84年の歴史において初となる専用のデザインスタジオがオープン
太陽光がさんさんと注ぎ込むなんとも贅沢なスペース。ここはイギリスのゲイドンに開設されたジャガーの新しいデザインスタジオだ。ジャガーといえばシンプルかつ流麗なデザインのサルーンやスポーツカーを数多く生み出してきたブランドだが、驚いたことに、デザイン部門がひとつ屋根の下に揃ったことは創業以来なかったという。そこでジャガー・ランドローバーの新しい研究開発施設であるアドバンスド・プロダクト・クリエーション・センターのオープンにともなってジャガーのデザインスタジオを新設。このほど一部報道陣にその内部が公開された次第である。
注目すべきは、このデザインスタジオがクレイモデルの製作に注力している点で、エクステリア部門とインテリア部門のそれぞれにプレートと呼ばれる長さ20mのクレイモデル作業スペースを5つずつ用意。さらに3+2軸で制御できるCNCクレイモデル・マシンを各プレートに配備することで、コンピュータのデータから素早く1:1スケールのクレイモデルを作成できるという。
いまや自動車デザインの世界にもコンピュータ化の波が押し寄せ、クレイモデルの製作を省略してデザインされたコンセプトカーなどが登場する時代となったが、ジャガーがクレイモデル製作にこだわるのは、コンピュータのスクリーン上ではわからない微妙な表情や、クレイモデルにして初めて確認できる立体造形に強いこだわりを持っているからだろう。ちなみに、ポルシェのデザイン部門もクレイモデル製作を重視しており、歴代モデルと新型のクレイモデルを並べてデザインの継続性をチェックしているそうだ。
この新しいデザインスタジオを取り仕切ることになるのが、先ごろリタイアしたイアン・カラムの後任としてデザインディレクターに就任したジュリアン・トムソン。そのトムソンは「(カラムの)デザインを継承しながらも変化させていく」と明言。新たな方向性は間もなくデビューする新型XJで明らかになるだろう。