ベントレーがグッドウッドで巻き上げた白煙! 伝説のスタートシーンを生み出した2人のプロフェッショナル
2026年7月の「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」において、ひと際観客の熱狂を呼んだシーンがある。それは、「ピムカーナ・ベントレー・スーパースポーツ」による、圧倒的なスタートライン・バーンアウトだ。今回、ベントレーモーターズは、この象徴的なシーンを切り取った“奇跡の1枚”の裏側に隠された、2人のプロフェッショナルによるストーリーを公開した。
【画像8枚】狭きコースでフルカウンター! ベントレー・スーパースポーツの極限走行を捉えた奇跡のショット
ベストポジションを求めて、熟練フォトグラファーの挑戦
スタートラインに佇むピムカーナ・ベントレー・スーパースポーツが、リアタイヤから大量の白煙を巻き上げ、車体を大きく横滑りさせながら飛び出していく——。この迫力ある瞬間を捉えたのは、10年にわたりベントレーのグッドウッドでの撮影を担当してきた自動車写真家、マーク・フェーゲルソン氏だ。
彼はスタートラインから約250m離れた、第1コーナー外側の撮影エリアに陣取った。わずかなスペースに約20人のフォトグラファーがひしめき合う激戦区で最前列を確保するには、周囲との良好な関係と少しの交渉力が欠かせないという。
「このような写真の成否は、撮影前の段階で半分決まっています。適切な場所、適切な時間に、適切な機材を持って立つこと。そして最後は、すべてをドライバーに託すのです」と語るフェーゲルソン氏。400mmの超望遠レンズと毎秒20コマの高速連写に対応したカメラを構え、彼はその一瞬を待っていた。
666馬力&後輪駆動を「電子制御オフ」で操る凄み
このモンスターマシンを操ったのは、レーシングドライバーでありスタントドライバーでもあるポール・リース氏。トラビス・パストラーナ主演の映像作品などでも活躍し、ピムカーナ・スーパースポーツの開発にも携わった彼は、この666psを発揮する後輪駆動モデルで、すべての電子制御を解除してスタートラインに立った。
車両にはアクセルとブレーキを同時に操作できる特別な改造が施されており、緻密な車両姿勢のコントロールが可能になっている。「ヒルクライムの路面は中央がやや高く、左右に傾斜しています。車体が自然に流れ始めたら、それを少し後押しするだけです」と事もなげに語るリース氏だが、狭いコースで観客が間近に迫る中でのこのパフォーマンスは、卓越した技術の賜物である。
2人のプロが交錯した「一度きりのチャンス」
リアタイヤから白煙が立ち上ると同時に、フェーゲルソン氏はシャッターを切った。ピムカーナ・スーパースポーツは大きな角度を保ったままドリフトし、グッドウッドの歴史に刻まれる一瞬が生まれた。
「ポールはスタートラインでタイヤを一気に燃やし、そのまま維持し続けました。途中で終わると思っていたのですが、最後まで続けてくれた。それがこの写真を生んだ最大の理由です」とフェーゲルソン氏は振り返る。彼にとっても、これほど大きな角度でスタート直後にクルマを横向きにできるドライバーは少なく、この1枚は過去最高の作品になったという。
「速いタイムを出せば誇りになりますが、一歩間違えればヒーローではなく失敗者になる世界です。ミスをすれば、自動車業界の仲間たちの前で恥をかくことになります。しかし、成功したときの喜びは格別です」と語ったリース氏。
卓越したドライビングテクニックと、それを逃さず切り取る撮影技術。プロフェッショナルたちの情熱が重なり合ったこの1枚は、ベントレーのパフォーマンスの極致を見事に体現している。
【ル・ボラン編集部より】
ベントレーといえば、静粛性に包まれた重厚なグランドツアラーという顔が広く知られる。だが、その本質はル・マンの栄光に象徴される野蛮なまでのモータースポーツへの情熱だ。
666psの後輪駆動を電子制御なしでねじ伏せるその様は、まさに「ベントレー・ボーイズ」たちが愛したスリルそのものである。極上のウッドとレザーに囲まれた贅沢な空間の裏側に、タイヤを白煙に変える暴力的な一面を隠し持つ。この二面性こそが、単なる高級車では辿り着けない同ブランドの奥深い魅力である。







