清水和夫のDST

ポルシェ911カレラS vs ポルシェ911カレラ4GTS、ポルシェのターボ vs 自然吸気論争に終止符【清水和夫のDST】#71-1

しかし、私の気持ちを動かしたのはエンジンだけでなく、前期型より確実に進化したシャシー性能にあった。特にブレーキフィールがめちゃくちゃに素晴らしいのだ。普通にブレーキを踏んだときでも微妙なコントロールが可能だし、宇宙一だと思っていたこれまでの991前期型のブレーキを完全に凌駕している。後期型991IIのそれを味わった後では、前期型のブレーキフィールは少し「板っぽい」感じが否めないほどだ。

一体何が違うのか。フロントローターを見て驚いた。なんと後期型991IIはセミ・フローティング式を採用しているではないか。ハウジングはアルミ製だった。ローターは熱変形するとブレーキジャダー(振動)の原因になるが、フローティング式のローターを採用することで、ブレーキフィールを改善しているのだ。

シャシー性能を確認するために高速周回路の高速コーナーを約160km/h、0.7G程度の横加速度で走ると、カレラ4GTSよりも後期型カレラSの方がリアの接地性が高く、安心感が得られた。スペック的にも4駆のカレラ4GTSの方が安定性は高いと考えがちだが、2駆のカレラSもスタビリティは大きく向上している。

前期型と後期型を徹底的に比較すると、まるで空冷から水冷になった「あの時」と同じ度合いの進化があると感じる。自然吸気かターボかというエンジンだけの論争はもうやめて、911カレラのスポーツカーとして洗練されたシャシー性能にも注目しておきたい。

 

ル・ボラン 2016年8月号より転載

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