遠藤イヅルが自身のイラストともに1980年代以降の趣味車、いわゆる”ヤングタイマー”なクルマを振り返るという『ボクらのヤングタイマー列伝』です。今回はこの連載でまだアストンマーティンを取り上げたことがないということで2回連続の英国車ながら、”ヤングタイマー世代”のV8ヴァンテージで行っちゃいますヨ!
ボクらのヤングタイマー列伝第41回『ランドローバー・ディスカバリー』の記事はコチラから
ザガートしかできないようなエキセントリックなデザインのボディを載せたV8ザガートを忘れてはいけません!
1913年創業という長い歴史を誇る、英国を代表するスポーツカーメーカーがアストンマーティンです。同社の車両は映画『007』シリーズの『ボンドカー』のイメージが強いと思います。でもよく調べてみると、1997年公開の『トゥモロー・ネバー・ダイ』以降では確かに1作を除きボンドカーとしてアストンマーティンが大活躍するのですが、それより前ではなんと5作しか登場しないのです。しかも特殊装備を備えていたのはさらに3作のみ。その構成は、1960年代の初期作で『DB5』が2回、残りは1987年公開の『リビング・デイライツ』の『V8』でした。
と、そんな長い前振りを経つつ今回ご紹介するのが、まさにその『アストンマーティンV8』です。1967年にデビューした『DBS』の改良型として1972年に登場し、1989年までの長きにわたり生産されていますが、ベースのDBS自体がそれまでのDBに比べモダンなスタイルだったこともあり、モデル末期でも古さをあまり感じさせませんでした。17年の間にシリーズ(Sr.)2からSr.5まで進化したほか(ちなみにSr.1は存在しませんが、1969年にDBSに追加されたDBS V8が事実上のSr.1となります)、エンジンをファインチューニングしてノーマル比+40psを得た高性能版『ヴァンテージ』、DB6以来のコンバーチブルモデル『ヴォランテ』をバリエーションに加えています。
“ヤングタイマー世代”のV8は、1978年から製造されたSr.4とSr.5がそれにあたります。Sr.2 とは大きな変更がないように見えますが、外観上ではボンネットのパワーバルジが次第に小さくなり、テール周りの造形が小変更されたことで見分けがつきます。エンジンはSr.4ではウェーバー4キャブだったものを、Sr.5 ではフューエルインジェクション化しましたが、最高出力は340psから309psにパワーダウンしていました。
ちなみに『リビング・デイライツ』に”出演”するV8は、軍や警察の無線を傍受できるカーラジオ、レーザーカッター、防弾ガラス、ミサイル、フロントガラスに投影するミサイル発射用照準ディスプレイなどを備え、さらにサイドシルからスキー板のようなアウトリガーを出して、氷上を自由自在に滑っていました。最後は自爆装置で爆破されちゃいますが、当時中学生ながらボンドカーらしい装備にニンマリしたのを覚えています。
そして、V8ヴァンテージをベースに、ザガートしかできないようなエキセントリックなデザインのボディを載せちゃった『V8ザガート』を忘れてはいけません! 英国車の伝統を1ミリも感じさせないモダンさ(もちろん褒め言葉です!)と思い切りの良さに、これまた当時シビれたものでした。
この記事を書いた人
1971年生まれ。東京都在住。小さい頃からカーデザイナーに憧れ、文系大学を卒業するもカーデザイン専門学校に再入学。自動車メーカー系レース部門の会社でカーデザイナー/モデラーとして勤務。その後数社でデザイナー/ディレクターとして働き、独立してイラストレーター/ライターとなった。現在自動車雑誌、男性誌などで多数連載を持つ。イラストは基本的にアナログで、デザイナー時代に愛用したコピックマーカーを用いる。自動車全般に膨大な知識を持つが、中でも大衆車、実用車、商用車を好み、フランス車には特に詳しい。