ベントレー

【国内試乗】「ベントレー・コンチネンタルGTコンバーチブル」開けても閉じても優美なグランドツアラー

1919年の創業以来、最上級のグランドツアラーを製作し続けてきたベントレー。創業100周年を迎えた今年、日本に上陸したコンチネンタルGTコンバーチブルは、同社の技術の粋を集めた最先端かつ最強のラグジャリーモデルなのは間違いない。

季節を問わずに楽しめるオープンエアドライブ

美しい、優雅、妖艶、ゴージャス……どれも正解ではあるけれど、このクルマのすべてを言い表すにはとても足りない。その圧倒的なまでの存在感に、しばし言葉を失わせるのが、新型ベントレー・コンチネンタルGTコンバーチブルである。

最高出力635ps/最大トルク900Nmを発揮する6L W12エンジンに8速DCTを搭載。一定の条件下でエンジンの半分の気筒を休止する、可変シリンダーシステムも採用。

暑い暑い真夏の日中の逢瀬ゆえにソフトトップは閉じられていたが、その姿も実に決まっている。新型コンチネンタルGTの、前輪の位置が前に出されてノーズの長さが一層強調されたプロポーションに、スリークなソフトトップが見事にフィット。クーペとはひと味違った軽快な印象すら受ける。

新型コンチネンタルGTコンバーチブルにはベントレーダイナミックライドを搭載。このシステムによってハンドリングと乗り心地を向上させるだけでなく、一段と軽やかで正確な走行フィールを実現。

ボディカラーは標準で17色、オプション含めて70色から選択できる。ソフトトップは7色。室内もカーペットは15種類、ウッドパネルは8種類、レザーは15種類と、選択肢は無限大と言っていいほどに用意されている。

2019年製ベントレーモデルには、100周年を祝う特製バッジ、記念刺繍、特別装備品を配した「センテナリー(Centenary)」特別仕様を用意。

試乗車はクリケットボールと呼ばれる深い赤のボディに、リネンとクリケットボールのツートーンというインテリアを組み合わせる。ソフトトップはツイード。妖艶な色味が、このスタイリングに実によく似合う。しかも創立100周年を記念したセンテナリーエディションとして、内外装にはゴールドで縁取られたエンブレムなどがあしらわれて、この上なくスペシャルな雰囲気なのだ。

ルーフの開閉はわずか19秒でラグジャなクーペからオープントップのグランドツアラーへと変身する。走行中は50km/h以下なら操作可能。ファブリックルーフのカラーは7種類。伝統的な雰囲気のツイードルーフが初採用となった。

まずはルーフを閉じたまま走り出すと、その室内の静けさに驚かされた。5レイヤーのソフトトップは遮音性を徹底的に追求していて、通常時のノイズレベルは3デシベルも下がっているという。おかげで求めるならエンジン音を、あるいはこれまたオプションのNaim For Bentleyが奏でるサウンドを、雑味とは無縁に楽しむことができる。

 

エレガントなルーフを開け放てば、最高品質の天然レザーをはじめ、希少なウッドパネルを使ったまさに職人技の結晶から生まれたキャビンが広がる。大人4人がゆったりと過ごせるシートにはファーストエディションエンブレム(刺繍)が施される。

静かなだけでなくボディの剛性感も非常に高く、その走りはコンバーチブルであることを忘れさせる。最高出力635psを発生させるV型12気筒6Lツインターボエンジンは全域で分厚くフラットにトルクを発生させて、8速DCTとの組み合わせにより、極上のリニアリティを実現している。3チャンバー式エアサスペンションの重厚なライドコンフォート、それとは裏腹に車体の大きさを感じさせないフットワークも文句をつける余地など皆無で、ゆったりでも飛ばしても、豊潤な走りの魅力に浸ることができる。

では、ルーフを開けたらどうなるか。ソフトトップの開閉所要時間は約19秒。従来も30km/h以下では走行中に開閉を行なうことができたが、新型では速度上限が50km/hに引き上げられた。
開けても走りの味わいに目に見えるような変化はなく、快適さはそのまま。適度に風を感じながら爽快なドライブを楽しめる。
それにしても、この外観の美しさはどうだ。ショーウインドーに映る姿に、つい見惚れてしまう。ハンドクラフトの華やかなインテリアも、コンバーチブルなら車外にもアピールすることになって、より一層の贅沢感を味わえる。

真夏のひと時、夢のような試乗だったが、願わくば今度はもっと季節が涼しくなった頃に、再度ドライブに連れ出してみたい。ヒーター付きのシートには進化したネックウォーマーも備わり、冬の寒さを減じてくれるはずだから、きっとその時にはルーフは常時開けたままで過ごせるはずである。

フォト =宮門秀行/H.Miyakado ル・ボラン2019年10月号より転載
島下泰久

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