国内試乗

【国内試乗】一新されたスタイルに相応しい洗練された走行性能を披露!「ホンダ・ヴェゼル」

コンパクトでスタイリッシュなフォルムが評価され、ベストセラーSUVとして人気を博していた「ホンダ・ヴェゼル」がフルモデルチェンジ。先代から一新されたスタイルに注目が集まっているが、e:HEVへと進化したハイブリッドの動力性能や、優れた乗り味も見逃せないポイントだ。

スムーズな乗り味に高い静粛性をプラス

通常、ベストセラーを記録したモデルでは、キープコンセプトというか、比較的保守的なモデルチェンジを行うことが多いもの。しかしホンダ・ヴェゼルは、全くといっていいほど違うデザインで登場してきたのには驚いた。

ホンダ曰く、SUVクーペと称するエクステリアは、水平基調でスクエアな印象。ボディ同色とされたフロントグリルやシャープな形状のヘッドライト、そしてリアの一体化されたコンビネーションランプなどは、なかなか精悍な雰囲気を醸し出している。サイドからの眺めもノーズとキャビンが長く、小さめのウインドーエリアに傾斜したリアゲートなど、なるほどクーペライクな美しいプロポーションだ。

シンプルで上質な雰囲気のコクピット。ハイブリッドモデルでは7インチのTFT液晶とスピードメーターを左右に配置し、様々な情報の表示が可能だ。リアシートは足元を先代モデルから35㎜拡大し、ゆとりある空間を実現している。センターディスプレイには、通信機を含む車載通信モジュールの「Honda CONNECTシステム」が搭載されている。

一方インテリアは、HMIを考慮し、メーターやオーディオ類は瞬間認知ができるよう外の視界に近い位置に。また各種スイッチ類は直感操作がしやすいように、自然な操作ができる位置へレイアウトされた。全体的にはシンプルなデザインで素材の質感も高く、心地よい空間を実現している。

センターディスプレイには、最新の車載通信モジュールである「ホンダ・コネクト」も装備。これは各種アプリの操作が可能なほか、地図のアップデートも自動行ってくれる。さらにスマートフォンから車両の状態を確認したり、ドアのロック/アンロック、エアコンの操作もできたりするので、非常に便利だ。
パワートレインは、ホンダ独自のハイブリッドシステムであるe:HEVと、ガソリンの2種類が用意。このうちe:HEVは、駆動用と発電用の2つのモーターを備え、駆動用モーターは駆動軸と直結した構造で減速時には回生を行い、発電用モーターはエンジンと直結していることで、シンプルな機構となっているのが特徴。これにより通常時は基本モーターのみで走行し、負荷がかかる際にはエンジンで発電、高速走行時などはエンジンのみで走行するといった効率のよい走りを実現している。ちなみにバッテリーは、同社のフィットに採用されていたシステムより容量を増加することで、ヴェゼルではモーターで走行する比率をより高めている。
今回の試乗は主に一般道と高速道路を走行したが、走り始めてすぐに感じられたのは乗り心地の良さだ。これはハイテン材を適用した部位を増やしたことや、サスペンション取り付け部の強化による剛性アップに加え、フロントサスペンションのフリクションとバネレート低減、さらにはリアサスペンションのストローク増加などが効いているのだろう。もちろん大きめの入力があるとそれなりの突き上げはあるものの、多少の路面の凹凸なら極めてスムーズにいなしてくれることで、終始快適な乗り味であった。

また加えて好印象だったのは、静粛性が高いことだ。これにはモーター走行というのがもちろん効いているのだが、タイヤノイズが気にならないのが特筆すべきところ。しかも荒れた路面を走行しても意外なほど静かなのだ。これは低周波数帯の音圧変化を抑えるべく、ボディ各部の構造を見直していることが効果を発揮しているのだろう。またエンジンが始動した際の振動も少なかったが、聞けばバルクヘッドの防音材を最適に配置するなどの対策をしているとのことだ。
このように、一新された内外装に加え、走りも確実に進化していた新型ヴェゼル。思い切ったデザイン変更がどれだけセールスに影響しているのか気になるところだが、発売から1カ月を過ぎたところで月間目標台数の6倍以上となる3万2000台を受注しているというから、まずは成功といえるのではないだろうか。

【specification】ホンダ・ヴェゼル e:HEV Play[G]
■車両本体価格(税込)=3,298,900円[2,279,200円]
■全長×全幅×全高=4330×1790×1590mm[4330×1790×1580mm]
■ホイールベース=2610mm
■トレッド=前1535、後1540mm[前1545、後1550mm]
■車両重量=1400kg[1250kg]
■エンジン型式/種類=LEC/直4DOHC16V[L15Z/直4DOHC16V]
■内径×行程=73.0×89.4mm
■総排気量=1496cc
■圧縮比=13.5[10.6]
■最高出力=106ps(78kW)/6000-6400rpm[118ps(87kW)/6600rpm]
■最大トルク=127Nm(13.0kg-m)/4000-5000rpm[142Nm(14.5kg-m)/4300rpm]
■モーター型式/種類 H5/交流同期電動機 –
■モーター最高出力=131ps(96kW)/4000-8000rpm[-]
■モーター最大トルク=253Nm(25.8kg-m)/0-3500rpm[-]
■燃料タンク容量=40(レギュラー)
■燃費(JC08/WLTC)=30.4/24.8km/L[17.0/-km/L]
■サスペンション形式=前ストラット/コイル、後トーションビーム/コイル
■ブレーキ=前Vディスク/後ディスク
■タイヤ(ホイール)=前225/50R18(-J)後225/50R18(-J)[前215/60R16(-J)後215/60R16(-J)]
公式ページ https://www.honda.co.jp/VEZEL/

フォト=宮門秀行/H.Miyakado ルボラン2021年7月号より転載

注目の記事
注目の記事

RANKING