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【国内試乗】オンとオフを見事に両立したあらゆる点で究極のオフローダー!「ポルシェ911ダカール」

911ダカールはSUVのオフロード特性とスポーツカーのアジリティを兼ね備えた全世界2500台の限定モデルだ。ここでは、往年のラリーカーを彷彿させる911シリーズの新たなファミリーを徹底解説しよう。

911ダカールは史上最大のサプライズ

2018年に登場した992型の現行ポルシェ911は、モデルサイクルが進むとともに着々とバリエーションを増やしてきた。定番のものもあれば、新しい、もしくは久しぶりに追加されたものもあり、楽しませてくれて、ファンの心理をくすぐるのがなんとも上手だと感心させられる。ライトウエイトで比較的にリーズナブルにMTが用意されたカレラTなどはその最たるモデルだが、史上最大のサプライズと言っても過言ではないのがこの911ダカール。同時期に登場した911GT3 RSは究極のロードゴーイング・レーシングカーだが、それと双璧をなすロードゴーイング・ラリーカーであり、911の長い歴史のなかでも初めてオフロード走行を想定して開発された。

911ダカールは毎日でも乗りたくなるほど面白かった。

高い車高に専用のオフロードタイヤを見れば特別なモデルだとわかるが、オプションのラリーデザインパッケージが施されロスマンズカラー風となれば注目度はいやがおうにもあがる。公道を走らせていると、周囲の視線が突き刺さってきて恥ずかしくなるくらいだ。カラーリングのモチーフは1984年にパリ・ダカール・ラリーに出場した911ベースの953。ポルシェ初の4WDは、ジャッキー・イクスがステアリングを握って見事優勝し、後に959へと発展した。昔を知る者はノスタルジーに浸り、若いファンは何やら新しい変化球に心が踊ることだろう。

パワーユニットは3L水平対向6気筒ツインターボ+8速PDKの組み合わせ。0→100km/h加速のタイムは3.4秒をマー
クする。オールテレインタイヤのため最高速は240km/hに制限される。

911ダカールは480psのフラット6を搭載して当然のことながら4WD。そこは911カレラ4GTSと同様だが、約1000万円高となる分、さまざまな変更が加えられている。もっとも特徴的なのがサスペンションで50mm地上高が高くなり、さらに可変システムで30mmあげることが可能。路面が深く掘れてしまう砂漠でも走れるようになっている。タイヤはピレリと共同開発したオールテレインタイプで、鋭利な岩を踏んづけてもパンクしにくいようにカーカスは二重構造とされ、サイドウォール剛性も最適化された。タイヤサイズは前245/45R19、後295/40R20で911カレラ4GTSに比べると1インチダウンとなり、ブレーキもそれに合わせたサイズとなる。CFRP製のボンネットは911GT3と同様のもので、その他にもCFRP製バケットシートやリアシートの撤去を含め各部で念入りな軽量化が果たされている。多くの追加装備がありながら車両重量は標準から10kg増程度に抑えられた。

車両のサイドには1から999までのレースナンバーをチョイス可能。1984年のパリダカール車を再現した仕様は、「Roughroads」のロゴがあしらわれる。

コクピットに収まっての眺めは911そのものだが、各部にブルーやグリーンのステッチがあしらわれているのが特徴。エンジンを始動すると聞き慣れたフラット6のサウンドが響いてくるが、その鼓動はダイレクトに感じられた。軽量化によって遮音・静音の性能が変化しているとともにエンジンマウントも911GT3と同様のもののようだ。

オフロード走行に合わせてフロントは245/45ZR19、リアが295/40ZR20のピレリ・スコーピオン・オールテレインプラスタイヤを装着する。

特別なモデルに乗っている実感が沸く

走り始めてまず感じるのが、ロードノイズがサマータイヤとは明らかに違うことだ。低い周波数のゴー・ガー音と高い周波数のヒュー音の中間的なノイズが常に聞こえてくる。911カレラ4GTSなど一般的なオンロードモデルに比べれば耳障りなことはたしかだが、特別なモデルに乗っていることが実感できて不思議と不快には思えない。サスペンションから受ける印象も同様だ。ストロークがたっぷりとあるから、凹凸を乗り越えるときには衝撃を優しく受け止め、その後はボディの上下動がけっこう明確に残る。今回はオフロード走行はかなわなかったが、これなら自信をもって走れそうだなという想像が働くのが楽しい。試しに車高をリフトしてみるとフワリとした乗り味がさらに強くなったが、オンロード走行での快適性はやはり標準車高のほうがいいように思える。上下動の収まり方が自然で揺さぶられ感が程よく抑えられているからだ。

911カレラのスポーツサスペンション仕様車を50mm上回る車高で、リフトシステムによってさらに前後の車高を30mm上げることもできる。

ワインディングロードを走らせてみると、思いのほか楽しかった。タイヤが変形していく様や荷重移動がわかりやすく、それほど高いスピードではなくても操っている実感が高いからだ。標準仕様の911は性能が高すぎて、ちょっとやそっとコーナーを攻めたとて限界を遙かに下回った次元にしかいけなくて、乗らされている感があるが、911ダカールならばそんな切なさがないのだ。マツダ・ロードスターを走らせているときのようにクルマと対話ができて嬉しくなる。もちろん、ポルシェらしく各部は圧倒的な剛性感に溢れていて操作に対する反応が正確無比なので、対話はより濃密。慣れてくるとノーズの沈み込みなどをミリ単位でコントロールできているかのように思わせてくれる。ただし、調子に乗りすぎるとタイヤを傷めてしまいそうなので楽しむのはソコソコにしておきたい。

インテリアは後席が撤去され、フルバケットシートを標準装備する。車重は軽量ガラスと軽量バッテリーなどを採用し、911カレラ4 GTSの+10kgの1605kgに抑えられている。

走行モードは「ノーマル」や「スポーツ」といった標準的なものにくわえて「ラリー」と「オフロード」が追加されている。「ラリー」は砂利道やぬかるんだ道、「オフロード」は砂丘や岩場の走行に最適化されているという。前者のほうがリアへの駆動配分が大きく、スポーティに走れそうだ。また、この2つのモードではラリー・ローンチコントロールが作動可能で、滑りやすい路面でも最大の発進加速が得られる。
世界2500台限定で、車両価格は3099万円(試乗車は多くのオプションを含めて3623万1000円)。試乗してみると、カラーリングの小っ恥ずかしさはともかく、毎日でも乗りたくなるほど面白かった。キャンプ場などちょっとしたラフロードやウインタースポーツに出掛けるにも安心だから、そういった趣味を持つ人には最高の911でもあるだろう。こんなモデルをガシガシと使い倒せたら最高にクールで、豊かなライフスタイルを送れそうだ。

【SPECIFICATION】ポルシェ 911ダカール
■車両本体価格(税込)=30,990,000円
■全長×全幅×全高=4530×1864×1338mm
■ホイールベース=2450mm
■トレッド=前:1617、後:1572mm
■車両重量=1605kg
■エンジン形式/種類=ー/水平対向6DOHC24V+ツインターボ
■内径×行程=91.0×76.4mm
■圧縮比=10.2
■総排気量=2981cc
■最高出力=480ps(353kW)/6500rpm
■最大トルク=570Nm(58.1kg-m)/2300-5000rpm
■燃料タンク容量=67L(プレミアム)
■燃費(WLTC)=—km/L
■トランスミッション形式 8速DCT
■サスペンション形式=前:ストラット/コイル、後:マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前:245/45ZR19、後:295/40ZR20
問い合わせ先=ポルシェジャパン TEL0120-846-911

フォト=郡 大二郎 ルボラン2024年4月号より転載
石井 昌道

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