830psの自然吸気V12を左足と右手で操る、世界限定1499台のスペシャルモデル
2026年7月、フェラーリが世界限定1499台のスペシャルモデル「12チリンドリ・マヌアーレ」を発表した。V12搭載車としては実に20年ぶりとなる3ペダルMTの復活である。もっとも、その機構は8段DCTをベースにクラッチとシフトレバーを電子制御で結ぶバイワイヤー式だ。はたしてそれは単なる“演出”なのか、それとも真のMTなのか。モータージャーナリスト西川 淳氏がイタリアでの海外初試乗でその真価に迫る。
【画像39枚】美しいHゲートと3ペダルが復活! 世界限定1499台のフェラーリ「12チリンドリ・マヌアーレ」の内外装を写真で見る
8段DCTベースの「Manuale by Wire」は、ただの演出か、それとも本物か
フェラーリの12気筒モデルに、ふたたびシフトレバーとクラッチペダルが与えられた。V12フェラーリの3ペダルマニュアルモデルといえば、2006年の599GTBフィオラノ以来、実に20年ぶりの登場である。

その名もドーディチ・チリンドリ・マヌアーレ。12気筒のマニュアルという、自信しかないネーミングだ。もっとも、往年の機械式6段MTを単純に復活させたわけではない。標準12チリンドリの8段DCTをベースとし、下から6段だけを使って、H型シフトゲートを持つレバーとクラッチペダルを電気的に結びつけた「Manuale by Wire」システムだ。レバーもペダルも以前のように機械的に変速機とつながっているわけではなく、ドライバーの入力をセンサーが読み取り、精緻な制御を介してパワートレインへと伝える。

正直に言って、マニュアルの復活に歓喜したあとに、そのシステムの説明だけを聞くと、ちょっと醒めた気分になってしまった。なんだ、結局のところパドルシフトの代わりに、レバーとペダルを置いただけ、ではないか。昔のMTらしい気分を演出するだけの“なんちゃって”マニュアルではないのか、と。
ステランティスのテストコース“バロッコ”で量産モデルに乗るまでは、そう思っていた。ところが答えは、まったく逆だった。ほとんど本物のマニュアルだった。カニカマではない。もはやカニ身である。
雑につなげばエンストし、回転が合わなければゲートが拒む。バイワイヤーとは思えぬ手ごわさ