旗艦セダン「A8」から超大型SUVへ。アウディのプレミアム戦略が新章に突入
アウディは2026年7月29日、ブランド初となる大型フルサイズSUVの新型「Q9」を発表した。生産終了した旗艦セダン「A8」に代わり、アウディの新たな最高峰として位置づけられるモデルだ。全長5.3mを超える広大な室内空間に、最新の電動化パワートレインや世界初の曲面デジタルOLEDリアライトなど数々の先進技術を搭載。アウディが描く次世代のプレミアムモビリティの姿を体現する一台となっている。
【画像53枚】世界初の曲面OLEDリアライトに注目。アウディの新たな最高峰「Q9」のディテールをチェックする
アウディ史上最大のボディと「動くリビング」を体現した室内空間
アウディQ9は、ブランドのラインナップにおける新たな頂点として開発された。ボディサイズは全長5.31m×全幅2.21m×全高1.81mに達し、3.14mというロングホイールベースを備える、アウディ史上最大のモデルである。この堂々たる体躯により、他に類を見ない広大な室内空間を実現している。
シートレイアウトは7人乗りを標準とし、2列目にはチャイルドシート固定機構を備えるほか、3列目も大人が快適に過ごせる空間を確保している。さらにオプションとして、2列目に独立した電動シートを備える6人乗り仕様も用意され、ビジネスクラスのような極上の移動体験を提供する。内装にはアルパカ繊維を用いた高級ウールやナッパレザーなど高品質な素材が惜しみなく使われている。
そして、アウディとして初採用となる自動ドアも、注目すべきトピックだ。障害物検知システムを備え、アプリからの遠隔操作や複数のポイントからの開閉が可能だ。ルーフにはアウディ最大の1.5平方メートルを超えるパノラマサンルーフを標準装備し、車内に圧倒的な開放感をもたらしている。
デルナーCEOが語るブランドの未来像。デジタルと上質素材が交差するコックピット
新型Q9の登場は、アウディの将来戦略において極めて重要な意味を持つ。アウディCEOのゲルノート・デルナーは、この新時代のフラッグシップについて次のように語っている。
「将来、『Vorsprung durch Technik(技術による先進)』は、車内での体験によってますます際立つようになります。なぜなら、自動車は単なる移動手段以上のものだからです。多くのお客様にとって、自動車は移動する生活空間になりつつあります。それこそが、私たちのラインナップの新たなフラッグシップとしてアウディQ9が表現しているものです。プレミアムな素材、2列目の独立した電動シート、そして自動ドアは、インテリアにおける私たちの品質へのこだわりを強調しています。最新の運転支援システムや総合的なユーザーエクスペリエンスと組み合わせることで、私たちがアウディブランドをどこへ導こうとしているのかが明らかになります」
この言葉通り、Q9はインフォテインメントシステムも大きく進化している。曲面デザインのMMIパノラマディスプレイは12.3インチのアウディバーチャルコクピットと14.5インチのMMIタッチディスプレイで構成される。さらに助手席用の12.3インチディスプレイも標準装備され、動的プライバシーモードによって運転手の注意を逸らさないよう配慮されている。音声アシスタントにはChatGPTが統合され、自然言語での直感的な対話が可能となった。
世界初・曲面OLEDリアライト採用。電動コンプレッサー搭載V6ディーゼルの実力
アウディの代名詞とも言えるライティング技術は、Q9で新たな次元へと到達した。リアには第3世代のデジタルOLEDリアライトが採用されたが、その外側パネルには量産車として世界初となる立体的な曲面OLEDパネルが用いられている。0.1mmという極薄ガラス技術によりボディの輪郭に沿って配置され、側面からの視認性を飛躍的に高めた。さらに、夜間にウインカーの意匠を路面に投影する高度なターンシグナルも搭載され、安全性をさらに向上させている。
力強い走りを支えるパワートレインには、高効率な3L V6ディーゼルエンジンが搭載される。ドイツ本国での発売時には、最高出力220kW(299ps)、最大トルク630Nmを発揮する仕様が用意される。このエンジンにはMHEV plus技術が組み合わされ、次世代のパワートレインジェネレーターが最大18kWの出力をアシストする。さらに電動コンプレッサーがターボラグを解消し、わずか1.2秒で最大3.6barのブースト圧に達することで、鋭いアクセルレスポンスと高い環境性能を両立した。トランスミッションは8速ティプトロニックで、駆動方式はフルタイム4WDのクワトロが標準となる。
巨躯を意のままに操る4輪操舵と、SAEレベル2相当の最新ADAS
シャシー面では、最大90mmの車高調整が可能なアダプティブエアサスペンションと、後輪を最大5度操舵するオールホイールステアリングを標準装備し、巨体を感じさせない取り回しの良さと高速安定性を実現した。
また、最新のアダプティブドライビングアシスタントプラスにより、ドイツ、米国、カナダでは最高速130km/hまでの条件下で、SAEレベル2に相当するハンズフリー運転が可能となった。ドライバーの緊急事態を検知すると路肩に自動退避して停車するエマージェンシーアシストなど、安全装備も万全である。
新型アウディQ9はスロバキアのブラチスラヴァ工場で生産され、2026年7月末からドイツでの受注を開始し、11月から納車が始まる予定だ。ドイツにおける開始価格は10万8400ユーロ(約2000万円)に設定されている。アウディの次世代を担う堂々たるフラッグシップSUVが、世界のラグジュアリーカー市場に新たな基準を打ち立てる。
【ル・ボラン編集部より】
かつてアウディの頂点は、軽量化と端正なセダンフォルムを誇る「A8」が担っていた。その系譜が全長5.3m超の巨大SUV「Q9」へ引き継がれた事実に、時代の趨勢を感じる。懸念される物理的な鈍重さを、4輪操舵や最新MHEV搭載のV6ディーゼルにより、いかにアウディ特有の涼やかなハンドリングへ躾けているかが試金石だ。「動くリビング」たる豪奢な空間と、緻密な操縦性。これら相反する要素がかつてのA8に迫る純度で融合しているか、実車での検証が待ち遠しい。
【画像53枚】世界初の曲面OLEDリアライトに注目。アウディの新たな最高峰「Q9」のディテールをチェックする



