オペル史上最大のヒット作「アストラF」が誕生35周年
ステランティス傘下の独オペルは、ブランド史上最大のヒット作である初代「アストラF」の誕生35周年を迎えたことを発表した。1991年にデビューしたアストラFは、1997年までに413万台を生産し、今日のコンパクトクラスに求められる安全性や居住性、環境性能の基準をいち早く確立した革新的なモデルである。時代の要求に応えた初代の精神は、電動化を果たした最新の現行型アストラにも受け継がれている。
【画像24枚】オペル史上最大のヒット作。時代を先取りした初代『アストラF』と最新モデルの姿を見比べる」
時代の変革期に誕生した大ヒットモデル
アストラFがデビューした1991年は政治的、社会的に変化が起きており、環境意識も高まる時代であった。自動車メーカーには排出ガスや燃料消費の削減と同時に、快適性の向上という難しい課題が突きつけられていた。英国の姉妹ブランドであるボクスホールと共通の「アストラ」という新名称を与えられた第7世代のコンパクトモデルは、この要求を完璧に体現していた。消費者はその特長を高く評価し、1991年から1997年の間に413万台が生産され、オペルのベストセラーモデルとなっている。
ラインナップは幅広く、3元触媒を備えた1.4〜2.0Lのガソリンエンジンや、新開発の酸化触媒を搭載した1.7Lディーゼルを用意した。ボディも5ドアハッチバック、キャラバン(ワゴン)、3ドアのGSiを皮切りに、4ドアノッチバックやベルトーネ製コンバーチブルが順次追加された。
安全性、空間、環境性能における革新
アストラFの大きな特徴は、コンパクトクラスの基準を引き上げた安全性と室内空間、そして環境への配慮である。先代とほぼ同じ外形寸法でありながら、フロントガラスを74mm前方に配置し、頭上と膝回りの空間を最大50mm拡大した。それでいてGSiモデルでは0.30という優れた空気抵抗係数(Cd値)を維持している。また、側面衝突から守るドア内のデュアルスチールバーや、シートベルト下への潜り込みを防ぐシート構造、フロントシートベルトテンショナーからなる安全システムを採用し、1994年にはフルサイズのフロントエアバッグを標準装備とした。

環境面でも、ポリプロピレン製の革新的なリサイクルプロセスを開発し、内装部品に適用した。さらに、世界初のマルチインフォディスプレイや、同クラス初のクリーンエアシステムを採用するなど、多くの技術的革新をもたらした。
モータースポーツでの活躍と電動化への挑戦
先進的なプラットフォームを持つアストラFは、モータースポーツでも強さを発揮した。1993年にはFIAツーリングカー・ワールドカップで優勝を果たし、1997年にはニュルブルクリンクの耐久レースのグループNで勝利を収めた。

さらに、代替推進システムの実験車両としても活躍している。電気自動車の「アストラ・インパルスIII」は、最高速度120km/h、最大航続距離150kmを実現した。10台のプロトタイプがバルト海のリューゲン島などで合計35万kmにも及ぶ大規模な走行テストを行い、電動化の基礎を築いたのである。
初代の精神を受け継ぐ最新型アストラ
初代アストラFの先駆的な精神は、リュッセルスハイムのオペル本社で設計・製造される最新型のアストラにも引き継がれている。現在のアストラは、1回の充電で最大454kmの航続距離を誇るアストラ・エレクトリックをはじめ、プラグインハイブリッド、ハイブリッド、ディーゼルと、多様なニーズに応えるパワートレインを提供している。

デザイン面でも、光るオペル・ブリッツエンブレムや5万以上のピクセルを持つIntelli-Lux HDライト、人間工学に基づいたIntelli-Seatsなどの最新技術を搭載する。さらにアストラ・スポーツツアラーのインテリアには多くのリサイクル素材が使用されており、環境への配慮という点でも初代の理念を忠実に守り続けているのである。
【ル・ボラン編集部より】
アストラFが画期的だったのは、環境対応や安全性といった「重い」社会的課題を、秀逸な空間設計や優れた空力性能という「軽快な」エンジニアリングで成立させた点にある。最新技術の民主化というオペルの哲学は、歴代モデルから脈々と受け継がれてきた。最新のアストラPHEVが、EV航続距離を大幅に延ばしつつ本国価格を据え置いた事実も、その精神的系譜の表れだ。制約の多い変革期にこそ、質実剛健なドイツ車としての真価が輝く。初代が提示した日常と革新の共存は、今なおブランドを導く不動の道標である。
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