伝説の系譜を継ぐ、美しきアナログ・ロードカー
ゴードン・マレー・スペシャル・ビークルズは2026年8月14日(現地時間)、米国のモントレー・カーウィークにおいて新型スーパーカー「S1」を世界初公開した。伝説的なマクラーレンF1の設計思想を受け継ぎつつ、長距離ツーリングにフォーカスした快適性と洗練性を備える至高のロードカーだ。4.2Lの自然吸気V12エンジンに6速MTを組み合わせ、最高出力は690psを誇る。生産台数は世界限定64台のみとのことだ。
【画像23枚】過激なエアロを削ぎ落とした純真なフォルム。V12スーパーカー「S1」のエクステリア&内装をチェック
伝説の「マクラーレンF1」を彷彿とさせるGMSV最新作
最初にその姿を見たとき、わが目を疑った。
「これは、同じゴードン・マレーの作品でも、彼がマクラーレン・カーズ時代に手がけたマクラーレンF1そのものではないか?」
そんな疑問が頭をもたげたからだ。
しかし、よくよく見れば、いまや伝説的な存在となったマクラーレンF1とも微妙にデザインが異なっていることに気づくはず。そう、これは「ゴードン・マレー・スペシャル・ビークルズ(GMSV)」が手がけたニューモデルで、その名を“S1”という。
ゴードン・マレー・グループ(GMG)が立ち上げた新組織のGMSVが、昨年のモントレー・カーウィークで“S1 LM”と“ル・マン GTR”の2台を発表したことは皆さんもご存じのとおり。GMGの中核をなすゴードン・マレー・オートモーティブ(GMA)は、マレーの思想を具現化したスーパースポーツカーをごく少量生産する自動車メーカーだが、そのなかでもさらに特別に仕立て上げたフューオフモデルなどを取り扱うのがGMSVの役割。そして、そんな彼らの最新作がS1なのである。
過激なエアロを脱ぎ捨て、プレーンな美しさを獲得
今年のクェイル・モータースポーツ・ギャザリングで発表されたS1は、サーキット志向が強いS1 LMと技術的に密接な関係を持つ。ただし、S1もS1 LMもロードカーであることに変わりないものの、S1のほうが快適性重視で、外観もレーシングカーと見紛うばかりのS1 LMに比べるとはるかにおとなしく見える。
事実、S1ではS1 LMに装着されていた固定式のリアウィング、フロントスプリッター、サイドスカートなどを取り外すことで、よりプレーンなスタイリングとされているが、S1は単なるS1 LMの“簡素版”ではなく、ボディパネルはS1のために完全に作り直されたという。そのうえで、リアにはボディワークと一体化されたアクティブエアロを搭載。クリーンな外観でありながら、GMAに期待される高速域でのスタビリティやブレーキ安定性を実現した模様だ。
なお、S1の全幅、トレッド、軽量なサスペンション・アーキテクチャー、ワイドなタイヤなどはS1 LMと共通だが、ライドハイトを10mm上げたうえでダンパーのセッティングを見直すことにより、ステアリングの正確さ、アジリティ、フィードバックなどを損なうことなくしなやかな乗り心地に仕上げたとされる。
1万2100rpmまで回る至高のV12自然吸気と6速MT
もうひとつ注目されるのが、ヘッドライトとテールライトのデザインである。
ヘッドライトを薄いスリット状としたS1 LMに対し、S1では開口部が大きな丸形4灯タイプを採用。これが、マクラーレンF1を彷彿とさせる理由のひとつとなっている。また、レーシングカーとの密接な関係を連想させるルーバー状のデザインが施されたS1 LMのテールライトに対し、S1ではルーバーの面影を残しつつも丸形4灯の形状がより明確に見えるデザインを採用した点も特徴的だ。
エンジンはS1 LMと基本的に同じコスワース製の自然吸気V12エンジンを搭載。ただし、排気量はS1 LMが4.3Lと発表されたのに対して、S1のスペック表には、それよりもわずかに小さい4.2Lと記されている。これが影響したのか、最高出力はS1 LMの700ps以上に対してS1の最高出力は最大で690psとなる模様。それでも1万2100rpmまで回る超高回転型であることは相変わらずで、500Nmと発表される最大トルクの81%を2500rpmという低回転で発揮する柔軟性も持ち合わせている。
これと組み合わされるギアボックスが純粋な6段マニュアル式となる点も、GMAの多くのモデルにならった格好だ。
伝統の3シート・レイアウトと洗練されたインテリア
インテリアの仕立ても興味深い。S1 LMもS1も、マクラーレンF1の伝統を受け継ぐ3シート・レイアウトとされていることには変わりないが、S1 LMにはモータースポーツ用を思わせる巨大なヘッドサポート付きのバケットシートが装着されているのに対し、S1はシンプルで洗練されたデザインのシートを採用。メーターパネル周りのトリムもエレガントで、S1 LMとは異なり、S1が公道での使用を中心に開発されたことを窺わせる。
なお、生産台数がわずか5台に限定されたS1 LMと異なり、S1は世界中で64台が販売される点も注目される。ちなみにマクラーレンF1も量産タイプの生産台数は64台だったので、ひょっとするとそれにちなんでいるのかもしれない。
アナログで深い対話を楽しむ、究極のグランドツアラー
GMGのゴードン・マレー会長は、S1について次のように語っている。
「S1 LMの過激な空力パーツを取り外したとき、どのくらい美しく、そして純粋なデザインに仕上がるかをS1で証明したいと考えていました。S1はS1 LMに匹敵する速さ、レスポンス、そしてエンジニアリングのレベルを備えていますが、少し異なる使い方にあわせてチューニングしています」
「このクルマは、ロサンゼルスからモントレーまでの海岸沿いを走っても、快適で、しかもひとつひとつのギアシフト、コーナー、そしてオープンロードでV12エンジンが発するサウンドをお楽しみいただけるはずです。S1は希少性が高く、アナログで、ドライバーに深くフォーカスしながら、よりエレガントで洗練されているとともに、長距離ドライブにより適したモデルです」
ちなみにS1の価格は「未公表」とされている。



























