ボクらのヤングタイマー列伝

ボクらのヤングタイマー列伝:第7回『ボルボ480』 ボルボの印象を打ち破る衝撃的なリトラクタブルライトと低いノーズ

遠藤イヅルが自身のイラストともに1980年代以降の趣味車、いわゆる”ヤングタイマー”なクルマを振り返るという、かつて小社WEBサイトでひっそり!? 連載していた伝説の連載、その進化版がこの『ボクらのヤングタイマー列伝』です。第7回は、連載初登場となるスウェーデン車……ということで、ボルボ480をピックアップ。はい、ボルボ850でもサーブ900でもなく、ボルボ480ですよ!

ボクらのヤングタイマー列伝第6回『アウディ100』の記事はコチラから

ボルボの印象を打ち破る衝撃的なリトラクタブルライトと低いノーズの採用

居心地の良い内装、高い品質、充実した安全対策を誇るボルボは、我が国でもとても人気があるブランドです。日本に”ステーションワゴン文化”を根付かせた立役者であると言ってもよいでしょう。ボルボといえばセダン、ワゴン、SUVなど実用車が多いメーカーです。でも長い歴史の中で、ある共通点を持った変わったモデルを、まるで思い出したかのように作ってきました。それが1960年代のスポーツカー『P1800』の屋根を延長した『1800ES』、今回取り上げる『480』、そして最近では『C30』の3台……と書けば、もうその”共通点”にお気きかと。そう、共通点とは”3ドアスポーツワゴン風ボディ+ガラスハッチ”であります。

1985年に発表された今回のお題となる480は、日本にも480ターボが正規で輸入されていたので覚えている方も多いはずです。ボルボの印象を打ち破るリトラクタブルライトと低いノーズの採用は、衝撃的でしたし、むろん要素のひとつであるガラスハッチも備えていました。ブラックアウト処理されたテールライトは、今見てもとてもスタイリッシュです。

でも480はスウェーデン製ではなくダッチ・ボルボ(オランダ製ボルボ)であること、元は北米向け車種だったのに北米では販売されなかったこと、実はボルボ初のFFだった(850が最初というイメージがありますが違うのです!)こと、エンジンがルノー製1.7リッターOHC(R5にも搭載)だったこと、480は単独車種ではなく『440/460』というサルーンの派生スペシャリティカーだったこと……など、知名度のわりに、クルマ自体の成り立ちはあまり知られていないかもしれません。

ちなみにダッチ・ボルボ(480製造時は『ボルボ・カーズBV』。その後『ネッドカー』になり、現在はミニを生産)の前身は、欧州有数のトラックメーカーとして盛業中で、CVTの基礎を作ったことでも知られる『DAF(ダフ)』です。同社が1970年代中盤にボルボに買収された際は、DAFの車種『66』を『ボルボ66』として、DAFが開発中だったモデルは『ボルボ340/360』として発売しました。そして1988年には、340/360シリーズ後継となる純ボルボ設計の5ドアサルーン『440』が登場。派生車種より本丸車種が3年もあとに出るという珍しいケースとなりました。翌1989年には上位版で完全にセダンボディとした『460』を追加。さらに1994年にはマイナーチェンジを行い、『850』に近い意匠になりました。今回のイラストにもそれを描いてみましたが、”寸詰まりの850じゃなかったの!”って思った方、それはぼくの絵の技量がないのではなく、本当にこんな”ミニ850″的なクルマだったからなのです(笑)。

なお、440/460はその後S40/V40にバトンを渡します……ああ、ついに誌面が尽きましたのでまとめてしまうと、”そうか! 480のベースだった440って、S40/V40の先祖なのか! ということは、その兄弟車三菱カリスマの先祖でもあるんだ!”って無理矢理思って頂けたら、とっても嬉しいです(笑)。

カー・マガジン462号より転載

この記事を書いた人

遠藤イヅル

1971年生まれ。東京都在住。小さい頃からカーデザイナーに憧れ、文系大学を卒業するもカーデザイン専門学校に再入学。自動車メーカー系レース部門の会社でカーデザイナー/モデラーとして勤務。その後数社でデザイナー/ディレクターとして働き、独立してイラストレーター/ライターとなった。現在自動車雑誌、男性誌などで多数連載を持つ。イラストは基本的にアナログで、デザイナー時代に愛用したコピックマーカーを用いる。自動車全般に膨大な知識を持つが、中でも大衆車、実用車、商用車を好み、フランス車には特に詳しい。

遠藤イヅル

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