コラム

ポルシェ悲願の4ドアモデル、「パナメーラ」が10周年に

累計23万5000台以上を生産してビッグネームに成長

4月25日、ポルシェは同社初の4ドアスポーツサルーン「パナメーラ」が、誕生から10年を迎えたことを報じた。

パナメーラは、スポーツカーに求められる走行性能とツーリングサルーンならではの豪華さや汎用性を兼ね備えたモデルとして、2009年4月にデビュー。ポルシェは当初、年間2万台の生産を計画していたが、登場から10年で累計23万5000台以上がカスタマーの元へ届けられるヒット作となった。

356をベースしたタイプ530(1950年代)

パナメーラが登場するはるか前、1950年代からポルシェは4ドアサルーンモデルの開発に着手していた。まずは911の前身である356をベースにした4人乗り仕様、タイプ530と呼ばれるモデルからスタート。これに続き、911をベースにした4ドア仕様や、1980年代には928をベースにした試作車が相次いで作られている。

911Sをベースにした4ドアプロトタイプ(1960年代)

1988年にはタイプ989で4ドアクーペという新たな試みを実施。フロントにV8エンジンを積み、後席には大人2名が乗車できるスペースが与えられた。だがこの989ベースの4ドアモデルは、経済的な理由から市販化には至らなかった。

928をベースにした4ドアプロトタイプ(1980年代)

それでもポルシェは、市場調査や競合他車を分析することによって開発の手を緩めることはしなかった。むしろ調査によって、ラグジュアリー4ドアサルーン市場への参入に前向きな姿勢をとったのである。

989型4ドアプロトタイプ(1990年代)

このカテゴリーのモデルとしてポルシェは、「優れたドライビングダイナミクス」、「優れた居住性や積載性」、「典型的なポルシェの外観」をキーワードに掲げた。当時、デザインを担当していたスタイル・ポルシェのミハエル・マウアー副社長は次のようにコメントしている。

「ファストバックのルーフライン、大きなテールゲート、ハッチバックの4人乗りスポーツカーを作りたかったのです」

デザインコンセプト「Mirage」

デザインのプロセスでは「Mirage」、「Meteor」、「Phantom」と3タイプのコンセプトが試作され、市販モデルではこの3タイプの要素が組み合わされた。筋肉質なテイストの「Mitage」が市販型には最も近く、それが新型車「パナメーラ」となった。

初代パナメーラは2009年4月19日に上海で発表。以来、ガソリン仕様やディーゼル仕様、ガソリン車の高性能版「ターボ」と幅広いバリエーションを展開。さらにプラグインハイブリッドモデル「Eハイブリッド」も設定された。ボディは標準仕様に加えてロングホイールベース版の「エグゼクティブ」も用意。2016年に発表された現行の2代目では、5人乗り仕様の「スポーツツーリスモ」が追加設定され、モデルラインアップはさらに拡充した。

技術面でもパナメーラの見どころは多い。プラグインハイブリッド仕様はクラス初で、卓越したパフォーマンスを発揮するとともに、36km(初登場時)のEV航続距離を実現。一方、ハイパーカーの「918スパイダー」(写真右)から市販モデルに採用されたブースト機能もハイブリッドモデルの商品力を高めるのにひと役買っている。ちなみに、2018年に出荷されたパナメーラの67%がプラグインハイブリッドモデルだったとのこと。

パナメーラはドイツ・ライプツィヒ工場で生産されている

2代目はよりスポーティなルックスとなったほか、デジタル化の促進によって先進性も高められた。8速になったデュアルクラッチトランスミッション「PDK」に加え、4輪操舵システムのリヤアクスルステアリングや3室仕様のエアサスペンションなど、シャシーシステムも大きな進化を果たしている。

2代目では5人乗り仕様の「パナメーラ・スポーツツーリスモ」が追加

現在、ラグジュアリー4ドアスポーツサルーン市場の牽引役の1台に成長しているパナメーラ。ポルシェは誕生のはるか前からこのカテゴリーに注力していたが、市販型登場から10年の節目を迎えたいま、彼らの努力は大きく実を結んでいる。

2代目ではデジタル化を促進させたコックピットも特徴

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