コラム

【独自取材】なぜデリカミニは異例の大ヒットを記録したのか? マーケティング陣直撃と試乗で紐解く「デリ丸。」誕生の軌跡【自動車業界の研究】《LE VOLANT LAB》

「デリカミニ」の大ヒットを支えるマーケティングの裏側を探る

思わず口ずさみたくなるメロディのCMでおなじみの三菱自動車のデリカミニについて、いかにヒットモデルになっていったのか? を中心に、クルマそのものの魅力はもちろん、巧みなマーケティング戦略がどのように生み出されて功を奏しているのか? といったヒットの要因について、マーケティングチームへのインタビューも交えて分析し、デリカという唯一無二のブランドの一翼を担うデリカミニが、今や三菱自動車の国内販売を牽引するモデルへとどのように成長していったのか? を今回は研究してみたいと思います。
【画像17枚】伝統の「デリカ」ブランド×最新技術!軽スーパーハイトワゴン「デリカミニ」成功の軌跡

60年近い歴史を持つ「デリカ」ブランドの系譜とデリカミニの誕生

三菱自動車の登録車においてNo.1の販売台数(2025年度等)を誇る人気の伝統モデルである“デリカ”の歴史は長く、1968年に誕生した初代モデルのデリカ(トラック)まで遡り(ワンボックスタイプのデリカコーチは翌1969年に登場)、その後、1979年に登場した2代目モデル(1982年に四輪駆動モデルが追加)と1986年に登場した3代目モデルは“デリカスターワゴン”を名乗り、1994年に登場して“デリカスペースギア”を名乗った4代目モデルを経て、2007年に“デリカD:5”として登場した現行の5代目モデルに至るため、60年近い歴史を持っています。

デリカD:5〔三菱自動車工業〕

デリカD:5はなんと! 登場から19年目の2025年度(2025年4月~2026年3月)に過去最高の国内販売台数2万6379台を記録、その質実剛健なリブボーンフレームによる堅牢で高い剛性の車体や、S-AWC(スーパー・オール・ホイール・コントロール)等によって悪路や荒天時にも確実に乗員と荷物を目的地まで運べる走行性能から、唯一無二のオールラウンドミニバンとして人気があり、まさにデリカの名前の由来通り、いかなる時もデリバリー・カー(Delivery Car)です。

登場から19年を経て過去最高の販売台数を記録するというのはにわかに信じがたいことで、まして日本市場の全体需要は2007年度の500万台超から2025年度は450万台程度と10%ほど減少していることを鑑みると、よりいっそう凄いことだと思います。

そして、2023年に今回の主役である初代モデルの“デリカミニ”が誕生、2025年のフルモデルチェンジで2代目モデルが登場して、デリカD:5やデリカD:2とともにデリカシリーズとして三菱自動車の主力ラインアップのひとつとして存在感を放っています。

デリカミニ誕生 〔三菱自動車工業〕

「デリ丸。」と同じ目!? 愛嬌とSUVの力強さを両立したデザインの秘密

デリカミニの兄弟姉妹車として、同じ三菱自動車の「eKスペース」と日産自動車の「ルークス」が挙げられ、この3車はクルマとしての基本(車体やパワートレイン等)が共通していて、日産自動車が開発し(三菱自動車も一部の開発やチューニングは実施)三菱自動車の水島工場(岡山県倉敷市)で生産されますが、いわゆるバッジを変えただけではなく3車3様の個性や魅力にあふれ、デリカミニはその中でも最もSUV色が強く、三菱自動車が培ってきた先進の四輪駆動技術が惜しみなく投入されています。

デリカミニのデザインについての第一印象は、タフなデリカのイメージと「デリ丸。」(三菱自動車公式キャラクター)同様の愛くるしいルックスが融和され、力強い迫力と愛嬌のある佇まいが程よくバランスしていて、もちろんサイズは軽自動車枠いっぱいの全長3395mm、全幅1475mm、全高1785mm(ルーフレール付は1800mm)、ホイールベースは2495mm、トレッドは1300mm(前)/1290mm(後)で前席も後席も十分に広い空間を持っています。

デリ丸。と後席シート

デザインの基本は直線基調で角ばっているのですが、ヘッドライトの「デリ丸。」と同じ目が印象をやわらげており、人間と同様に目の印象がクルマでも大きいことを再認識させてくれます。

自動車のデザインにおいて、ヘッドライト、つまり目の印象がどれだけ大きいかを認識させてくれる例として、ホンダの初代「NSX」の前中期と後期や3代目プレリュードと同インクスが挙げられ、どちらもリトラクタブルか固定式かの違いで、デザインの印象がかなり異なって感じられます。デリカミニも現行型にフルモデルチェンジされた後もエクステリアの印象があまり変わらないと感じるのは、全体的にデザインがキープコンセプトであることもありますが、特にヘッドライトの「デリ丸。」の目を思わせる特徴が変わっていないところが大きいと考えます。

デリカミニのグレード構成はわかりやすく、Tで始まる0.66Lの直列3気筒ターボエンジンモデル(最高出力64ps/5600rpm、最大トルク100Nm/2400~4000rpm)とGで始まる0.66Lの直列3気筒自然吸気エンジンモデル(最高出力52ps/6400rpm、最大トルク60Nm/3200rpm)、使用燃料はいずれも無鉛レギュラーガソリンでタンク容量は27L、CVT(自動無段変速機)が組み合わせられ、装備満載の最上級グレードPremium DELIMARU Package(プレミアム・デリマル・パッケージ)、中間グレードPremium(プレミアム)、ベースグレードの全6グレードがカタログモデルとして用意されています。さらにそれぞれ二輪駆動(前輪駆動)モデルと四輪駆動モデルがあります。

グレードやルーフレールの有無によって車両重量は970kgから1060kgまで90kg(スペック上)幅があり、燃費も自然吸気エンジンに二輪駆動が組み合わせられたグレードのWLTCモード21.0km/Lからターボエンジンに四輪駆動が組み合わせられたグレードの17.8km/Lと3.2km/L(スペック上)差異はあるものの、いずれも軽スーパーハイトクラスの競合モデルと比較して燃費は同水準だと言えます。

デリカミニ フロント&リア 〔三菱自動車工業〕

軽自動車初の先進機能を多数搭載! 三菱ならではのこだわりの走行性能

デリカミニは先進機能も満載で安全面では“三菱e-Assist”が強化され、グレードTとG以外には、軽自動車初の後側方衝突防止支援システム(後側方の衝突被害の軽減をアシスト、斜め後方や隣レーン後方の接近車両と接触の危険性がある場合はドアミラーのインジケーターを点灯、それにも気付かずに車線を変更した場合には注意を促すと同時にクルマが車線内に戻るようステアリングを制御)と三菱自動車において軽自動車初となる後側方車両検知警報システム(レーンチェンジアシスト機能付)と後退時交差車両検知警報システム、さらに広角高性能カメラとフロントとフロントサイドに搭載するレーダーで交差点の歩行者や対向交差車両を検知して衝突を回避する交差点アシスト機能も持つ衝突被害軽減ブレーキシステムも装備されます。

後側方衝突防止支援システム 〔三菱自動車工業〕

メカニズム面も磨きがかけられ、動力性能と環境性能の両立を図るべくエンジン部品のフリクション低減やCVT変速プログラムの改良、ショックアブソーバーには上質な乗り心地で定評のあるカヤバ製のProsmooth(プロスムース)が全グレードに初採用されていて、さらに四輪駆動モデルには専用チューニングが施され、フロントに高剛性スタビライザーとベアリングを採用、リアのブッシュ配置も変更するといった三菱自動車ならではのこだわりもみられます。

制御面では既にアウトランダーPHEV等にも採用されているモードごとにエンジンレスポンスやASC(Active Stability Control=アクティブ・スタビリティ・コントロール)などの制御を専用チューニングして5つのドライブモード(POWER / ECO / NORMAL / GRAVEL / SNOW)が選択できる機能が軽自動車として初めて搭載されています。

さらに、雪道などの滑りやすい路面で片側の駆動輪が空転した場合にスリップした駆動輪にブレーキをかけてグリップしている駆動輪の駆動力を確保して発進をサポートする“グリップコントロール”、また軽スーパーハイトワゴンでは唯一とされる急な下り坂でブレーキ操作をせず一定速度でスリップを防ぎ安全に降坂する“ヒルディセントコントロール”といった三菱自動車ならではの先進機能も持っていて、ブランドオリジナリティを明確に表しています。

5つのドライブモード 〔三菱自動車工業〕

ターゲットは女性とヤングファミリー! 販売台数を劇的に伸ばしたマーケティング戦略

初代デリカミニは、プロダクトとしてはeKクロススペースのビッグマイナーチェンジといった内容であったものの、名称をはじめいわゆる顔のフロントデザイン、ターゲットユーザーに対して絶妙に的を射ていたこともあって驚くべき販売台数の増加が見られます。

初代デリカミニの登場が2023年5月のためモデル切り替えの影響を受けないように、それ以前の2022年度(2022年4月~2023年3月)と登場翌年の2024年度(2024年4月~2025年3月)のeKおよびデリカミニの合算販売(登録)台数を一般社団法人 全国軽自動車協会連合会の確報で比較すると、2022年度が2万6379台で2024年度が5万4659台のため、実に2倍以上の台数に増えています。

ベース設計が同じモデルにおいて、ここまでの販売増を記録したことは極めて異例と言え、さらに2025年度(2025年4月~2026年3月)は6万4079台と2022年度に比較して2.4倍超のため、2025年10月から2代目モデルにフルモデルチェンジしていることを鑑みても、その人気と勢いは凄まじく、国内に三菱自動車の販売店がおよそ520店あるとすれば1店あたりの販売が10台/月を超え、これは日本のベストセラーモデルであるホンダN-BOX(同19万8893台、同およそ2060店)の約8台/月さえも上回るほどです。

デリカミニ CM 〔三菱自動車工業〕

セールス&マーケティングとブランディングの観点から分析すると、デリカミニの販売増へのマーケティング施策による効果は大きいと考えられ、今や“デリカミニ”はブランドとして世間に浸透しているとも捉えられます。

マーケティングの成功要因を分析すれば、人気の“デリカ”という三菱自動車の伝統モデルとつながっている名称の“デリカミニ”はもちろんのこと、質実剛健の印象が強い三菱自動車のデザインの中において愛くるしいフロントデザイン(顔)とマッチした「デリ丸。」というキャラクターを活用したプロモーション、キャッチーで一度聴いたら耳に残るCM、デリカミニ女子のインスタグラム等のSNS活用とマーケティングのアクティビティは幅広く、そして、ファミリー×アウトドアという訴求ポイントを明確にユーザーへ印象づけていると捉えられます。

1980年代にブームが起こったミラージュのエリマキトカゲCM等、三菱自動車のCMは以前から人々の記憶に残る名作も多く、伝統的にCMやプロモーションの成功がみられますが、今回のデリカミニもまさにそのひとつで、セールス面から考えれば、近年の自動車業界において最も成功したマーケティングの成果によってデリカミニは人気を博しています。

2026年5月には、5色のデリカミニのカラーバリエーションと共に5色の「デリ丸。」も登場する最新CM”デリカミニ「いろいろあるぞ!」篇“も公開され、マーケティングにおける「デリ丸。」の存在感は絶大です。2026年3月には『デリ丸。とあそぼう!』という絵本も発売され、かつてのパジェロに代表される質実剛健でオフロードに強い三菱自動車のコアファンとは違った層への多角的アプローチを「デリ丸。」が牽引していると感じます。

デリ丸。 絵本

開発陣に直撃インタビュー!「デリ丸。」誕生とプロモーション秘話

最高レベルでマーケティング戦略が見事に成功しているデリカミニについて、今回、マーケティングチームの平間さん、中村さん、金さん、萩原さんにインタビューの機会をいただきました。

この記事はLE VOLANT LAB会員限定公開です。
無料で会員登録すると続きを読むことができます。

注目の記事
注目の記事

RANKING