新世代モデルに隠された驚きの進化
ベントレーモーターズは2026年7月27日、9月に発表を控えている新型車、ブランド初の完全電動(BEV)ラグジュアリーSUV「Torcal(トルカル)」のディテールを一部明らかにした。ブランドを象徴するデザインシグネチャーのひとつである「ダイヤモンド」モチーフを、トルカルを通じて新たな時代へと継承するという。
【画像11枚】新世代へと受け継がれる究極のこだわりを、公開されたディテールから確認!
そのルーツは1920年代のメッシュグリル
ダイヤモンドパターンは、1920年代からベントレーを象徴するデザインとして受け継がれてきた。当時は、背の高いラジエターを飛び石や路上の異物から保護するため、ダイヤモンドパターンのワイヤーメッシュグリルが採用されていた。これがその伝統の始まりと言える。
その後、このモチーフはインテリアにも取り入れられ、クロスハッチ状のスイッチやコントロール類へと展開された。当時のベントレーの一部モデルには、操作性を高めるため、真鍮製スイッチギアに精緻なダイヤモンドパターンのローレット加工が施されていた。機能性から生まれたこのデザインは、やがてベントレーならではのデザインとして確立されていった。
以来、このダイヤモンドモチーフは、ダイヤモンドキルティングを施したシートや、Brooklands(ブルックランズ)クーペのメッシュグリルなど、ブランドを象徴するさまざまなディテールへと、形を変えつつ受け継がれてきたと言ってよいだろう。
近年では、ベンテイガのヘッドランプに見られるディテールや、コンチネンタル GTのインテリアなど、ベントレー独自の「Embedded Diamond(エンベデッド・ダイヤモンド)」デザインとして、さらに進化を遂げている。
トルカルのためのハンドカットクリスタルを製作
トルカルでは、この伝統を新たな世代に向けて再解釈。大胆かつ立体感ある造形と、宝石のような存在感を備えるとされるフローティング・ダイヤモンドグリルは、本来は機能性を追求するために生まれたグリルを、見る者を魅了する象徴的なデザインへと昇華させたものだという。
インテリアにも伝統は受け継がれており、トルカルのディスプレイ制作にあたっては、ベントレーのデザインチームはコンピューターグラフィックだけに頼るのではなく、ハンドクラフトならではの本物の質感と個性を追求したとのこと。
その実現のため、イングランド・湖水地方を拠点とする英国屈指のクリスタルブランドCumbria Crystal(カンブリア・クリスタル)と協業し、本プロジェクトのためだけに特別にデザインされたハンドカットクリスタルを製作。そのクリスタルを透過する光を取り込むことで、奥行きや動き、豊かな質感を感じさせる、トルカルならではのビジュアルシグネチャーを生み出したそうだ。
手仕事ならではの繊細な揺らぎや自然な個体差が、最先端のデジタルディスプレイに温もりと人間味をもたらし、ベントレーならではのクラフツマンシップをデジタル空間にも息づかせているのだと言えるのではないだろうか。
なお、ベントレーでは9月23日の世界公開に向けて、トルカルの情報を引き続き段階的に公開していくという。
【ル・ボラン編集部より】
ベントレー初のBEVとなるトルカルだが、注目すべきは完全デジタル化の中にあえて残された「手仕事の揺らぎ」だ。かつて同ブランド初のSUVであるベンテイガが、巨躯を感じさせない軽快な回頭性と極上の静粛性で我々を驚かせたように、このブランドは常に相反する要素を同居させてきた。1920年代のメッシュグリルに端を発する意匠を、クリスタルの透過光という最新のデジタル空間に落とし込む手腕は見事である。最先端のBEVでありながら、英国の伝統的な温もりを宿す。無機質になりがちな電動SUVに、確かな歴史の連続性を与える一台となりそうだ。












