海外試乗

【海外試乗】M史上初のミドルSUVクラス「BMW X3 M/X4 M」新開発ストレート6でライバル勢を猛追撃!

新設計のS58ユニットが放つパワフルかつ美しい吹け上がり

600Nmの最大トルクは6000rpm近い高回転域まで滑らかに発揮され、そこからさらにひと伸びしたところで510psの最高出力が発揮される。そのトルキーかつ完成度が高い回転上昇感は、ターボ化したストレート6に足りなかった官能性を補完しえたと思う。この“実際に踏み倒せるパワー”が、次期M3やM4に搭載される日が待ち遠しいとさえ感じた。
こうしたエンジンとの組み合わせを考えると、硬めの足まわりも納得できる。速度を上げるほどフラットに、飛ばせば飛ばすほど面白くなる乗り味は、Mモデルの名を語るに相応しいと感じられた。

フルタイム4WDシステムのM xDriveは前後トルク配分が任意でセレクト可能だ。シフトセレクターで変速レスポンスを3段階に変えられるほか、シフトセレクター横のスイッチでエンジン、シャシー、ステアリングの特性をそれぞれ任意でセットアップでき、その設定をメモリーできるM Driveボタンふたつをステアリング左右に備える。

だがもっと面白かったのは、X4 Mコンペティションの乗り味がこれとは対称的に、しなやかさを全面に押し出していたことだ。試乗したモンティセロ・モーターパークはカントやバンクのないフラットコースで、ランオフエリアもほとんどない。また下りながらブレーキングを強いられる難しいコーナーもレイアウトされていたが、ここでX4 Mコンペティションは、実に安定した挙動を示した。
これはX3に比べ、より重心が低くワイドなボディが、そのしなやかなサスペンション特性を可能にしたからだろう。ターンインではオーバーステアを発生させず、しかしながら軽やかに向き変えるバランスが秀逸だった。有り余るパワーに対しては、4輪駆動でトラクションを全面に押し出す人工的な走りではなく、FRライクで自然な身のこなしが演出できている。

上質なレザーとカーボンファイバー、アルミ素材で構成されたコクピット。ブラックパネルのカラー液晶メーターや10.25インチのタッチディスプレイといった基本コンポーネントおよびデザインは現行世代がベースとなるが、本革巻きスポーツステアリングにはMカラーの3色ステッチが施され、シフトセレクターもM専用だ。

当日はDSCのカットが許されなかったため、若干タイトコーナーのアクセルオンで失速する場面も見られた。そういう意味では同じM xDriveを有するM5に比べ挙動が安定方向だったが、大柄なSUVとしては非常にうまく、気持ち良いハンドリングと安全性をバランスさせていると思う。

コンペティション仕様のMスポーツシートは、ヘッドレスト一体型のバケットタイプに上質なメリノレザーを採用。各部を細かくセッティングできるスタンダードなスポーツシートにはヴァーネスカレザーを使用。後席シートバックは両モデルとも40:20:40の三分割可倒式となる。ちなみに「パーキングアシスト」「ドライビングアシストプラス」機能は全車の標準で装備される。

では果たしてこのX4 Mコンペティションが、M3や、特にM4のようなスポーツセダン/クーペに勝る走りができるのか?
物理の法則上、走りの刺激や楽しさ、BMWらしいコントロール性の高さはM3/M4に軍配が上がる。ただし日常的な走りにおいては十分以上にスポーティであり、それこそサーキットに持ち込まない限りは互角以上の楽しさが得られるはずだ。
そしてジャガーやアルファ・ロメオといったハンドリングコンシャスなライバルSUVに対しては、Mの貫禄を遺憾なく見せつけるだろう。そのハイパフォーマンスなエンジンとシャシー性能をもってX3/X4 Mコンペティションは、ライバルを大きく引き離す存在になる。

リポート:山田弘樹/K.Yamada フォト:BMW AG 聞き手:木村好宏/Y.Kimura BMW COMPLETE 2019 vol.72より転載

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