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【国産旧車再発見】国産ダックテールの始まり、最新デザインを採り入れた意欲作。1971年型三菱・コルト ギャランGTO 1600MR

フォード・マスタングが切り開いた市場に国産車として初めて参入した三菱ギャランGTO。中核セダンのギャランと共通性を高めつつ4気筒DOHCエンジンを専用設計した意欲作。排ガス規制とともに消えたMRを見直したい。

スポーツクーペの最新デザインを採り入れた意欲作

1963年に開催された第1回日本グランプリで、乗用車とレーシングカーの違いを初めて理解した日本。その結果を受けて、翌年の第2回GPではフォーミュラーカークラスがメインレースになる。ところが、ツーリングカーGT-Ⅱクラスにレーシングカーと言えるポルシェ904カレラGTSが参戦し、スカイラインを寄せ付けない活躍で、第3回GPレースはスポーツカークラスに変更されてしまう。

第3回以降、日本人の関心はスポーツプロトタイプへ向かって行くが、そこに加わらなかったのが三菱自動車。第2 回グランプリT-Ⅲクラスでコルト1000が1位から4位までを独占。第4回グランプリにはコルトのエンジンを用いたフォーミュラカーで参戦し、見事1位2位を獲得する。その後も国内フォーミュラレースで連戦連勝を遂げた三菱コルトF 2は、1968年にDOHC16バルブのR39型エンジンを積むF2Bに発展している。

この年、三菱は市販車コルトの後継車としてギャランを開発していた。その最中にデザイナーが描いた2ドアクーペが発端となって、新たなスポーツクーペも同時進行。その結果、コルトギャランGTX-1が1969年の第16回東京モーターショーに登場した。GTX-1はコルトF2B用DOHC16バルブエンジンを搭載して、ファンから熱烈な支持を受けた。だがレーシングエンジンらしく実用性がない。急遽ヘッドを新開発して、4G32型DOHCエンジンが完成。翌年にギャランGTOとして新発売されたのだ。

GTOの発売は国内メーカーに大きな刺激を与えた。アメリカでマスタングが大ヒットしたことで、スペシャルティカーというジャンルが確立する。カマロやファイアーバードといったライバルが矢継ぎ早に誕生した。この流れを採り入れたのがGTOだったのだ。

スタイルも斬新だった。同年に急遽発売されたトヨタ・セリカが古典的なノッチバッククーペだったことに対して、GTOはダックテールを採用したファストバッククーペだ。その人気は高く、セリカは後にLB(リフトバック)を追加したほどだった。

【写真18枚】スポーツクーペの最新デザインを採り入れた意欲作、三菱コルトギャランGTOの詳細を写真で見る

GTOに搭載されたエンジンは1.6リッターのDOHCとSOHCの2種。DOHCはMR、SOHCがMⅠ、MⅡとグレード分けされた。もちろん注目されたのはMRだが、その後やってくる排気ガス規制により1972年の段階で生産を終了。実に835台しか造られなかった。代わりのトップグレードは2リッターSOHCのGS-R。当時の流行だったオーバーフェンダーを装備した姿が実に印象的だった。

筆者が初めて接したGTOは、オーバーフェンダー装備のGS-Rだった。今から30年ほど前のことで、当時はすでにDOHCやターボエンジンが当たり前。2リッターSOHCにオーバーフェンダーというのが過剰装備に思えたもの。ところが運転すると低速から扱いやすく、一般道であれば現役と言える速さだった。だから、DOHCエンジンのMRがどんなものか興味津々だったことを記憶している。

この時代の1.6DOHCにはセリカやTE27レビン・トレノ用の2T-G、いすゞ117クーペ用のG161W、アルファロメオのAR、ロータスインカムなどがある。それぞれに特徴があるが、共通しているのは高回転域の軽やかなフィーリング。右足の動きにレスポンス良く反応してパワーを上乗せしていく、DOHCエンジンならではの特性だ。これらの中でGTOのDOHCエンジンだけ接したことがなかったので、とても楽しみにしていた。

コルトフォーミュラで培ったDOHC技術を転用して生まれたMRが備える実用馬力

今回取り上げたGTOはSさんが10年も探し続けて見つけた1台。スーパーカーブームの頃からGTO以外目に入らなかった鈴木さんなので、納得できるクルマが見つかるまで腰を据えて探した。それだけにクルマの状態は良い。購入後にサスペンションブッシュなどのリフレッシュを続けた。だがエンジンはガスケットを始めとする部品が入手できず、オーバーホールできない。オドメーターの表示は9000km台だが1周しているだろう。

だが、しっかり調整されたDOHCエンジンは低速からトルクを発生して非常に乗りやすい。昔はよく回転馬力のホンダに対して実用馬力の三菱なんて表現が用いられた。このエンジンはまさにそんなセリフが似合う。神経質なはずのDOHCエンジンであるのに、スロットルペダルを踏む右足に繊細さは不要。どこから踏んでもしっかり車体が前に出てくれる。

4000r.p.m.を超えたあたりからは、明確にトルクが増し鋭さを加えながら馬力を上乗せしていく。下から扱いやすく上で鋭さを増す印象は、インジェクション仕様になった近代のDOHCエンジンとどこか似ている。キャブレターエンジンなので低速からガバッと踏むことさえしなければ、いたって平和に運転できるのだ。

エンジンとともに好感を持てたのがサスペンション。ブッシュを交換しただけで純正のままなのだが、今でも安心できるだけの剛性感と接地性を備えていた。この年代の国産車だと、ステアリング操作に対してクルマの動きがちぐはぐになってしまうことがある。サスペンションの動きに曖昧な部分があるため、速度が乗るとクルマがどこに行ってしまうか不安になる動きを示すことが多いのだ。

ところがこのGTOは、とても安心してステアリングを操作できる。もちろんコーナーを攻めるような走りはしていないが、舵角に対して正確にノーズが反応し、4輪の接地感が途切れないので自信を持ってコーナーに侵入できそうだ。それにボディ。段差やうねりのある路面でも、ボディパネルがバラバラに動くようなことはなく、適度にいなしてくれる。ドシンバタンというのが当たり前な印象の国産旧車だが、そんな野暮さは皆無。ボディ剛性が保たれサスペンションが正常に機能すると、これほどしなやかな印象になるものかと目から鱗が落ちる思いだった。

【specification】三菱・コルト ギャランGTO 1600MR(1971年型)
●全長×全幅×前高=4125×1580×1310mm
●ホイールベース=2420mm
●トレッド(F:R)=1295mm:1285mm
●車両重量=980kg
●エンジン形式=水冷直列4気筒DOHC
●総排気量=1597cc
●圧縮比=9.5:1
●最高出力=125ps/6800r.p.m.
●最大トルク=14.5kg-m/5000r.p.m.
●変速機=5速M/T
●懸架装置(F:R)=ストラット:リーフ・リジッド
●制動装置(F:R)=ディスク:リーディングトレーリング
●タイヤ(F&R)=165SR13
●新車当時価格=114万5000円

Text:増田 満 PHOTO:内藤敬仁 カー・マガジン493号より転載
CAR MAGAZINE編集部

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