モデルカーズ

アオシマ伝説の逸品、フォルテクスのワイヤーホイールつきプラモ「センチュリーLタイプ」はこう作れ!【モデルカーズ】

一気に近代化した初代・後期型のロング版

トヨタの乗用車ラインナップにおける最高の地位に君臨し続けてきたセンチュリー。その登場を語るには、まずクラウンエイトというモデルの存在を知る必要があるだろう。戦後日本の自動車産業が著しい成長を見せるにつれ、政財界人が乗るのに相応しい、アメリカ製乗用車と互角の大きさやエンジンを持つ車種の誕生を望む声が高まったのだが、これに応えてトヨタがデビューさせたのが、クラウンエイトであった。これは当時のクラウン(2代目・S40型系)の幅と長さをそのまま拡大し、V8エンジンを載せたものだ。

クラウンエイトは1964年の登場だが、3年後の1967年、その地位を受け継ぐ新規車種として送り出されたのがセンチュリーだったのである。この車名は、この年が創業者・豊田佐吉の生誕100周年であることにちなむ。クラウンエイトの型式名VG10に対しセンチュリーはVG20となるが、エンジンが拡大版であること(2.6Lから3Lへ)以外つながりはなく、完全な新設計。全長5m超のボディは、当時のアメリカ車の雰囲気と和風ムードを巧みに融合したもので、コロナ以降のトヨタのテーマであるアローラインも取り入れられている。

メカニズムも非常に凝っており、特にフロントサスペンションは空気ばねを持つオレオダンパーとトレーリングアームの組み合わせを採用、このためタイロッドがエンジン上に位置していた。リアはトレーリングアーム/コイル式。初代センチュリーは1997年まで30年に亘り生き延びたが、途中幾度か変更を受け、エンジンは3.4L、4Lへと順次拡大、サスペンションもコンベンショナルなものに改められている。型式がVG40となったのは1982年で、このときフロントにコーナリングランプを設けるなど、スタイルも近代化された。

独特の存在感を放つセンチュリーだが、プラモデル化としては、アオシマ製1/24スケールのキットがあるのみだ。これは実車が2代目当時にリリースされたもので、ロングホイールベース版のLタイプ(VG45型、1990年追加)を再現したものである。ここでお見せしているのはこのアオシマのキットを制作した作品だが、ひと目で分かる通りノーマルではない。ハイソカーブーム当時に人気のあった、フォルテクスのワイヤーホイール(フォルテクス・インペリアル)を装着したものだ。

これはワイヤー風キャップではなく本格的なワイヤーホイールであり、その華麗なルックスに今もファンが多いのだが、アオシマはこのホイールをエッチングで再現、センチュリーと組み合わせて、2011年に発売したのである(他にクラウンとセドリックもあり)。このエッチングパーツは、スポークが手前と奥で交差するワイヤーホイール独特の構造を再現した優れものなのだが、そのため制作が難しく、手を付けられないまま死蔵している人も少なくないようだ。そこで、このホイールの(比較的)スムーズな作り方を以下ご紹介しよう。

エッチングホイール攻略法!
まず、センターのメッキパーツをゴールドにするには、クリアーイエローをクリアーオレンジと混ぜて塗るとよい。スポークの切り離しはエッチング専用ニッパーで行うが、うっかり曲げてしまわぬように注意する。ヤスリを当てられないので切り口はニッパーで極力綺麗にした後、治具パーツで挟んで山型になるようプレス。下になる側の治具とエッチング、それぞれのアルファベットを合わせてセットする。接着には2液タイプのエポキシ接着剤を使った。瞬着では白濁や誤接着のおそれがあるからだ。2層目までをハブに組み、スポークをリムの溝にはめてから接着剤を流し込む。当然汚くなるが、この部分はリムを重ねるので隠れて見えなくなる。ただし接着剤の付けすぎには注意。リムが重ねられなくなる。

3、4層目も同様に治具でプレスするが、それだけでは組み立てづらい。さらに指でスポークを曲げて山型を一旦強くしておくと作業しやすくなる。E11を斜めにしてスポークの3、4本を所定の隙間に入れ、入れた分が抜けないよう注意しながら、他のスポークをピンセットで1本ずつ入れるべき隙間に入れていく。全部入ったら裏返して、スポークの先をリム裏に彫られた溝に入れるが、所定の溝にハマるようクセが付く程度でOK。リム(A3、4)を重ねる時に固定すれば良い。接着はキット指示のスポーク先端ではなく、中心部へ接着剤を流す方が簡単だ。この上にまたパーツを重ねるので、固まったら余分な接着剤は削り取っておく。

下左の画像が3層目スポーク(E11)取り付けに成功した状態。リム裏の溝は4つずつでワンセットに彫ってあるが、このスポークは各セットの中で一番左の溝にハメる。次に、同様のやり方で4層目を取り付けて中心部で接着。スポークの入る隙間は当然先程より狭いので、折らないように注意して作業する。4層目(E12)スポーク先端は、前述のワンセットの溝のうち左から2本目、E11スポークのすぐ隣にハメる。センターロックはE12を固定後に取り付けよう。5層目スポーク(E07)が一番下にくっ付けばホイールの出来上がり。リム裏の溝4本ワンセットのうち右側の2本ずつに、このE07の各先端がハマることになる。

シャシーは特にリアルなものでないので、缶スプレーで簡単にペイント。ブレーキはシルバーで塗装指示されているが、スポークの隙間は黒い方が良いと考え、黒に塗っておいた。タイヤを取り付けてみるとボディからはみ出すので強引に調整。まず、ブレーキに組んだリベットパーツ先端を前2mm、後2.5mmカット。リアはさらにホイール側の車軸受け部分を1mmほど削り込んだ。まず普通のナイフでヘリを薄く削り、面積が少なくなった所を平刃ナイフで削る。この作業を繰り返したが、組み上げたホイールに影響が出ないよう力を掛けないための処置だ。ポリキャップも部品にセットした状態で一緒に薄く削る。必要なら前輪にも同様の加工をすると良いだろう。

その後10年以上が経ったが、このホイールが付いたバージョンの再販は行われていないようだ。上手く作れれば素晴らしい出来となるだけに、再びのリリースが望まれるが、もし実現するならその時は、組み立てに失敗したときのために予備のエッチングをつけてもらえるとありがたい。

作例制作=秦 正史/フォト=羽田 洋 modelcars vol.189より再構成のうえ転載
LE VOLANT web編集部

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