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なぜ2200psのEVに5速ミッションが必要か。マスタング・コブラジェット2200、ゼロヨン6.76秒の真実

フォード・レーシング・マスタング・コブラジェット2200

ドラッグレースの常識を覆す、フォード渾身の電動モンスター

フォード・レーシングは、ドラッグレース競技用の電気自動車(EV)「マスタング・コブラジェット2200」を開発し、その実力を証明した。最高速度222mph(約357km/h)、1/4マイル(約402m)を6.76秒で走り抜けるという驚異的な記録は、単なるスピードの誇示ではなく、EVの限界を押し広げるための実証実験である。この驚異的な記録を支える最先端のエンジニアリングとブレイクスルーの舞台裏に迫る。

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クォーターマイルを6.76秒で粉砕。NHRAに刻まれたEV最速の称号

ドラッグレースとは、停止状態から短い直線コースを一気に駆け抜け、そのタイムを競う競技のこと。スタートラインからゴールまでのわずか1/4マイル(約402m)の間で、マシンは造られた目的を完遂しなければならない。フォード・レーシングにとって、NHRA(全米ホットロッド協会)シャーロット大会はまさにその瞬間だった。

彼らはファンやメディアの前でマスタング・コブラジェット2200を披露し、クォーターマイルで6.76秒という驚異的なET(経過時間)と、最高速度222mph(約357km/h)を記録した。これにより、同車はクォーターマイルにおける最速の電気自動車となったのである。

グラム単位の執念。先代から約408kgを削ぎ落とした極限の軽量化

この偉業は突然成し遂げられたものではない。コブラジェット2200の前には、コブラジェット1400とスーパーコブラジェット1800という先代が存在した。これらは電動ドラッグレースの可能性を探り、出力やバッテリー性能などの課題に挑戦するプログラムだった。

最新のコブラジェット2200は、その進化の次なるステップだ。最大の課題は徹底した軽量化だった。2つの1200psモーターによる並外れた出力密度を誇りつつ、特注のチューブフレームシャシーやカーボンファイバー製ボディを採用。さらに、通常のビニールより20ポンド(約9kg)も軽いNASCARスタイルのビニールラップを使用している。結果として、スーパーコブラジェット1800(1400より1000ポンド/約453kg軽量)から、さらに900ポンド(約408kg)以上の軽量化に成功している。

最大トルクを途切れさせない。EVに「5速ミッション」を噛み合わせた真の理由

コブラジェット2200はホイールに対して最高出力2200psという圧倒的なパワーと、約1816Nmの最大トルクを発生させる。しかし、わずか数秒の間に150回転しかしないリアタイヤの動きの中で、その強大な力をいかに路面に伝え制御するかが真の課題といえる。

チームは特許取得済みのリバース・アクティング・セントリフューガル・クラッチ(RACC)と、5速クラッチレス・トランスミッションを組み合わせた。ダイレクトドライブで発進し、シフトチェンジ時にクラッチを滑らせることでタイヤのスリップを防ぐのである。また、Aピラーより後ろのトランスミッションやドライブシャフトなどは、70年以上の競技の歴史で洗練されてきたガソリンレーサーの部品をそのまま採用している。一般的なEVとは異なり、5速までシフトアップすることで、常に最大トルクをホイールに伝達し続けることを可能にした。

「理論の裏には隠れられない」。125年のレース哲学が市販EVへともたらすもの

高電圧を扱うレースカーにおいて、安全対策はシステムと一体でなければならない。その中核が、火工品を用いたサーキットブレーカー「パイロフューズ」である。小さな爆発で物理的に高電圧回路を遮断する仕組みで、従来の溶断型ヒューズよりも軽く作動が速い。さらにNHRAとの協力により、車外の安全作業員がパイロフューズを作動させることができるカットループシステムも開発された。

アメリカのレースチームとして125年の歴史を持つフォードにとって、モータースポーツは常に開発を加速させる強力な実験場であった。レースは理論の裏に隠れることを許さず、結果を容赦なく突きつける。マスタング・コブラジェット2200が残した記録は物語の一部に過ぎない。この極限の環境で得られた学びこそが、将来の顧客に向けたより良い製品作りに繋がるのだ。

【ル・ボラン編集部より】

2024年にニュルブルクリンク北コースで6分52秒072というアメリカ車最速ラップを刻んだ「マスタングGTD」の徹底した軽量化にも見られた物理法則への挑戦は、このコブラジェット2200にも貫かれている。本作の白眉は、2200psの凶暴な電動トルクを路面へ叩きつけるため、あえて内燃機関用の5速トランスミッションを融合させた点にある。最新のEVシステムに、70年熟成された無骨な機械式駆動系を噛み合わせる。それは125年もの間、モータースポーツを実験場としてきたフォードの泥臭くも力強い歴史的連続性そのものだ。V8の咆哮がなくとも、これは間違いなくマスタングである。

【画像9枚】1/4マイル6.76秒の暴力的な加速。歴史的記録を打ち立てたマスタング・コブラジェット2200の勇姿を見る

※この記事は、一部でAI(人工知能)を資料の翻訳・整理、および作文の補助として活用し、当編集部が独自の視点と経験に基づき加筆・修正したものです。最終的な編集責任は当編集部にあります。
LE VOLANT web編集部

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