英国紳士の“隠れた美学”を表現
ロールス・ロイス・モーター・カーズは2026年7月8日、英国のクラフツマンシップとロンドンのテーラリングの本場である「サヴィル・ロウ」の伝統からインスピレーションを得たというワンオフモデル、「ロールス・ロイス・ゴースト・サヴィル・ロウ」を発表した。
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サヴィル・ロウの伝統を体現したエクステリア
このサヴィル・ロウは、ベースモデルにゴースト・エクステンデッドを採用しており、2026年のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで公開される予定である。サヴィル・ロウの伝統に通じた愛好家たちの知見を取り入れて開発されたこのモデルは、エレガントなスーツを纏った自動車として構想されている。
エクステリアは、ミッドナイト・サファイアとイングリッシュ・ホワイトのツートーンカラー仕上げ。ネイビー(スーツ)と白(ドレスシャツ)という控えめな組み合わせは、1800年代初頭に「近代メンズウェアの父」と称されるボー・ブランメルによって大衆化され、サヴィル・ロウに最高級の仕立て屋を集める契機となった、英国テーラリングの基礎である。
イングリッシュ・ホワイトのエリアには、手描きのシルバー・フィーチャーラインが引かれているが、これはツートーンを分断するものではなく、白いシャツに映えるカフリンクスや高級時計などの、さりげないジュエリーのコントラストを表現したものだという。足元には、ボディ同色のセンターキャップを備えた22インチ9スポーク・パートポリッシュ・ホイールが装着されている。
裏地のような「隠された刺繍」とインテリアのディテール
インテリアにもテーラリングの要素が反映されている。最大のポイントとなるのは、リア・センターアームレストの内側に隠されたビスポークの刺繍だ。テーラードジャケットのカラフルな裏地を思わせるこの意匠は、グッドウッドのロールス・ロイス本社の中庭にある四角い木々とその影を平面図で表現している。
この刺繍には、織物の糸の交差に着想を得たという専用のステッチ技術により、レザーに織物をはめ込んだような見た目と質感が与えられた。7色で構成され、25万針、1,830メートルの糸を使用して9時間かけて制作されたこのアートワークは、同社史上最も難易度の高いシングルフレームの刺繍とされている。
シートはネイビー・ブルーとアークティック・ホワイトのレザーで仕上げられ、カーペットやラムウールのフロアマット、シートベルトもネイビー・ブルーで統一されている。対して、ドアやシートのパイピング、コントラストステッチ、刺繍されたRRモノグラムにはセルビー・グレーが用いられた。
シートには、同社初となるピンストライプステッチ(セルビー・グレーの垂直なランステッチ)が施されている。各シートバックにはアークティック・ホワイトのインサートがあしらわれ、ジャケットの胸ポケットに挿された白いポケットチーフを想起させる。この4つのインサートには、それぞれ1万6,600以上のステッチが、織物のように2方向に、トーン・オン・トーンで施された。
フェイシアやステアリングのスポーク、ドア上部には手触りの良いオープン・ポア・ホワイト・ウッドの突板が、センターコンソールのリッドにはブラック・ウッドが使用されている。さらに、アークティック・ホワイトのステッチで仕上げられたレザー巻きのインジケーターストークや、各色レザーで巻かれたボリュームコントロールおよびクライメートコントロールなど、細部までテーラリングの思想が貫かれている。
4つのドアシルには、隠された刺繍と同じデザインのビスポークのイルミネーテッド・トレッドプレートが備わり、車内には専用カラー(ネイビー・ブルーのキャノピー、セルビー・グレーの縁取り、アークティック・ホワイトのハンドル)のビスポーク傘が収納されている。
ロールス・ロイスとサヴィル・ロウの歴史的な繋がり
ここで、ロールス・ロイスとサヴィル・ロウの繋がりについて触れておこう。それはブランドの黎明期にまで遡る。
ロールス・ロイスは1905年、サヴィル・ロウ近郊のコンデュイット・ストリートに初のショールームを開設した。創業者のチャールズ・ロールス自身も、学生時代には服をエンジンオイルで汚して「ダーティ・ロールス」と呼ばれた一方で、フォーマルな場では銀の懐中時計に至るまで完璧な身なりをしていたことで知られ、ファッションに強いこだわりを持っていた。
「ビスポーク(あらかじめ注文された)」というサヴィル・ロウと密接に結びついた言葉が、今日のロールス・ロイスの中心的な価値観となっていることは、両者の歴史的な親密さを物語っていると言えるだろう。
ロールス・ロイス・モーター・カーズのビスポーク責任者であるフィル・ファーブル・ド・ラ・グランジュ氏は、同モデルについて次のようにコメントしている。
「ロールス・ロイス・モーター・カーズとサヴィル・ロウは、ラグジュアリーに対する共通の理解によって結ばれています。両者とも、最高のオーダーメイドは個人から始まるという原則に基づいており、そのアイデアは卓越したクラフツマンシップ、細部へのこだわり、そしてビスポークへの献身を通じて命を吹き込まれます」
「ロールス・ロイス ゴースト・サヴィル・ロウは、お客様の好み、個性、そして野心を深くパーソナルに表現するために何世代にもわたって費やしてきた、2つの英国機関の間の静かな親密さを称えるものです」
【ル・ボラン編集部より】
ロールス・ロイスが標榜する「ポスト・オピュレンス(脱装飾)」の哲学は、このサヴィル・ロウ仕様においてひとつの極致を迎えた。ネイビーとホワイトという禁欲的な外装に対し、アームレスト裏に25万針もの刺繍を潜ませる様は、まさに英国紳士が裏地にこだわるダンディズムそのものだ。「ダーティ・ロールス」と呼ばれた創業者の泥臭い情熱と、完璧な身なりを求めた美学。相反する二面性が、ビスポークという仕立ての技術によって静かに、しかし雄弁に現代のゴーストへと受け継がれている。
【画像16枚】ロールス・ロイスが仕立てた究極の「ゴースト」を細部まで確認する



















