BYD

輸入車販売の名門・ヤナセが中国「BYD」を扱う理由。新店舗「BYD AUTO横浜南」が目指すEV市場の未来

100年以上の歴史を持つ輸入車の老舗が、新たな市場へ一歩を踏み出す

ヤナセがBYDの販売を開始――。輸入車販売の名門が初めて中国ブランドを扱う決断は、単なる取扱車種の拡充ではない。その背景にある狙いと、日本のEV市場への展望を、先ごろオープンした新店舗で聞いた。

【画像4枚】開放的な空間でBYDの世界観を体感。ヤナセの歴史に新たな1ページを刻む新店舗の様子を見る

輸入車販売の老舗として100年以上の歴史を持つヤナセが、中国メーカーBYDの正規販売に乗り出した。その象徴が、横浜市磯子区の国道16号沿いに開業した「BYD AUTO 横浜南/ヤナセEVスクエア磯子支店」である。メルセデス・ベンツやアウディ、フォルクスワーゲンなどの欧州車を扱ってきたヤナセが、初めて中国ブランドを迎え入れたのは大きなニュースと言えるだろう。実際、新店舗を率いる清水重任支店長は、オープン直後から予想以上の反響を得ているという。

清水重任(しみずしげとう)氏:BYD AUTO 横浜南(ヤナセEVスクエア磯子支店)支店長。
1998年にヤナセへ入社。27年間にわたってメルセデス・ベンツ販売に携わり、都内店舗で営業と管理職経験を重ねる。社内のEV普及プロジェクトや2025年設立のヤナセEVスクエアに参画し、2026年7月開業のBYD AUTO 横浜南支店長として店舗を率いている。

「おかげさまで、他のBYD店舗と比較するとホームページのビュー数や、実際に足を運んでくださるお客様の数は、平均を上回っております。ただし、これは最初の打ち上げ花火のようなもの。今からが本当の店舗づくりの勝負だと考えています」

実は清水支店長は、以前から社内のEV普及に関するプロジェクトに携わってきた人物。そうした経歴を考えれば、BYD店舗の責任者に就任したことは自然な流れにも映る。本人も就任当初、BYDに対して理解を深めながら、その可能性を見極めていきたいという思いを抱いたようだ。

「日本車が強く、そのうえで高価な輸入車も人気を博する成熟した市場に、BYDというEVを中心としたリーズナブルな中国車が入ってきたので、まだ実像が十分に知られていないブランドゆえに『どういったものだろう』という思いが強かったのは正直なところです。しかし、お客様と同じように体験し、学習していくなかで疑問は解消され、価格に対してのパフォーマンスがものすごく高いモデルであることを理解しました」

そのなかでBYDに見出したのは、次のような価値だ。

ブランドCIに沿って仕立てられた最新のショールーム。取材時はコンパクトEVセダンの「SEAL」と電動SUVの「ATTO 3」が展示され、現在は話題の軽EV「RACCO」も加わっているはずだ。

疑問を確信に変えた高いコストパフォーマンスと、予想以上の反響

「弊社が抱える顧客層だけでなく、新しいお客様をお迎えできることです。この店舗は開店して間もないですが、そのなかでもプラグインハイブリッド車『シーライオン6』への引き合いが非常に多く、全体の大半を占めています」

約400万円という価格設定も含め、これまで輸入車を選択肢に入れてこなかった層にも訴求できることは大きい。

「BYDのプラグインハイブリッド車はエンジン自体が発電機のような役割を果たしています。エンジンは基本的に発電を担い、その電気でモーターを駆動するため、ピュアEVに近いんです。次回BEVを選択する際の橋渡しにもなる良いクルマだと思います」

「EVの魅力は、クルマそのものが電源になること。有事には車両を提供し活用していただくなど、地域に貢献したいと考えています」と語る清水支店長。

清水支店長が重視しているのは、そんな商品の魅力とともに販売現場が果たすべき役割である。

「店舗のオープン後、しばらくして感じたのは、クルマの製品そのものを見極めようというお客様が多いこと。その点でお客様の疑問や不安、誤解を解消するのが先決とスタッフには伝えています。どこがどう気になるのか、まずはしっかり話を聞き、そのうえで問題を丁寧に取り除く。これこそがヤナセが以前から持つ強みだと思っています」

そんなふうにヤナセが長年培ってきた信頼は、BYD販売でも大きな武器になっているという。

「実際、我々に寄せられる安心感があって、来店してみたというお客様も多数いらっしゃいます」

ヤナセが長年培ってきた「傾聴力」で、お客様の不安や誤解を解消する

加えて、近隣のBYD販売店との関係も良好だ。

「他の販売店の方々も本当に協力的です。ご挨拶に伺った際もノウハウを包み隠さず教えてくださって、『一緒に頑張ろう』という雰囲気でした。ヤナセが参入したことで、BYDの信用が上がり、以前より販売しやすくなったと言っていただけたこともありました」

明るく開放的な空間ではBYDの世界観に触れられるほか、アクセサリーやボディカラー見本、急速・普通充電設備も充実している。

そして清水支店長がその先に見据えるのは、一店舗の成功ではなく、EV市場全体の拡大でもある。

「人気店になるには、リピーターのお客様をどれだけ増やせるかが重要だと考えています。そのために、まずは地域に根ざした店舗をつくること。そして、お客様がクルマを買い替える際に、『ガソリン車かEVか』を自然に比較できる場にしていきたいと思っています」

一店舗の成功に留まらず、日本のEV市場全体の拡大を見据えて

さらに清水支店長はこう続ける。

「BYDが売れることで、弊社が扱う他のEVにも目が向けられる可能性は高まります。市場全体の裾野を広げていきたいですね」

100年以上にわたり輸入車文化を支えてきたヤナセが中国発のBYDを迎え入れた。その狙いは新たなブランドを販売するだけでなく、EVを中心とした電動車の選択肢を安心して受け入れられる市場を育てることにある。BYDへの挑戦は、ヤナセ自身が次の時代へ踏み出す第一歩でもあるのだ。

 

【店舗情報】
BYD AUTO 横浜南(ヤナセEVスクエア磯子支店)
所在地:〒235-0036 神奈川県横浜市磯子区中原1丁目3-53
営業時間:平日 10:00〜17:00 / 土・日・祝日 10:00〜18:00
定休日:月曜日、火曜日
電話番号:045-342-4677
HP: https://dealer.bydauto.co.jp/hp/yokohama-minami/
新規オープンのショールームは横浜の大動脈・国道16号(横須賀街道)沿いに立地し、首都高速湾岸線・磯子ICから車で約3分。JR根岸線「新杉田駅」から約700m、京急「杉田駅」から約1kmと公共交通機関で訪れやすいのも嬉しいポイントだ。

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photo=相澤隆之/T.Aizawa
桐畑恒治

AUTHOR

1973年生まれ。滋賀県出身。幼少の頃から自動車やオートバイに慣れ親しみ、気づけば自動車専門誌のスタッフに。以来、20年以上にわたり編集記者として国内外での取材を担当したのちに独立。軽トラックからスーパーカー、オートバイまで、とりあえずなんでも乗ってみる雑食系、もとい好奇心旺盛なモータリングライターとして活動中。

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