切り詰めたオーバーハングや低く長いボンネットやルーフにより、ステーションワゴンならではの伸びやかなスタイリングを実現。スウェーデンのトースランダ工場で生産される。
サスペンションはフロントがダブルウイッシュボーン、リアは樹脂製のリーフスプリングを採用するマルチリンクで、試乗車には電子制御式ダンパーのFOUR-Cを搭載。オプションのエアサスペンション(リア)は未装着だったものの、速域を問わずフロアは終始フラットに保たれ、ドライブモードをダイナミックにしても路面の凹凸などに無闇に身体が揺すられるようなことはない。それでいてコーナーの連続に差し掛かっても、早め早めにステリングを切り増していけば、狙ったラインを外すことなく軽快なステップを踏んで駆けていける。回り込んで先が読めないようなタイトターンでは、若干ノーズが外側へ膨らむ素振りもみせるが、そもそも目くじらを立てて攻め込むようなクルマではないし、マスが大きいぶん、いい意味でもやや鷹揚な動きを示すV90と比べれば、その身のこなしは明らかに機敏でスポーティだ。
310psと400Nmという出力のエンジンも、まるでドライバーの気持ちを汲み取るかのように忠実に応えてくれる。立ち上がりでほんのわずかにアクセルを踏んだ瞬間からトルクはついてくるし、高速道路上でも流れに合わせて緩急自在。8速ATのマナーも上々だから、欲しいときに欲しいだけの加速を引き出すことができる。スタートダッシュなどでやや雑味のあるサウンドが耳に届くのは玉に瑕だが、総じて扱いやすいエンジン特性といえる。
対向車線からはみ出た追い越し車両が目前に迫り、完全衝突が避けられないと判断すると10km/hまで自動減速する機能が付加されるなど、安全性能でもさらに一歩先を行く新しいV60。かつてステーションワゴンの代名詞的存在だったブランドの矜持とも受け取れる、さすが納得の一台に仕立ててきたボルボの底力をみた思いがする。
Photo:ボルボ・カー・ジャパン