往復1000kmの道のりを大好きな峠道ドライブ!
ボンジョ~ルノ! 2年ぶりにやってきました、イタリア!
今回はDTM(ドイツツーリングカー選手権)の取材でモンツァのサーキットへ行く予定がありましたので、どうせ行くならばという事で、モンツァへの往復ドライブを峠三昧で楽しんできました。
新型コロナウイルスの拡大防止につき、ヨーロッパ各国はかなり長期間のロックダウンとなり、自由に国境を超える事も難しい日々でしたが、やっと緩和措置が取られて国境を超える事が出来ました! ただ、PCR検査の陰性証明や入国72時間前までに事前のオンライン入国申請を通過国も含めてしなくてはならないのが結構面倒くさいのです。してない人もいますが、私は外国人ですので、後で警察のお世話になるのは困りますから準備は全て整えてから出発しました。
昨年は新型コロナウイルスの影響で、行く予定をしていたモンツァでのレースは中止となりましたので、今年は特に楽しみにしていました。そのワケは……はい、峠です!
私の住む南ドイツのミュンヘンからイタリアのモンツァに行くには色々なルートがあるのですが、大体片道が500km前後です。いつも取材で行くドイツ国内のニュルブルクリンクよりも近いんですよ。イタリアに行くまではオーストリアやスイス、リヒテンシュタイン等の国が挟まっていて、どこの国を通るかはルート次第ですね。
一番ラクなルートはオーストリアのブレンナーを経由して、ほぼ全て高速道路を通って行くルートですが、これは本当につまらない。せっかく美しく壮大なアルプスがあるのに、峠を走らないなんて私には有り得ません(笑)。モンツァに行く際は、毎回往復共にどのルートで走ろうか、グーグルマップを見ながらワクワクします。特にハラハラドキドキの『酷道』は大好きで、昔に教習所で習ったS字とクランクに加え、ヘアピンカーブだらけです。これは運転する者が楽しいのであって、助手席や後部座席に同乗して行くのは遠慮したいですね(笑)。
さて、今回の行きは2年ぶりのステルヴィオ峠経由でモンツァに向かう事にしました。前回はイタリア側から入りましたので、今回はスイス側から向います。ミュンヘンからステルヴィオはオーストリアとスイスを経由しますが、たった272kmしか離れておらず、いつもは日帰り遠足のコースなんですよ。ミュンヘンからスキージャンプの大会で有名なガルミッシュパルテンキルヒェンまではアウトバーンを走りましたが、そこからイタリアまで下道と峠のみを走ります。一応、ナビに目的地を入力しておきますが、途中で面白そうな道を見つけたらそちらを通って行く事にしていますので、時間にはかなり余裕を持たないといけません。
よく日本の友人知人に、陸路で国境を超えるのってどういう感じ? と聞かれるのですが、EUになってから検問はなくなりました。ただし、スイスはEU加盟国ではありませんので、陸路でも検問があり、いつもではありませんがパスポート検査や手荷物の抜き打ちチェックもあります。それ以外は日本でもそうであるように、都道府県を超える際に見掛ける標識看板に「〇〇県」と記載されているように、国名が記載されていて、通り過ぎる際に「あぁ~イタリアね」と思う感じです。国ごとに制限速度も違いますので、それも記載してあります。
まだバカンスシーズン前で平日だった事もあり、非常に空いていて前後を気にせず自分のペースでのんびり走れたのが良かったです。バイクのツーリング集団に遭遇した場合はちょっと広めな所で右ウィンカーを出して速度を緩めると、ありがとう!と手を挙げて抜いて行ってくれますので、こちらも気持ちよいです。
このステルヴィオ峠は自転車乗りの方々にも有名らしく、多くのサイクリストにも遭遇しますが、一番怖いのはバイクや自転車が峠から猛スピードで降りてくるのに直面した時で、バイクはヘアピンを攻めにくる、自転車は真ん中を突っ込んでくるので本当にヒヤヒヤものです。
頂上に着くと、モクモクと煙が立つ焼きソーセージ屋さんの屋台が並んでいて、なんだかお祭りのような匂いがして食欲をそそります。あそこでまたソーセージを食べたいな、とも考えたのですが、やっぱり山はおにぎりですよね! という事で、出掛ける日の朝に、起きてすぐにお米を洗って炊飯器のスイッチをオン。念願の山頂でおにぎりタイムです。ただ、外国人の方には怪しい食べ物に見えているハズですので、人が少ない時にさっと食べました(笑)。おにぎりだけじゃ物足りなかったので、今度は卵焼き等が入ったお弁当を作って行きたいなと思いました。
一通り写真を撮った後は、モンツァ近郊の宿を目指してイタリアの田舎道をのんびりと向かいました。途中、夕焼けのコモ湖畔の東側を走り、約10時間のドライブを終えて宿に到着! 翌日は朝から取材ですので、早めにやすみました。
ドイツツーリングカー選手権(DTM)の開幕戦、今季からGT3マシンになっての開催です。パドックを歩くと久々に会う方ばかりなので、立ち話に熱中してなかなか先に進めませんでしたが、楽しく3日間の取材をして日曜日の夜には汗だくでくたくたになって宿へ戻り、シャワーと夕食の後には帰りの峠ルートをチェックしながら寝落ちをしてしまいました。宿のオーナーさんはイタリア語のみしか話せませんし、私もイタリア語は全く分かりませんので、スマートフォンでの音声グーグル翻訳がとても助かりました♪
ところで、色々な国を愛車で走る私ですが、イタリアでは特に思う事が多々。まずは……法定速度はないんかい?! と突っ込みながら走っています。速度制限の表示の+20~30km/hは当たり前のように市街地でもぶっ飛ばしてくるんですよね、イタリア人ったら。私は後で罰金のお手紙を貰いたくないので、法定速度を守って走っていますが、そんな私を物凄い勢いで煽ってきます。
後ろにぴたりとくっつかれ、右に左にジグザグにされるなんて普通。知らんぷりしますけど、された方としては気分よくないですよね。他にも交通ルールというものはないのかな? 追い越し禁止車線を平気で跨いで追い越してきます。
特に逆車線でそれをされると正面に逆走者が突進してくる形になりますから本当にビックリ! イタリア人のクルマはウインカーが壊れてるの? と思う位にウインカーを出さないクルマが多いったらありゃしない。一度は交通量の多い複数車線の交差点手前で、隣の車線を走っていた若い女性が、案の定追い越し禁止車線を無視してウインカーを出さずに突然割り込んできて、危うく追突されそうになりました。
他にもいっぱいありますよ、イタリア(苦笑)。美しい女性もおばちゃんも、女性はかなりアグレッシブ。運転しながら大声で怒鳴り散らしてクラクションを鳴らしまくっている姿をよく見掛けます。イタリア語を理解しないので、何を言っているのかは分かりませんが、関西弁の吹き出しを付けるならば「おんどりゃ~、はよ行かんかい、このボケカスが!」と言っているような感じです(笑)。
イタリア人はかなり短気でせっかちな運転をするというイメージですね。イタリア国内を法定速度や規則を無視して走る人が多いのですが、イタリアのナンバーのクルマをドイツで見掛けると……速度制限解除区間は200km/h以上でも自己責任で自由に飛ばせるのに、加速から遅くてドイツ人に煽られているのをよく見掛けます。
以前はボコボコの傷だらけのクルマも多く走っていましたが、10年前から比べると、イタリアで走っているクルマがキレイになっているのを実感しました。日本のみなさんからすると、イタリア人=オシャレ=オシャレなクルマに乗っていると想像されている方も多いかと思いますが、都会以外ではオシャレなクルマを全くと言って良い程に見掛けないのが現状。
高級車は非常に少なく、コンパクトカーが多いですね。イタリアの道は凄く狭い事もあり、コンパクトカーが丁度良いのはよく分かりますが……。20~30年前位のクルマもまだまだ現役で沢山走っています。色も白・グレー・黒が中心で、カラフルなクルマは少ないですね。
イタリアを代表するフェラーリやランボルギーニ、マセラッティ等は、ほぼ全くと言って良い程に見掛けず、むしろそれらは私の住むミュンヘンの方が多く見掛けますね。カブリオレはイタリアでは殆ど走っていないのはなんでなんでしょう? あんなに気候がいいのにフシギ!イタリアからスイス国境に入るとがらりとクルマの種類が変わるのがすぐに分かります。スイスは世界有数のお金持ちの国で有名ですから、あらとあらゆる高級車に遭遇し、見ているだけで楽しいですよ。
モンツァからの帰り道は、コモ湖の西側沿いの細い住宅街を抜けて走りました。道中には湖沿いに建つ立派な超高級ヴィラを横目にうっとりと夢見心地です。ここでも2台がギリギリすれ違うような道ですら煽ってくるイタリア人(苦笑)。前にトラックが迫っていようが、我先にと突っ込んでいく鋼のメンタルには脱帽ですが、その30年落ちのフィアットパンダを駆り、ぜひともドイツのアウトバーンの速度無制限区間でも同様に機敏な走りを見せて欲しいものです。
コモ湖を抜けると次はスイスのサン・モリッツを目指します。欧州屈指の超セレブスキーリゾート地でもあり、スイスの有名な氷河列車の始発駅でもあります。道中にも美しい湖や峠を越え、オープンカーでは最高に気持ちの良いドライブです。モンツァでは連日湿度の高い30℃を越えていたので、スイスの標高の高いところは涼しくて湿度も低くて快適でした。
イタリアはガソリンの値段がとても高いので、行きはオーストリアで満タンにし、帰りはスイス国内に入ってから給油をしました。イタリアのディーゼルの価格がドイツのレギュラーガソリンと同じくらいの値段で、イタリアのレギュラーがドイツのハイオク以上という感じで、かなりビックリな価格です。日本の友人知人からも連日ガソリンが高いと見聞きしますが、ヨーロッパに比べたら日本は天国のような値段です!
ここ最近のドイツのレギュラーE95の価格は1.50ユーロ前後(約200円)で、イタリアでは約1.70ユーロ前後(約230円)でした。
サン・モリッツを超えてからは、ベルニナ急行と並走して壮大な峠道を走りました。途中の駅には箱根登山鉄道さんから寄贈された『世界遺産』と日本語で書かれた立派な看板が掲げてあってびっくりしました。
途中は山を越える度にイタリア領とスイス領を行ったり来たり。国境ではパスポート検査を受け、お酒やタバコ、食肉加工食品をイタリアから持ち込んでいないか聞かれて、ちょっとした手荷物検査もありましたが、無事に通過しました。イタリアのスーパーで色々な食料品を買い込んでいまして、その中にサラミも入っていましたが、没収されずにほっとしました。
最後はオーストリアの峠もいくつか越えて、ガルミッシュパルテンキルヒェンからまたアウトバーンに乗り、今までのクネクネ山道のロングドライブから速度制限解除の道路となり、また別の意味で楽しくドライブをして帰りました。速度制限区間ではきっちりとみなさん速度を守っておられて、当たり前の事ですがほっとしましたよ。
なんやかんやで帰りは12時間も掛かりましたが、全く苦ではありません。私にとって『ドライブ』とはまさしく、ひたすらクルマを運転して楽しむ事なので、観光地巡りやショッピングは殆どありません(笑)。
女性が好きそうな旅行の要素は満たせないので、基本的におひとりさまです。色々な国によって空気の匂いが違うので、屋根をオープンに走るとその匂いでも外国に来た気分が味わえるのも醍醐味ですね。途中で、あれ? 今どこを走っているんだろう?? と思う事もありますが、ナビに自宅の住所を入れれば連れて帰ってくれますので、自由気ままに山や景勝地を走るも楽しみのひとつです。
この記事を書いた人
武蔵野音楽大学および、オーストリア国立モーツアルテウム音楽院卒業。フリーランスの演奏家を経て、ドイツ国立ミュンヘン大学へ入学。ミュンヘン大学時代にしていた広告代理店でのアルバイトがきっかけでモータースポーツの世界と出会い、異色の転身へ。DTM、ル・マン/スパ/ニュルブルクリンクの欧州三大24hレースを中心に取材・執筆・撮影を行う。趣味は愛車のオープンカーでヨーロッパのアルプスの峠をひたすら走りまくる事。蚤の市散策。