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【トヨタ・スポーツ】ファストバッククーペの逆襲。新たなスポーツクーペを提唱した初代トヨタ・セリカLB2000GT

新発売のムック「トヨタ・スポーツ」は、トヨタのスポーツカーやモータースポーツの魅力を1冊に凝縮した完全保存版だ。ここでは、そのコンテンツから「セリカLB2000GT」のレポートをチラ見してみよう。

スポーツカーを大衆のものにするべくアメリカで生まれたスペシャルティカー。日本にギャランGTOとセリカが生まれファストバックとクーペに趣向は別れた。LBの投入によりセリカの逆襲が始まる。

古典的なノッチバッククーペからファストバックスタイルへ生まれ変わることでライバルを追撃

Bピラーとドアより前をクーペと共有し、ルーフラインを低くしてリアエンドまでなだらかに傾斜させたLBのスタイル。LBが追加された時にクーペも同じくフロントを伸ばした新プレスを採用。ホイールをハヤシストリートに変更しているが、ほぼ純正の姿。

スペシャルティカーとは既存の車種、または新開発する量販車種と主要コンポーネンツを共有させたスポーティカーのこと。1964年に発売されたフォード・マスタングが先駆的存在で、コンパクトセダンだったファルコンをベースにした2ドアクーペだった。発売と当時に大ヒットモデルへ成長して、シボレー・カマロやポンティアック・ファイヤーバードなどのライバルを生み出すことになる。

開発・生産コストを抑えつつスポーツカーとして販売できるスペシャルティカー市場に国産メーカーも乗り出す。1969年の東京モーターショーでは、三菱自動車のブースに今すぐ市販されそうな完成度をもつコルト・ギャランGTX-1が展示された。この流麗なファストバックスタイルの3ドアクーペは大反響を呼ぶ。同時にトヨタのブースではコンセプトカー然としたEX-1が展示された。確かにセリカが市販された後なら、そのベースと言われて納得もできる。だが、EX-1を見た当時の観衆には、市販前提モデルと思えなかっただろう。ではなぜ、トヨタはEX-1を急いで市販したのか。それはスペシャルティカー分野への進出で三菱に先を越されてはならないと考えたからだろう。

1970年10月、いよいよ運命は開かれる。三菱からコルト・ギャランGTOが発売されたのだ。毎年開催だった東京モーターショーがその直後に開催され、来場者の目はGTOに釘付け。販売にも直結してGTOは快挙と呼べる成功を収めた。このことをトヨタが静観するはずもない。1970年12月にセリカを発売して追撃の狼煙をあげるのだ。

セリカとGTOはサイズが似ていれば搭載エンジンのトップグレードに1.6リッターDOHCを用意する点など類似性が高い。異なるのはGTOがモーターショーの姿そのままのファストバックスタイルだったことに比べ、セリカはファストバックだったEX-1を手直ししてノッチバッククーペとしていたことだ。

【写真17枚】古典的なノッチバッククーペからファストバックスタイルへ生まれ変わることでライバルを追撃、初代セリカLBの詳細を写真で見る

市販後はファストバックのGTOをクーペのセリカが猛追、販売力の差でセリカがGTOを追い抜くのは時間の問題だった。そして圧勝と言えるほどの差が開いていた1973年、トヨタはさらなる手を打つ。ファストバックスタイルを採り入れたセリカLB(リフトバック)を追加発売するのだ。これにより、性能はもとよりスタイルでもGTOに対抗。セリカの新たな求心力に成長していくこととなる。ちなみにリフトバックはLBと表記され、この後にカローラやスプリンター、カリーナやコロナへと拡大採用されていく。

第3の扉が新たなスポーツクーペを提唱した

LBが追加されたタイミングで、新たに2リッターDOHCの18R-Gエンジンが追加されている。これはコロナ・マークⅡに採用された4気筒DOHCで、トヨタ・ツインカム第4弾に当たる。セリカ1600GTに搭載された2T-G型はハイオク仕様でも115psだったが、18R-Gは145psまでパワーアップ。新たなトップエンジンに君臨した。

リフトバックとしたことで車両重量が増し、初期1600GTでは940kgであったがLB2000GTでは1040kgまで重くなっている。高出力の向上は重量増で相殺されてしまうが、2リッターエンジンによる低速トルクは街中での扱いを容易にしていた。乗り比べると特性の違いは明白で、高回転を多用する乗り方になるクーペに対し、2リッターのLBは低中回転で必要なトルクが得られるため大人しい運転で事足りてしまう。こう書くと1.6リッターがスポーツエンジンに相応しいと思えてしまうが、2リッターエンジンが大人しい出力特性というわけではない。今回改めてLBに接したことで、その思いを強くした。豊かな低速トルクは3000r.p.m.付近を境に性格を変え、鋭く吹け上がるようになるのだ。誰にでも扱いやすいのだが、ひとたびエンジンに鞭打てばDOHCらしい鋭さを見せる。これは新車時のコンディションを色濃く残しているエンジンだからこそ味わえたものだろう。

撮影車のオーナーであるTさんは現在66歳で、20代の初めにセリカを所有してから40年近く初代セリカを絶やしたことがない。数台のセリカを所有し手放すことを繰り返したが、このLB2000GTで落ち着いたという。新車時の塗装が残り、走行距離は8万kmでしかない。エンジンは一度も分解しておらず、キャブレターも調整しただけだ。さすがにサスペンションはそうもいかず、ダンパーを前後とも社外品に変更して、ステンレスでワンオフ製作したマフラーを装着する。ダンパーは純正がないからの対処で、最もソフトにセッティング。同じくマフラーも純正品がないため、純正同等に消音機能を持たせた。

だからだろう、サスペンションやボディの動きに感動してしまった。ボディ剛性が新車時のまま維持されているようで、段差を乗り越えてもミシリとも言わない。ダンパーを最弱にしてセッティングされた足まわりは、低速から滑らかに路面をいなして速度が乗っても印象を変えない快適な乗り心地を示した。乗用車的とも言えるが、これが素のセリカと言える。ピュアスポーツカーではなく日常的に使えるスペシャルティカーなのだから。

どこにも尖ったところがなく感じた背景には、最近の軽自動車から電動パワーステアリングを移植している点が挙げられる。向きを変えるなど低速でステアリングを操舵する時、現代のクルマのように軽く操作できる。そのため最小回転半径が小さくなるほど小回りが効き、走行中でも安心感ある直進性を示してくれるのだ。国産旧車を現代の路上で使うなら、もはや必須の装備と言える。

考えてみれば、セリカは当時の女性ユーザーにも支持された。それには乗りやすさが欠かせなかったはず。確かにステアリング操作は今より重かっただろうが、エンジン特性や足まわりのセッティングに特殊なところがないので、女性が進んで運転したくなるクルマだったはず。これはスペシャルティカーの狙い通りでもあり、ピュアスポーツカーに求め得ない姿。だからこそ、セリカは排ガス規制後も支持され続けたのだろう。

【specification】トヨタ・セリカLB2000GT
●全長×全幅×前高=4215×1620×1280mm
●ホイールベース=2425mm
●トレッド(F:R)=1300/1305mm
●車両重量=1040kg
●エンジン形式=水冷直列4気筒DOHC
●総排気量=1968cc
●圧縮比=9.7:1
●最高出力=145ps/6400rpm
●最大トルク=18.0kg-m/5200rpm
●変速機=5速M/T
●懸架装置(F:R)=ストラット:4リンク
●制動装置(F:R)=ディスク:ドラム
●タイヤ(F&R)=185/70HR13
●新車当時価格=112万5000円

 

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スクランブル・アーカイブ トヨタ・スポーツ

【CONTENTS/掲載全内容】
●Prologue
巻頭言:トヨタとはスポーツカーの名プロデューサーである
年表:スポーツブランド”GR”に至るまでの系譜
表紙のクルマ:セリカGT-FOUR1995年サファリ・ラリー・バージョン
●New Cars
GRカローラ:”モリゾウ”の名を冠した究極のカローラが登場
GR86:ハチロクの聖地で考える”86とは”
GRスープラ:近くに見えて遠い境地
GRヤリス:3車3様に見るヤリスの多様性
コペンGRスポーツ:似た境遇を持つ”国産”オープンスポーツ
カタログ:新車で買えるGRのスポーツカーたち
●Heritage Cars
コラム:トヨタ・ツインカムの時代
2000GT:日本の誇りを世界に示す時
オーナーヒストリー:目黒通りの2000GT
スポーツ800:軽さがもたらすスポーツ性とは
1600GT:トヨタ・ツインカム第二章
セリカLB:ファストバッククーペの逆襲
スプリンター・トレノ:トヨタ・ツインカム帝国拡大へ
セリカXX:儀式や注釈なしに楽しめる国産スポーツ
イラスト:ヤングタイマーなトヨタのスポーツモデルたち
コラム:ソアラがなければLFAもなかった
●Motor Sports
WEC:世界耐久選手権を次世代へ繋いだ孤高の挑戦者
WRC:母国開催ラリーのポディウムを目指して
ヒストリー:モータースポーツの系譜
●Life with Toyota Sports
フォトグラファー神村さんのMR2人生
9台を所有してきた渡辺さんのヨタハチ人生
KP61スターレットでパリダカに挑んだ日本人たちの記録
モデルカーで辿るトヨタGTマシンの変遷
あなたのトヨタ・スポーツ愛、語ってください!
●And More
編集後記/スタッフリスト/読者プレゼント
自動車画家Bowさんの表紙画の世界
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Text:増田 満 PHOTO:内藤敬仁 トヨタ・スポーツより転載
CAR MAGAZINE編集部

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