コラム

メルセデス190E EVO IIの再来。1.3億円のレストモッドレーサー「HWA EVO. R」がニュルブルクリンクで実戦デビュー

ニュルブルクリンク24時間レースの予選に登場したHWA EVO. R
ニュルブルクリンク24時間レースの予選に登場したHWA EVO. R
ニュルブルクリンク24時間レースの予選に登場したHWA EVO. R

DTMレトロルックの「HWA EVO. R」がニュル予選に登場。ヒストリック枠ではなく「SP-X」クラスへ実戦投入

ニュルブルクリンク24時間に向けた予選レースのパドック。そこで遭遇したのは、メルセデス・ベンツ「190E EVO II」の再来を思わせる「HWA EVO. R」だった。驚くべきは、これが単なるデモランではなく、BMW M3ツーリングらと同じ「SP-X」クラスでの実戦参戦であることだ。最新のGT3マシンと火花を散らす異形のレストモッドが、錚々たる伝説の二世ドライバーたちと共に北コースで刻んだ「本気」の記録をお伝えする。

【画像19枚】パドックの視線を独占。カーボンフレームとV6ツインターボを秘めた「HWA EVO. R」の全貌

ニュルの予選会場で遭遇した「幻」。1.3億円のレストモッドがSP-Xクラスに挑む衝撃

「HWA AG」社は、ダイムラー・ベンツ社のレースエンジン開発者だったハンス・ヴェルナー・アウフレヒトが設立した会社であり、社名はその氏名から頭文字をとったものだ。アウフレヒト氏はメルセデスAMGの創設者のひとりでもあり、運営団体ITRの代表としてDTMを長く率いていたことでも知られている。

そのHWA AG社が開発したのが、メルセデス・ベンツW201をベースとしたレーシングルックの高級スポーツセダン「HWA EVO」。これは1990年代のDTM(ドイツツーリングカー選手権)で活躍した「メルセデス・ベンツ190E 2.5-16 EVO II」を現代の技術で蘇らせることをコンセプトとした、いわゆる「レストモッド」車だ。

100台限定で本年よりデリバリーされているこのクルマは、価格が71万4000ユーロ(約1億3000万円)という設定も話題となったが、同車が過酷さで知られる本年5月のニュルブルクリンク24時間レースに出場するとのニュースに驚かされた。

外観は190E、中身は純レーシングカー。トランスアクスルとカーボンフレームに宿る闘争本能

4月18日(土)・19日(日)に行われたニュルブルクリンク24時間レースに向けた予選レースに現れたレース仕様車「HWA EVO. R」は、見た目は1990年代のDTMに出場していたファクトリーマシンを彷彿とさせるリバリーを纏っている点以外は、HWA EVOのロードカーと大きな相違はない。

それだけロードカーがレーシングカーらしい出で立ちということなのだが、HWA EVO. Rのキャビンを覗くと最新の技術で設計されたロールケージが張り巡らされており、コクピットのスイッチ類、計器類も完全に現代版に置き換えられているのがわかる。

開かれたエンジンフードの下を見ると、最高出力500psを発生するメルセデスAMG用3.0L V6ツインターボエンジンはフロントアクスルより後方にマウントされており、6速MTギアボックスとデフが一体化したトランスアクスルが採用されているのがわかる。さらにボディのアウターパネルだけでなく、ラジエターやエンジンフード、バンパーなどを支えるフレームもカーボンコンポジット製に置き換えられているようだ。もちろん、タイヤとホイールは当時風のオマージュではなく、これらも最新のものである。

伝説の二世たちが集結。アッシュ、ルドヴィッヒ、ヴィンケルホックが刻む新たな歴史

サイドウィンドウに貼られているドライバー名を見て、思わず目を疑った。ローランド・アッシュ、クラウス・ルドヴィッヒ、ヨアヒム・ヴィンケルホックと言えば、1990年代のDTMやル・マン24時間レースなどで活躍したドライバーだ。しかし、実際の彼らのフルネームは、セバスチャン・アッシュ、ルカ・ルドヴィッヒ、マルクス・ヴィンケルホックであり、それぞれ往年のスタードライバーの子息なのである。

彼らはそれぞれ才能あふれる実力派ドライバーである。中でもマルクス・ヴィンケルホックは、すでに45歳を迎えたベテランであり、ニュルブルクリンク24時間レースを三度制した輝かしい記録をもつエースドライバーだ。マシンのシルエットやリバリーだけでなく、ドライバーラインアップにもノスタルジーと拘りを感じざるを得ない。

最新GT3勢を追うSP-Xの意地。HWA EVO. Rが証明したポテンシャル

4月18日の公式予選で、メルセデスAMG GT3、ポルシェ911 GT3 R、BMW M4 GT3やランボルギーニ・ウラカンGT3、アウディR8 LMS GT3など居並ぶ最新型FIA GT3車両にまじり、野太いV6ツインターボのエキゾーストサウンドを奏でて走る姿は、まさに迫力満点。2台のHWA EVO. Rは、出走127台中総合39位、同43位であったが、デビューレースだとすればかなり上等だと言えるだろう。

夕方5時半からの第1レースは、スタートから3周目に7台が絡む多重クラッシュが発生して赤旗中断。ドライバー1名が命を落とす痛ましい事故によりレースは中止という重い結末を迎えた。

翌19日、ウェット宣言下の予選では、パフォーマンスを発揮することはできなかったが、それでもSP-9クラス(GT3車両)と、このHWA EVO. Rが属するSP-Xクラスのみが出走できるトップクオリファイにも出場し、出走した35台中33位(62号車)と34位(61号車)でしっかりと記録を残している。

この日の決勝レースは、4時間で28周を走破した優勝車のアウディR8 LMS GT3から1周遅れの23位で62号車が完走を果たし、61号車もさらに1周遅れでフィニッシュしており、スペックが伊達ではないことを証明している。

5月の24時間レースには3台目もラインアップするとの噂があり、3台のHWA EVO. Rがどのようなレースを展開するか興味は尽きない。

【画像19枚】パドックの視線を独占。カーボンフレームとV6ツインターボを秘めた「HWA EVO. R」の全貌

フォト=三浦正人 MZRacing

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