コラム

なぜメルセデスは「事故の0.2秒前」に動けるのか? ネコの反射に学んだ予測保護「プレセーフ」の到達点【メルセデス安全原論 05】《LE VOLANT LAB》

写真はCLA/C118。
事故調査活動とドライビングシミュレーターが生み出した成果として注目すべき安全性が、2002年秋にSクラス/W220で実用化したPRE-SAFE(プレセーフ)。
プレセーフは特に事故調査活動とドライビングシミュレーターで実用化した。
メルセデス・ベンツのPRE-SAFE(プレセーフ)では、主に5つの予測乗員保護が自動的に行われる。写真はEクラス/W211。
メルセデス・ベンツ総合的安全性のコンセプト。写真はその図面。
ネコは高いところから落ちても、きれいな姿勢で着地する。それは、反射的に体を反転させて着地に備えているからである。
事故が起こる約0.2秒前に予測し、事前の早い段階で乗員保護の体勢を整えようとする画期的な「予測乗員保護・プレセーフ」の機能システム。
事故が差し迫った場合のSクラス/W221を運転するドライバーの瞬間反応。ブレーキアシストプラスとプレセーフを組み合わせることで、差し迫った事故の前から作動する独自の安全システムを装備。
プレセーフは潜在的に危険な状況を認識し、車両の乗員に対する予防保護機能を作動させる。能動的安全性と受動的安全性の虹の架け橋である。
レーダーセーフティパッケージに高い知能を新たに加えたシステム「インテリジェントドライブ」が、新しい次元の快適性と安全性を提供。写真はSクラス。
メルセデス・ベンツが2026年1月29日に発表した、改良新型Sクラス(W223型)。
アクティブディスタンスアシスト・ディストロニック(自動再発進機能付)&アクティブステアリングアシストは、ステアリングに手を添えているだけで、自動加減速とステアリングアシストで、前車との最適な距離を維持しながら、車線もキープしドライバーの疲労を大幅に軽減。
アクティブレーンチェンジアシストは、移動したい車線側の方向へウインカーを点滅させるだけで、自動で車線変更ができ、高速道路での追い越しが簡単にできる。
アクティブレーンチェンジアシストは、移動したい車線側の方向へウインカーを点滅させるだけで、自動で車線変更ができ、高速道路での追い越しが簡単にできる。
アクティブレーンチェンジアシストは、移動したい車線側の方向へウインカーを点滅させるだけで、自動で車線変更ができ、高速道路での追い越しが簡単にできる。写真はEQS。
アクティブブレーキアシスト(歩行者/飛び出し/右折時対向検知機能付)は、前走車、自転車、歩行者などとの衝突の危険性を警告。ブレーキ圧の補助や自動ブレーキで衝突回避・被害軽減をサポート。
アクティブブレーキアシスト(歩行者/飛び出し/右折時対向検知機能付)は、前走車、自転車、歩行者などとの衝突の危険性を警告。ブレーキ圧の補助や自動ブレーキで衝突回避・被害軽減をサポート。
アクティブブレーキアシストは、車載センサーにより、前方を走行する車両、交差する車両、対向車両と衝突する危険性がないかを検知する。写真はEQS。
アクティブブラインドスポットアシスト(降車時警告機能付)は、車線変更が危険すぎる場合に、サイドミラーにある赤い警告信号でドライバーに知らせる。自動補助ブレーキで危険回避をサポート。
アクティブブラインドスポットアシスト(降車時警告機能付)は、車線変更が危険すぎる場合に、サイドミラーにある赤い警告信号でドライバーに知らせる。自動補助ブレーキで危険回避をサポート。
アテンションアシストは眠気やドライバーの不注意の典型的な兆候を認識し、休憩を促す警告メッセージを表示。追加のマイクロスリープ警告は新機能。写真はEQS。
アテンションアシストは眠気やドライバーの不注意の典型的な兆候を認識し、休憩を促す警告メッセージを表示。追加のマイクロスリープ警告は新機能。写真はEQS。
アテンションアシストは眠気やドライバーの不注意の典型的な兆候を認識し、休憩を促す警告メッセージを表示。
従来の標識付き制限速度に加えて、EQSのトラフィックサインアシストは、道路工事の頭上ガントリーと標識を認識。一時停止標識と赤信号の走行警告が含まれる。
リモートパーキングアシストは、ドライバーが車外にいる間もスマートフォンを使って近くから車両を駐車・駐車解除できる機能。これにより、出入り時の快適性が向上し、ドアを開ける際の損傷から保護。
リモートパーキングアシストは、ドライバーが車外にいる間もスマートフォンを使って近くから車両を駐車・駐車解除できる機能。これにより、出入り時の快適性が向上し、ドアを開ける際の損傷から保護。写真はイージーパーキングアシスト車両デモカー。
リモートパーキングアシストは、ドライバーが車外にいる間もスマートフォンを使って近くから車両を駐車・駐車解除できる機能。これにより、出入り時の快適性が向上し、ドアを開ける際の損傷から保護。写真はスマートフォンのアップ。
革新的なDIGITAL LIGHTヘッドランプテクノロジーにより、ガイドマーキングや警告記号を道路に投影できる。写真はEQS。
重大事故が検出されると、緊急通報が自動的にトリガーされる場合がある。SOSカバーの下のボタンを押すと、手動の緊急通報が開始される。
革新テクノロジーとしてリア・アクスルステアリングを採用。低速時にはコーナリング時の回頭性を高めると同時に、より小さな回転半径で駐車が楽。高速時には安定性の高い高速コーナリングやレーンチェンジを実現する。
メルセデス・ベンツは条件付き自動運転「DRIVE PILOT」をアップデートし、2024年12月にドイツ連邦自動車交通局からアウトバーンで95km/hの条件付きで自動運転レベル3の承認を受けた。
メルセデス・ベンツは条件付き自動運転「DRIVE PILOT」をアップデートし、2024年12月にドイツ連邦自動車交通局からアウトバーンで95kmhの条件付きで自動運転レベル3の承認を受けた。
メルセデス・ベンツは条件付き自動運転「DRIVE PILOT」をアップデートし、2024年12月にドイツ連邦自動車交通局からアウトバーンで95kmhの条件付きで自動運転レベル3の承認を受けた。
写真はCLA/C118。

5 事故が起こる0.2秒前の予測乗員保護:プレセーフの安全性

メルセデス・ベンツの安全性に関する揺るぎない設計思想と技術の系譜を紹介する本連載。今回は、事故の可能性を察知して、事故が起こる0.2秒前に乗員保護に備えるメルセデス・ベンツ独自の安全革新技術「プレセーフ」と、クルマに高度な知能を加えた「インテリジェントドライブ」の安全性を解説する。

【画像33枚】0.01秒を無駄にしない執念の記録。SクラスやEQSが備える「インテリジェントドライブ」の深層を見る

メルセデス・ベンツは先進の安全装備をフルに発揮させるため、衝突までの残された時間の0.01秒でもムダにしない。筆者は2002年秋に、このことを初めて知った時には大変驚いたものだ。

当時のメルセデス・ベンツの説明によれば次の通りである。ネコは高いところから落ちても、きれいな姿勢で着地する。それは、反射的に体を反転させて着地に備えているからである。メルセデス・ベンツは、自動車にも動物と同じように自らを守るための反射行動をとらせることで、衝突時前に乗員の被害を最低限に抑えるという独自の安全技術「PRE-SAFE(プレセーフ)」を世界に先駆けて開発し2002年秋、Sクラス/W220で実用化した。

実録事故調査が導き出した「能動」と「受動」の融合

今年、2026年はメルセデス・ベンツの自動車誕生140周年記念である。140年にわたる歴史のうち、前半の70年は走行安全性をはじめとする事故を起こさない能動的安全性(アクティブセーフティ)の基礎を確立した時代。後半は事故後の乗員保護する受動的安全性(パッシブセーフティ)という未知なる領域を切り拓き、そして再び能動的安全性とうまくバランスよく統合させた70年といえる。

近年では特にメルセデス・ベンツ安全部門のエンジニア達は、能動的安全性に重点を注いでいる。つまり、衝撃の激しさを和らげるだけでなく、そもそも衝突や事故を起こさないための安全革新技術に注力し開発を続けている。ミスター・セーフティと呼ばれたベラ・バレニーと安全部門のエンジニア達は、安全性追求の答えを1959年のジンデルフィンゲンの実験場から、1969年には路上での事故調査活動に求め続けた。

メルセデス・ベンツ総合的安全性のコンセプト。

実験では決して知ることのできない路上の貴重なデータを収集し、安全性向上に役立てたことは周知の通り。彼らは現場に残された事故の真実を発想の原点に、ABSやSRSエアバッグに代表される安全技術を発明し広く公開した。この事故調査活動とドライビングシミュレーターが生み出した成果として注目すべき安全性が、先述の2002年秋、Sクラス/W220で実用化したPRE-SAFE(プレセーフ)である。

衝突前の「空白の数秒」を埋める。能動と受動を繋ぐ“虹の架け橋”の正体

つまり、メルセデス・ベンツは能動的安全性と受動的安全性の間にあるほんのわずかな「空白」に着目した。結果、ドライバーが危険回避のための運転操作を行ってから実際に車両が衝突するまでに「わずか数秒」の時間があること、またシートポジションなどが不適正な場合には、乗員の被害がより増大することを確認した。

この事実から、事故が起こる可能性を予測し、事前の早い段階で乗員保護の体勢を整える新しい安全コンセプト「プレセーフ」を世界に先駆けて開発、実用化したのである。能動的安全性と受動的安全性の虹の架け橋となるこのプレセーフは、事故なき運転の実現を目指して取り組んでいる「総合的安全性」の成果のひとつでもある。

この記事はLE VOLANT LAB会員限定公開です。
無料で会員登録すると続きを読むことができます。

フォト=メルセデス・ベンツAG、妻谷コレクション

AUTHOR

1949年生まれで幼少の頃から車に興味を持ち、40年間に亘りヤナセで販売促進・営業管理・教育訓練に従事。特にメルセデス・ベンツ輸入販売促進企画やセールスの経験を生かし、メーカーに基づいた日本版のカタログや販売教育資料等を制作。またメルセデス・ベンツの安全性を解説する独自の講演会も実施。趣味はクラシックカー、プラモデル、ドイツ語翻訳。現在は大阪日独協会会員。

注目の記事
注目の記事

RANKING