアゲージのエア抜き用ポッチでバルブコアを押し下げるとエアは簡単に抜けていく。抜き過ぎると面倒なことになるので、少しずつ抜いて計測することを繰り返し、目標値に合わせることができた。取り敢えずこれで走ってみよう。

フロント・タイヤの空気圧は1.5から1.35に下げた。

平坦な道と短距離ワインディング

2〜3月の乗れなかった間、富山のガレージに保管していたマンクスを引っ張り出す。ガレージからマンクスを出す時、通常はロールバーとステアリングを握って軽々と押し、ガレージ外に出してエンジンを始動してきた。

しかし今回、空気圧を下げたマンクスを押してみると、思いのほか重い。特にフロントだ。ステアリングを切りながら外に出すのだが、タイヤがもっさりとした重みを伝えてくる。僅かこれだけのことでも空気圧の大切さがわかってきた。

空気圧を「前1.35:後1.5」に調整した状態で走行した時の画像。

2ヶ月ぶりにも関わらず4月の暖かい日だったお蔭様か、エンジンは容易くかかってくれた。舗装された平坦なカントリーロードを20km程度走り、最も好きなドライブコース、立山町の空いた直線から、脇道に逸れて短いワインディングを低いギアでゆっくりと登りはじめ、安全にアクセルを踏めるコーナーでは切り込みながら踏み込んでいくと、リアタイヤの仕事ぶりがお尻を通じて伝わってきた。特に横方向の動きが如実にわかる。これは下げて正解だった。反対にフロントはやや重さとダルな感じが増した。しかし総じて悪くない。次回はリアをもう少し下げてみよう。

タイヤの変化

タイヤの空気圧を下げると、見た目も変わってくる。特にリアだ。空気圧を下げればハイトが下がり、その分、サイドウォールがムッチリと張り出してくるのだ。ポリグラスGTのようなノスタルジックなスポーツタイヤは、サイドウォールがムッチリしているのがカッコ良い。ほんの僅かなことだが、道端でマンクスを停めてタイヤを眺めると、いかにもムッチリとお色気のある風情になっており、うっとりしてしまった。完全に変態おじいさんだが致し方なし。

リアに履いている「グッドイヤー・ポリグラスGT(復刻版)」のトレッド面。センターの細かいパターンが消えており、偏摩耗していることがわかる。これが是正できるだろうか。

リアの空気圧をさらに下げる

約1週間後の休日、再び空気圧の実験を再開。先週の走行で、リア・タイヤ(ポリグラスGT)の横方向の仕事ぶりが実感できたし、ムッチリしてきたアピアランスを強調したいとの想いが高まったので、リアの空気圧のみをさらに下げて、「前1.35:後1.35」とした。フロントは前回のまま。これで先週よりも標高の高い場所までワインディングを走ってみる。もちろん安全運転の範囲だが、横方向のタイヤの変形と粘りをさらに体感でき、上りも下りもマンクスの軽快さと俊敏さを楽しむことができた。高速運転をしないなら、これが最適解かもしれない。

空気圧を1.35にした時のポリグラスGTのサイドウォールとトレッド面。

市街地走行と若干の高速走行から見えたこと

タイヤ空気圧「前1.35:後1.35」でワインディングを走った翌日、同じ空気圧のまま、市街地を抜け、地元で「バイパス」と呼ばれている「国道8号線」、かなり流れの速い幹線道路を小一時間走って日本海方面に向かう。この時、リアが弾みがちであると共に、発進時や巡航時に引き摺るような感じがした。縦方向にタイヤの「歪み(たわみ)」が生じているような体感である。

基本的にタイヤは空気圧を下げることで衝撃を吸収しやすくなるが、タイヤ自体の「ダンピング効果(減衰)」が失われ、ゴムとコードの弾性のみで跳ねるようになるという。タイヤの剛性が空気圧の低さ故に維持できなくなり、路面の凹凸に対してバネのように過敏に反応する。

「引き摺り感」の正体、これは言うまでもなく、転がり抵抗の増大によるものだろう。接地面が縦方向に伸び、エネルギーロスも増大しているはずだ。ポリグラスGTはトレッド下にベルトがあるため、空気圧を下げすぎると、ベルトが路面に押し付けられる際の抵抗が強まるのだ。さらなる高速域ではスタンディングウェーブを引き起こす可能性もある。

筆者が所有する1969年式「メイヤーズ・マンクス」近影。2026年4月。

そんなわけで、自分のマンクスに於ける現時点でのタイヤ空気圧の最適解は、「前1.35:後1.5」である。リアの1.35は低過ぎた。また、今回試せていないが、フロント1.35は軽快さをややスポイルしていると感じたので、次回は「前1.5:後1.5」、或いは「前1.4:後1.4」を試す予定である。どうか続きをお楽しみに!

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