国内試乗

【国内試乗】「ボルボ・122S/S90」いまあえてクラシックボルボに乗る!

「古い車両であっても故障の心配が少ない車両に乗りたい!」そんなユーザーの声に応えてクラシックカーからちょっと古いボルボまでをレストアして販売する「KLASSIC GARAGE」。今回は、そのリフレッシュプロジェクトで仕上げられた2台に試乗してみた!

ひと味違った選択肢を求めるなら

堅実な作り、頑丈でタフという北欧プロダクトのイメージ色濃いボルボに惚れ込んで、長く乗り続けている人は、世界にはもちろんここ日本にも少なくない。しかしながら、いくら頑丈だと言っても相応の整備は必要だし、安定したパーツ供給は不可欠だ。

VOLVO 122S/1970年式122Sアマゾン。ワンオーナー車で走行距離は35万kmを超えるが、パーツの供給もあるそうなので、メンテナンスをしっかりすればこのように走り続けられるのだ。

そんな背景からボルボ・カー・ジャパンが2016年8月に立ち上げたのが、ボルボクラシックガレージだ。ここでは、おおよそ1990年代後半までに販売されたボルボ車の整備やレストア、そして目下メインとなっているリフレッシュを行った車両の販売を手掛ける。実はこの手のサービスをインポーター自らが手掛けているのは、ここボルボだけなのである。

VOLVO 122S

今回は、その販売車両2台を味見することができた。まず試したのは1970年式、つまり最終型の122Sアマゾンである。

VOLVO 122S

走行距離、実に35万5千kmというこのクルマも、ボディはほぼ新車当時のままだというから驚いた。柔らかな丸みを帯びた体躯に「京51」のプレートがいい雰囲気だ。室内を見ると、シートベルトはちゃんと3点式である。実はこのアマゾンこそ3点シートベルトを装備した世界初のクルマでなのだ。ダッシュボード上にもソフトパッドが貼られた、安全への配慮がボルボらしい。

VOLVO 122S

走り出すと、いわゆる“鉄板が厚そう”な堅牢なボディが、まさにボルボ。周囲の視界の良さも、この頃からの美点だったと解る。
2Lエンジンは、さすがに額面通りの最高出力118psは体感できないが、トルクが厚く、しかも神経質なところのないクラッチや軽く決まる4速MTのおかげで、気構えることなく走らせることができる。ハンドリングは古臭いけれど、それも味のうちである。

VOLVO・S90/オーナーの中には新車から乗り続けていた740が老朽化してV50に乗り換えた方が、リフレッシュした740を見て再購入した方もいるとか。こちらのS90はリフレッシュ後、225万円で販売中。

このアマゾン、日本に輸入されたうちの約1割、120台ほどが現存しているという。実際、そのボディはサビ腐りが少なくパーツもほとんど出るという。クラッチも「こんなに要らないだろう」というくらい余裕があり、まず焼けたりしないというから、クラシックカー入門に最適かもしれない。

VOLVO S90

続いて乗り込んだのはFR時代最後を飾った1998年式S90クラシックだ。スクエアなボディは今見ると、とてもスリーク。乗り込んでもコンパクトに感じられる。分厚く身体を包み込むシートクッションは、まさに当時のボルボ。白木の本木目パネルも美しい。

VOLVO S90

正直、走りっぷりには驚かされた。直列6気筒3Lエンジンは粛々と回り、4速ATも滑らかな変速ぶりで上質なフィーリングを味わえる。ハンドリングもFRということで操舵感が澄んでいるし前後バランスも良好。乗り心地も重厚で、イメージしていたより断然心地良かった。名車と言われるW124にも遜色ない走り、もっと評価されていいと思ったほどだ。

VOLVO S90

販売車両として人気なのは、やはり240。より走行感覚が新しく使い勝手もいい740ともども、デザインや雰囲気に惹かれた若いオーナーも少なくないという。また、安心して乗れそうだと、過去に乗っていたモデルに帰ってくるベテランも多いというから面白い。

VOLVO S90

もちろん、すべてが新車と完全に一緒とまでは言えないものの、それに近い安心感で楽しめるのは確か。ボルボクラシックガレージは、クルマとともにあるライフスタイルに、ひと味違った選択肢ともたらすプログラムなのだ。

フォト=郡 大二郎/D.Kori ルボラン2020年6月号より転載
島下泰久

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