
120年以上の歴史を誇るキャデラックから、初となるバッテリー式電気自動車(BEV)のリリックが日本に上陸した。最先端テクノロジーを搭載し、細部に至るまで作りこまれたデザインを融合させ、しかも嬉しいのはキャデラック初の右ハンドルで登場したこと。ここでは、リリックのドライブフィールをいち早くお伝えするために、袖ヶ浦サーキットで行なわれた、クローズドでの先行試乗会の模様をお届しよう。
キャデラック初の右ハンドルで上陸
GMは、北米のEV市場で拡大を続けている。2024年の第4四半期は対前年比で125%を記録。それを支えているのが、グループのプレミアムブランドであるキャデラックから投入されたリリックだ。120年以上の歴史を築くキャデラックでは初のEVとなるだけに、ブランドの未来を切り拓くモデルとして重要な役割を担っている。
それは、アメリカンラグジュアリーEVとして新たなスタンダードを確立することだ。先進的な唯一無二のデザイン、圧倒的な静粛性と快適性、クルマとしての高い実用性が3本柱だ。
まずは、プロポーションで圧倒する。ボディ全長は4995mmとなるが、見た目にはスマート。車高がSUVとしては1640mmと低めであり、ホイールベースは3085mmに達し21インチタイヤを4隅に履くため足元はアスリート系だ。
フロントとリアのデザインは、まさに先進的。片側9個のLEDが縦に並ぶ15mm幅のヘッドライトやエンブレムのキャデラッククレストをモチーフにしたやはりスリムなLEDリアコンビネーションライトが印象的だ。

キャデラックであることがひと目でわかる縦長LEDヘッドライトをはじめ、モダンかつ伝統を受け継いだエクステリアが特徴。往年のキャデラックを彷彿とさせるリアデザインには、1967年型「エルドラド」のオマージュとしてデザインされたテールランプを採用。
圧倒的な静粛性と快適性については、次世代アクティブノイズキャンセレーションが効果をもたらしている。室内にある5個のマイクなどでノイズを検出し19個のスピーカーと連携して逆位相でマスキング。フロントとサイドのガラスの二重化や5mm厚のリアガラスに加えボディの徹底した吸遮音対策の相乗効果で対策。
実際に、今回は試乗車が登録前だったためクローズドコースを走らせたがパドック内のザラついた路面を通過してもゴーッというロードノイズを意識せずに済む。サーキットで速域を上げても、風切り音とは無縁でいられる。
印象的なのは、乗り心地の快適さだ。ジャーマンラグジュアリーとは異なり、アメリカンラグジュアリーはくつろぎ感を最優先。それでも、ボディ剛性が高いのでサスペンションがスムーズに動いている実感が得やすい。あえてコーナーの縁石に乗り上げピットロード入口の不整路を通過しても、衝撃を巧みにいなしてくれる。
コーナリングでは、それなりのロールを伴う。だが、ステアリング操作に対する応答性が遅れを感じない程度に穏やかなので切り込む過程とロールの進行が一致し。まさに、アメリカンラグジュアリーならではの乗り味といえる。

前後それぞれ車軸にモーターを搭載したデュアルモーター仕様のeAWDシステムを採用。前後モーターを独立して制御することで、4種類のドライブモード(ツアー、スポーツ、スノー/アイス、マイモード)に準じたトラクションと安定性を確保する。
しかも、後席のくつろぎ感は前席以上だ。男性としては大柄なレポーターが、運転席で最適な姿勢を選び直後席に移動。ホイールベースは3mを超えるだけに、前席の背もたれとの間で足が組めるほどの余裕が確保できる。
シートはサイズが大きめで、表皮にはアニマルフリーの新素材が用いられている。上質な本革に勝る風合いとしなやかさを備え、クッションが柔らかなこのもあり体を包み込むようなフィット感が得られる。このあたりについては前席も同様であり、フローティング式のセンターコンソールなどの空間演出により広さが際立つ。

ロータリーコントローラーには高級感あふれるローレット加工が施される。シートにはロングドライブでも快適に過ごせる新開発の高密度フォームを採用し、レザーに代わるサステナブルな素材「Inteluxe(インタラックス)」を標準装備。
高い実用性は、EVとしての実力が満たしてくれる。前後に搭載されるモーターは、システム最大トルク610Nmを発揮。アクセルの踏み加減だけで、期待通りの力強さが立ち上がる。アクセルを踏み続ければシステム出力は522psに達するだけに、パワフルで伸びやかな加速が楽しめる。もちろん、急速充電システムのCHAdeMOに対応。フル充電での走行距離は、最大で510kmと発表されている。

容量95.7kWhのバッテリーを搭載し、システムトータル最高出力は522ps/最大トルクは610Nmを発揮。1充電最大走行距離は510kmとなり、自宅で通常使用する100Vのほか、200V電源での充電も可能。急速充電はCHAdeMOに対応する。
さて、リリックは日本市場においてもアメリカンラグジュアリーEVとしての注目すべきモデルになることは間違いない。右ハンドルとしたことで、キャデラックのブランドとしての価値に実用性が加わったことも見逃せない。
【SPECIFICATION】キャデラック・リリック
■車両本体価格(税込)=11,000,000円
■全長×全幅×全高=4995×1985×1640mm
■ホイールベース=3085mm
■車両重量=2650kg
■電気モーター=交流同期電動機
■バッテリー容量=95.7kWh
■最高出力=522ps(384kW)
■最大トルク =610Nm(62.2kg-m)
■航続距離(WLTPモード)=510km
■サスペンション形式=前後:マルチリンク
■ブレーキ=前後:ディスク
■タイヤ(ホイール)=前:275/45R21、後:275/45R21
問い合わせ先=GMジャパン0120-711-276