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トヨタに加えて日産、マツダ、スバルも参入し「D-Call Net」を大幅に拡充

クルマ自身が事故情報を発信する時代が近づく

内外を問わず多くの自動車メーカーが「交通事故死ゼロ」を目指してクルマの安全性能を進化させている。その究極の目標として「事故を起こさないクルマ」があるが、一方で直近の問題として事故が起こってしまった場合の最善の対処はどうあるべきか、という課題がある。そこから先は救急出動などの行政、あるいは病院などに任せるというのが現状だが、その部分にも自動車メーカーなどが貢献できないだろうか、という考え方が以前からあった。救命救急に自動車メーカーなどの組織力やテクノロジーを活用する検討がなされてきた。

D-Call Netを活用することでドクターヘリの出動時間を約17分短縮できるとされている。

そのひとつとして「D-Call Net」が立ち上げられ、2015年に試験運用を開始し、2018年6月には本格運用が始められている。事故被害者の救急移動にドクターヘリを活用するNPO法人救急ヘリ病院ネットワーク(HEM-Net)が中心となり、トヨタ、ホンダ、ボッシュ、日本緊急通報サービス(ヘルプネット)、プレミアエイドが参加。クルマのコネクティッド技術を活用し、事故時の死亡重傷確率を推定して全国約730カ所の全消防本部と、54の協力病院に通報するとともに、ドクターヘリやドクターカーの早期出動により救命率を高めようというシステムだ。
新年度を迎える直前の3月末にはこのD-Call Netに日産自動車、マツダ、スバルが加わることが発表され、ネットワークがさらに拡充。今後、急速に普及するであろうコネクティッド機能と、それを生かすネットワークの拡大により交通事故時の死亡率を低減できる可能性が高まることになる。
このシステムを活用するにはクルマに衝突時のデータを分析する機器(衝突方向、衝突の厳しさ、シートベルトの着用有無、多重衝突の有無)を搭載に加え、その情報を発信する通信装置の搭載も必要となる。現状ではまだそうした緊急通報装置を搭載するクルマは多くなく、トヨタ車が37万6000台、レクサス車が15万2000台、ホンダ車が28万2000台、合計81万台にとどまっている(2019 年2月現在)。国内の保有台数約7800万台(四輪車)に対してまだまだ少ないといわざるを得ないが、日産、マツダ、スバルが加わったことでヘルプネットなどがどんな形でアピールされ、搭載車が増えていくことになるのか興味深いところだ。
さらにD-Call Netの協力病院は現時点で37都道府県54病院に限られており、ドクターヘリも国内に53機とされている。HEMlNetによるとドクターヘリの活用により救命率は地上救急より3割以上向上し、完治により社会復帰できた人の数も1.5倍だという。今回のネットワーク拡大に加えてドクターヘリの増強が可能となれば、交通事故の死亡者に加えて後遺症などで苦しむ人も確実に減るとみていいだろう。
緊急通報装置の搭載は車両のコストアップにつながるなど導入しにくい部分もあるが、クルマの衝突安全性能や予防安全性能がここまで進化・普及した現在、次は救命救急のためのテクノロジーも欠かせない要素となってくる。交通事故の犠牲者が減ったとはいえまだ国内では年間4166人が死亡し、3万4558人が重傷を負っている。D-Call Netのような組織にさらに多くの自動車メーカーや自動車関連企業、そして政府や行政が加わることで機器のコストダウンと普及、対応病院の増加、ドクターヘリの普及を図ることができるはず。今回のネットワーク拡大を機に、交通事故死ゼロを目指して参加団体が増えていくことを期待したい。

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