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ジョン・レノンの愛車がルーツ。ロールス・ロイス「漆黒の反逆」ブラック・バッジ10周年

自らステアリングを握る富裕層が熱狂!

ロールス・ロイスは2026年3月2日、同社のビスポーク(特別注文)シリーズ「ブラック・バッジ」が2016年の発表から10周年を迎えたことを発表した。現在、同シリーズのラインナップには「ブラック・バッジ スペクター」「ブラック・バッジ ゴースト」「ブラック・バッジ カリナン」が含まれている。

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歴史に刻まれた反骨精神と「黒」のルーツ

ロールス・ロイスでは、エレガンスや職人技だけでなく、既成概念に囚われない反骨精神もブランドのアイデンティティにしてきたと説明している。創業者であるヘンリー・ロイス卿とチャールズ・スチュワート・ロールス氏は、出自は全く異なるものの、共に現状の限界を打破し偉業を成し遂げた人物であり、現代で言えば「破壊的イノベーター」とも呼べる存在であったというのだ。

この反骨精神を体現する「ブラック・バッジ」の美学には、約1世紀も前の先例が存在する。1928年、同社アメリカ法人の設立出資者であるJ.E.アルドレッドに納車された「20 H.P. ブリュースター・ブロアム」は、スピリット・オブ・エクスタシー(ボンネットマスコット)とラジエーターグリルが、当時モダニズムの象徴であったクロムメッキではなく、黒で仕上げられていた。

また、1964年には、ビートルズのジョン・レノンが「ファントムV」を購入し、パンテオングリルとマスコットを除く内外装のすべてを黒で統一するよう注文した。この車両は、後部ドアなどに暗く反射するガラスを採用し、レノンが「窓を閉めればクラブの中にいるようだ」と語ったことでも知られ、現在のブラック・バッジの精神的なルーツと見なされている。

新世代の顧客に向けた「もう一つの顔」

2010年代初頭、テクノロジーなどを駆使し若くして成功を収めた新世代の起業家たちが、ロールス・ロイスの顧客層として浮上した。彼らは、従来の権威的なデザインよりも、よりダークで自己主張が強く、大胆な美学を求めていた。

これに応えるため、ロールス・ロイスは従来のブランド・イメージと共存する新たなシリーズ「ブラック・バッジ」を立ち上げたという。マスコットやグリル、エンブレムを黒く染め上げ、シリーズ専用のシンボルとして「無限大」のマークを採用した。これは、V12エンジンがもたらすパワーと、1930年代に同社製エンジン搭載のボートで水上速度記録を樹立したマルコム・キャンベル卿の挑戦的な精神に敬意を表したものである。

徹底された「漆黒」のエンジニアリング

ブラック・バッジの特徴的な「黒」を表現するため、同社は量産車としては異例となる3〜5時間をかける塗装工程を導入した。45kgの塗料を静電塗装し、クリアコートを重ねて職人が手作業で磨き上げることで、極めて深い漆黒を実現している。また、グリルなどの金属部品も、特殊なクロム電解液を用いた厚さわずか1マイクロメートルのコーティングにより、鏡面のようなブラッククロム仕上げが施されている。

動力性能においても、専用のエンジンチューニングにより出力とトルクを向上させ、スロットルやトランスミッションの再調整、シャシーの強化、専用エキゾーストの装備などが行われた。運転手任せではなく自らハンドルを握るオーナーに向け、ギアセレクターの「Low」ボタンを押すことでさらなるパワーを引き出せる仕様となっている。

内装には航空宇宙分野からインスピレーションを得たテクニカル素材が用いられ、微細なアルミニウムの糸を織り込んだ独自のカーボンファイバーパネルなどが採用された。

波及する影響力と広がるビスポークの世界

ブラック・バッジは、2016年のジュネーブ・モーターショーで「レイス」と「ゴースト」としてデビューした。同年、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードのヒルクライムにおいて「レイス」がスポーツカーを凌ぐタイムを記録し、その高い走行性能を証明。その後2017年に「ドーン」、2019年に「カリナン」が追加されている。

ブラック・バッジのオーナーたちは、黒だけでなく、カエルや花、蝶などにインスピレーションを得た鮮やかな特注色をオーダーするなど、独自の自己表現を楽しんでいる。さらに、ゲーム文化やスニーカー、ストリートアートから着想を得た「ネオン・ナイツ(2020年)」や「ブルー・シャドウ(2023年)」など、数々の画期的なビスポークモデルが生み出されてきた。

また、EVモデルである「スペクター」においても、正式発表前の2025年に一部の顧客へ秘密裏に先行公開されるなど、ブランドと顧客の間に独自の強固な結びつきが形成されている。

誕生から10年を経て、ブラック・バッジが確立したスタイルは、いまや世界のスーパーラグジュアリー市場全体に波及している、と言えるだろう。ロールス・ロイスは、今後も自らのスタイルでラグジュアリーを体現する顧客に向け、ブラック・バッジのポートフォリオをさらに拡充していく方針であるとしている。

ロールス・ロイスの成長を支えたブラック・バッジ

この10周年を記念するにあたり、同社最高経営責任者(CEO)であるクリス・ブラウンリッジ氏は、次のようなコメントを発表した。

「ブラック・バッジは新しい世代の顧客をロールス・ロイスに迎えるために生み出されました。それは、自らの成功を堂々と、そして確信を持って表現する人々です。幅広いロールス・ロイスの体験を定義する配慮と正確さをもって彼らにサービスを提供することで、私たちは、これまでロールス・ロイスを検討したことがなかったかもしれない多くの顧客にとって、このブランドを意義あるものにしました」

「これは、ブラック・バッジが導入されてからの10年間、ロールス・ロイス・モーター・カーズの計画的かつ持続的な成長を支えてきました。その成功の証は、私たち自身の業績にとどまらず明らかです。ブラック・バッジは、ラグジュアリー業界全体に共鳴する、美学的および体験的なテンプレートを確立しました。私は、今後の数年間でブラック・バッジのさらなる進化を推進していくことを楽しみにしています」

【ル・ボラン編集部より】

ロールス・ロイスといえば「マジック・カーペット・ライド」と表現される究極の平穏と同義である。しかし「ブラック・バッジ」が体現するのは、その対極にある「反逆」と「自己主張」だ。一見矛盾するこの要素を、彼らは妥協なきエンジニアリングで鮮やかに止揚してみせた。ジョン・レノンが愛した漆黒のファントムに連なる系譜は、単なる仕様違いではなく、権威主義を笑い飛ばす知的な遊戯といえる。自らステアリングを握り、圧倒的な静寂の裏に潜む獰猛なパワーを引き出す時、真のスーパーラグジュアリーの深淵を垣間見るのである。

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※この記事は、一部でAI(人工知能)を資料の翻訳・整理、および作文の補助として活用し、当編集部が独自の視点と経験に基づき加筆・修正したものです。最終的な編集責任は当編集部にあります。
LE VOLANT web編集部

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