世界遺産の街並みに映える、赤いボディのゼロエミッション・バス
南海りんかんバスは2026年4月24日、高野山エリアに大型路線タイプのEVバスを導入し、運行を開始した。大型路線EVバスの導入は和歌山県内では初めてであり、世界遺産として知られる特別な場所にふさわしい、新たな移動手段に注目が集まる。
【画像8枚】フラットな室内や急速充電器の様子も。南海りんかんバスが導入した「BYD K8」を写真でチェック
奥の院ルートを担うBYDの大型EV「K8」、一挙6台がデビュー
今回導入されたのは、BYD製の「K8」。最大乗車定員80名(座席と跳ね上げ席は26席)の大型バスで、314kWhのブレードバッテリーにより、一充電走行距離は240kmを誇る。
このK8が計6台、高野山営業所に配備され、おもに高野山駅と、参拝者の多い「奥の院」を結ぶルートを担うことになる。EVバスだけに、走行中にCO2を排出せず、騒音や振動も抑えられるのが特徴で、クリーンさや静けさが求められる高野山の環境にふさわしい存在といえる。
外観にもこだわりが見られる。ボディカラーは同日に運行を開始した観光列車「GRAN 天空」と統一され、赤を基調とした落ち着いたデザインが採用された。高野山に自生するシャクナゲの花をモチーフとした意匠も取り入れられており、地域の景観との調和が図られている。
導入の決め手は「環境への配慮」と確かな運用実績
EVバス導入の背景には、環境への配慮と観光価値の向上という狙いがある。南海りんかんバスの和田純一社長は、「南海グループでは環境経営に取り組んでおります。電気バスは二酸化炭素を一切出さないバスであり、特に高野山のような信仰の聖地では、その雰囲気の維持にもつながります。また沿線最大の観光地であることから、環境経営を発信するうえでも導入に適していると考えました」と説明する。
一方で車両を供給するBYD側も、これまでの実績が今回の導入につながったと話す。BYDジャパンの石井澄人副社長は、「南海グループでは2023年から当社の電気バスをご使用いただいており、『K8』と小型モデル『J6』をあわせてすでに5台が運用され、約3年の運用実績があります。さらに大阪・関西万博に向けた運用でも好評をいただいたことが、今回の採用につながったと伺っています」とコメントしている。
気になる航続距離だが、南海りんかんバスでは、K8が十分な性能を備えていると判断している。1日の走行距離は1台あたり約100kmであり、240kmという航続距離には十分に余裕がある。営業終了後の夜間に急速充電を行えば、翌朝の始発までには充電を終えられるという。
フラットな車内で楽しむ、静寂に包まれた高野山の旅
高野山駅で出発式を見届けたあと、営業運転を開始したばかりのK8に乗り込み、奥の院へ向かってみる。バスの中に一歩踏み入れると、後方までフラットなフロアと、開放感のある明るい室内が印象的だ。後方の座席に座って待っていると、やがてバスは静かに動き出した。
ディーゼルバスに比べて圧倒的に音が静かで、振動も抑えられているため、車内は終始落ち着いた雰囲気。ガイドを兼ねる運転士のトークもはっきりと聞こえる。EVバスだけに加減速もスムーズ。運転士に話を聞くと、シフト操作やクラッチ操作が不要になり、運転時の負担も軽減されているという。
高野山駅からバスに揺られて約20分で、お目当ての「奥の院前」バス停に到着した。街中で見るバスは、赤いボディがまわりの風景に馴染んでいて、単なる移動手段というだけでなく、風景の一部として、高野山の旅を彩ることになりそうだ。










