アルピーヌ次世代プラットフォーム「APP」開発の最前線
英国で開催された伝統の祭典グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード2026にて、次期「アルピーヌA110」のテスト車両が初走行を披露した。それと同時に注目を集めたのが、アルピーヌの次世代プラットフォーム「APP」の詳細である。3代目の次期A110はEV専用機だと明言されているが、熱心なファンが待ち望む「エンジン車」登場の可能性は本当に潰えてしまったのか。モータージャーナリストの大谷達也氏による現地取材を通し、開発首脳の証言からその真実を紐解く。
【画像26枚】次世代EVスポーツの布石。初公開された「APP」とアルピーヌの新旧モデルを写真でチェック!
かつてない規模で臨んだグッドウッドでの「アルピーヌ祭」
アルピーヌがかつてない規模でグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードに臨んだ。
イベント初日の7月9日(木)にはアルピーヌF1ドライバーのピエール・ガスリーが登場。EVとなる3代目A110のテスト車両“A110フューチャー(A110 FUTURE)”のステアリングを握ったのだが、その助手席にはイベントの主催者であるマーチ卿を迎えるという豪華さ。これは、グッドウッド側がアルピーヌを大いに歓迎していることの表れといって間違いないだろう。
ガスリーが搭乗しない日は、ルノー・スポールのテストドライバーとして日本でも名高いロラン・ウルゴンがA110フューチャーをドライブしたほか、1978年のル・マン24時間を制したアルピーヌ-ルノーA442B、2012年シーズンにキミ・ライコネンが操ったF1マシンのE20(当時のエントリー名はルノーだが、今回はBWTアルピーヌF1チームのカラリングをまとって登場)、最新EVのアルピーヌA390やA290GTS、1971年製のオリジナルA110などが姿を見せ、ヒルクライムに挑戦するなどして観客から大声援を受けた。
また、3代目A110に用いられるアルピーヌ・パフォーマンス・プラットフォーム(APP)の詳細情報も、今回のフェスティバル・オブ・スピードで初めてお披露目された(詳細は別記事を参照)。
私もアルピーヌの招待で会場に赴いたが、今年はコロナ禍以降で最大の賑わいだったように思う。国際的なモーターショーが縮小傾向にある現在、このフェスティバル・オブ・スピードと8月に開催されるモントレー・カーウィークが「世界のスポーツカー/ラグジュアリーカー・シーン」を牽引する2大イベントであることは間違いないように思う。
「アルピーヌの哲学は不変」フマロラ副社長が語るブランドの本質
このイベントにあわせて自動車産業界の重鎮たちが世界中から集まるが、私は今回、アルピーヌで戦略および製品性能を担当するバイスプレジデントのマッシモ・フマロラ氏にインタビューできたので、その模様をご紹介しよう。
1969年にイタリア・ミラノで誕生したフマロラ氏はイタリアの産業用車両メーカーであるイヴェコにプロダクト・エンジニアとして入社。以来、フェラーリ、アウディ、ランボルギーニ、モーガンなどでマネージメントに携わった後、2025年にルノー・グループに参画。今年4月に現職に任命された。
「私は一貫して自動車メーカーの戦略に携わってきました」とフマロラ氏。「アルピーヌにやってきてまだ2ヶ月ほどですが、アルピーヌのポジションは75年間にわたり不変でした。規模が小さいこととも関係があるのでしょうが、この会社はずっと変わらず、そして本物であり続けました。コンパクトで、操って楽しくて、週末に友人と楽しむのにぴったり。最高出力が1000psもあったり最高速度が300km/hを超えるわけではありませんが、とにかく走りが魅力的でデザインがピュアで、アルピーヌのことだったら何時間だって話し続けられる。そして個性が明確。たとえばアルピーヌのイメージを20人に聞いたら、20人とも同じことを答える。こんなブランドはなかなかありません」
フマロラ氏の言葉はシンプルだが、それゆえに強い説得力を持って聞き手の心に響いてくる。
「だからといってアルピーヌが懐古主義的かといえば、そんなことはありません。創業者のジャン・レデレからして、革新的な考え方の持ち主でした。彼は軽量でダイナミックなクルマを作り続けましたが、それと同時に現代的な技術を用いていました。だからこそ、ドライビングに対してピュアな情熱を持つファンに愛されてきた。たとえ100万ユーロ(約1億9000万円)のクルマを買える財力があってもアルピーヌを選ぶ人が尽きないのは、そういう理由からだと思います」
アルピーヌの戦略を立案するフマロラ氏がここまで言うのだから、その伝統は未来に継承されるとみて間違いないだろう。
新基盤“APP”の転用可能性と、EV専用機へ懸けるアルピーヌの自信
さて、3代目A110がEVとなることはすでに確定しているが、そのいっぽうで、エンジンを積んだA110が登場するとの期待にも根強いものがある。事実、5月に行われたアルピーヌ・テックデイでは、質疑応答の席で「(新プラットフォームの)APPはエンジン車にも転用可能か?」との質問が出た際、アルピーヌ側の回答は「エンジン車への強い要望があると判明した際、私たちはそれが実現可能であるかを検討しました。その結果、エンジンは搭載可能であることを確認しましたが、現時点ではまだなにも決まっていません」というものだった。
この点を改めてフマロラ氏に問い質すと、次のような答えが返ってきた。
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