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世界中で愛されているキャップのない万年筆「キャップレスLS」【Style in motion 172】

世界初、キャップのない万年筆として1963年の発売以来、半世紀以上におよぶロングセラー万年筆が「キャップレス」。今回ご紹介するのは、キャップレスシリーズの最新モデル「キャップレスLS」。LSは”ラグジュアリー&サイレント”の略で、その名の通り新機構「ノック&ツイスト式」を搭載し、なめらかな操作性とラグジュアリー感あふれる外装が魅力だ。

先日フランス屈指のラグジュアリーメゾンのデザインディレクターを取材したときのことだ。来日の楽しみのひとつが、パリで手に入らない万年筆を手に入れることと聞き、取材そっちのけで万年筆の話で盛り上がった。その時、彼が嬉しそうに手にしていたのが、マットブラック仕様のパイロットの「キャップレス」だったのだ。

その名の通り、世界初のキャップのない万年筆として60年前に誕生した。開発には約5年がかけられ、初代の回転式に続いて登場したノック式は、ボールペンのようにノックすることでニブ(ペン先)が表れ、再び収まる。キャップを外す手間やなくすこともなく、独自のシャッター機構でニブが乾いてしまうこともない。

利便性もさることながら、何よりも革新的なのが、通常の万年筆とは上下のレイアウトを逆転させた発想だ。携行時はクリップを上に、書く時は逆さにしてノックする。こうすることで胸ポケットに差してもインク漏れを防ぎ、さらにクリップはペンを持つ際に指先のガイドになる。優れた機能美が、高い審美性を持つプロダクトデザイナーを虜にするのも無理はない。

長い歴史を重ね、2018年に会社創立100周年を迎え、その翌年の2019年に登場した最新作がLSだ。その名はラグジュアリー&サイレントのコンセプトに由来し、ノック&ツイスト式のハイブリッド機構により、ニブを出す時は素早くノックで、使用後はヘッドを少し回すとゆっくりと収納する。ノック時の反動と音を抑えた静かな作動は万年筆の上質感と充足感を満たし、たとえ使わなくても指先で遊びたくなる。

その作動について企画した担当者は、アストン・マーティンが搭載するバング&オルフセンのオーディオシステムの動きをイメージしたというほどのクルマ好きでもある。そしてシックなブラックにさりげなく入ったレッドのラインもあのジウジアーロのテイストを思わせるのだ。

もうひとつ、クルマとの偶然の符合がある。「キャップレス」のアメリカでの商品名は「バニシングポイント」なのだ。それは、クルマ好きなら誰もが熱くなるだろう、70年代のアメリカン・ニューシネマの名作タイトルである。遠近法において並行線が交わる点を意味する絵画用語の消失点「バニシングポイント」に、万年筆と映画の関連はけっしてない。だが時代を超え、いつまでも輝き続ける魅力は共通するということだ。

Items「キャップレスLS」
ノック式ボールペンのようにワンノックですばやく書くことができ、ペン先収納時は気密性の高いシャッター機構でインキの乾燥を防ぐ、キャップのない万年筆のキャップレス。ラインナップには、ノック式や回転式等、バリエーションも豊富に展開するが、「キャップレスLS」は、ノックすると音もなく静かにペン先が繰り出し、指で後端にあるつまみ部分を少し回すだけでスムーズにペン先が収納される画期的な新機構「ノック&ツイスト式」を搭載。さらに中央部にはパイロットの宝飾加工技術を活かしたカットリングがキラキラと輝くのも魅力だ。カラーは4色展開で、価格は38,500円(税込)。

問い合わせ先:パイロットコーポレーション 0120-281610  https://www.pilot.co.jp/ 

ル・ボラン2023年5月号より転載

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