ニューモデル

54年ぶりのソフトトップを採用した「フェラーリ ローマ スパイダー」が日本初お披露目!

そもそもフェラーリ ローマにはオープントップのプランはなかった

フェラーリ・ジャパンは5月18日、東京ベイエリアの特設会場で、『フェラーリ・ローマ・スパイダー』を日本初お披露目した。こちらはもちろん車名の通り、2020年に登場したフェラーリ・ローマのオープンモデルとなり、注目すべきはソフトトップであることだろう。

少し歴史を整理しよう。2008年のパリ・サロンでデビューしたのが、V8をフロントに搭載する初のフェラーリであるカリフォルニア(下写真)で、これまた初となる電動ハードトップを備えオープンにもクーペにもなるモデルとなっていた。これを機会にフェラーリのオープンモデル(=スパイダー)はクーペも別に残しつつ、V8リアミッドシップのフェラーリも2011年の458スパイダー以降、全てハードトップを採用。その後、V12の812GTSやV6の296GTSもその流れを受け継いだ。ということは、今後はスパイダー=ソフトトップ、GTS=ハードトップと考えるのが妥当だろう。ちなみにカリフォルニアはその後ポルトフィーノへとフルモデルチェンジし、最近まで進化版のポルトフィーノMが販売されていた。

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話を元に戻すと、そんな中で今年3月にモロッコのマラケシュで発表されたローマ・スパイダーは、フロントエンジン・フェラーリでは1969年の365GTS4以来、実に54年ぶりとなるソフトトップとなったのだ。その経緯はこれまで触れられてこなかったが、今回の発表会で明らかになった。

実は当初、ローマのオープンモデルは予定されていなかったそう。しかしある時、販売のトップであるエンリコ・ガリエラ氏とデザインのトップであるフラヴィオ・マンゾーニ氏が語りあっている時に生まれたのが、スパイダーの原点となったのだという。フェラーリ・ジャパン代表であるフェデリコ・パストレッリ氏(下写真)は、このエピソードをこう振り返っている。

「長年の友人でもあるふたりがワインを飲みながら夢を語っている時に、どういったモデルが市場にあうか、という話になりました。そこでデザイン的にローマのオープンモデルがあったらいいのではないかとなり、そこでマンゾーニが『ソフトトップであるべきだ』と述べ、彼はその場でスケッチを描いたのです。とても美しいモデルになると思い、技術的に実現可能かも話し合いました。ええ、ローマを最初に作った時に、オープンのプランはなかったのです」

さて、ソフトトップ復活にあたっては、やはりそれなりの準備がされていた。素材は専用のスペシャルファブリックで2トーン織りとなっていて、4色から選択が可能(公式サイトのコンフィギュレーターで確認できる)。静粛性をハードトップ並みとすべく5層構造とし、Z字型の動きとすることで、ルーフが占める空間の高さは同カテゴリー最小となるわずか220mmに抑えられた。折りたたみ時間は13.5秒で、これは最高60km/hの走行中でも可能だ。

重量増は84kgということで、その多くはソフトトップのメカニズムとボディ強化に当てられているはずだが、注目したい点がふたつある。それが新開発のウインドディフレクター(上写真)と、リアフードにあるアクティブスポイラーだ。前者はシフトノブ前方にあるスイッチひとつで、リアシート(ちなみに”2+スパイダー”と称され、リアはミニマムながら乗員スペースとなる)の背もたれ部分がせり上がり、シート部分のスペースを覆い隠す仕組みで、特許も取得しているもの。結果、頭部付近の乱流抑制効果が約30%向上しているという。

後者はロードラック(LD)、100~300km/h超えのミディアムダウンフォース(MD)、ハイパフォーマンスシーンでのハイダウンフォース(HD)を自動感知で切り替え、最大135度の角度で、250km/hで約95kgのダウンフォースを発するものだ。

他はV8ツインターボのエンジンなど基本的にクーペから踏襲しているが、ステアリングのスイッチが単なるタッチ式から改良を受けたり、リアセクションがポルトフィーノMで採用したソリューションを元にした新たなコンポーネンツになったりと、細かいアップデートが各部で施されている模様だ。

ローマで見せたクラシックカーを思わせる美しきフォルムを犠牲にすることなくオープンボディ化したそのスタイリングは魅力的で、日本に上陸したのはローマ・ブルーのボディカラーにネイビーのソフトトップというシックな組み合わせだったが、それでも美しさは十分に伝わってきた。こんなにも優雅な雰囲気を醸し出すフェラーリは、四半世紀近く新車のフェラーリを取材してきて、初めてのことかもしれない。そんなローマ・スパイダーのターゲットカスタマーについて、パストレッリ氏はこう語っている。

「オープンだから乗りたいという、新しいお客様に対しても訴えかけていきたいです。人生を楽しんでいて、美しいものが好きで、それをクルマで家族や友人と一緒に共有したいと思う方々ですね」

確かに例えば296GTBやGTSのように、もっとスポーティなフェラーリがある中でローマ・スパイダーを選ぶのは、他にもフェラーリを所有しているなど、いろいろな意味で人生に余裕がなければ難しいかもしれない。なお日本でのデリバリー開始は来年初頭を予定し、価格は3280万円となっている。
ちなみにポルトフィーノ後継モデルが存在するか、もしくはローマ(上写真)とローマ・スパイダーがその後継モデルにあたるのかパストレッリ氏に訊いたところ、

「ローマ・スパイダーはV8フェラーリのオープンバージョンです。私が知っているのはそれだけです」

との答えで、はっきりはしなかった。ただカリフォルニアは「7割が新規のお客様で、かなり新規開拓のきっかけになりました」と、当時シニアプロダクトマネージャーとして開発にも携わったパストレッリ氏は振り返っており、ちゃんとローマたちと棲み分けができるなら、例えばハイブリッドやEVのように電動化された後継モデルはあり得るだろう。

……と書いていてようやく、最近の新車発表会では珍しく、電動化の話題が全く出てこなかったことに気がついた。そういった意味でも、ローマ・スパイダーは実に優雅な1台と言えるのかもしれない。

取材協力=フェラーリ・ジャパン
平井大介

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