メルセデス・ベンツ

EV専用プラットフォームを使った待望のSUVバージョン!! 『メルセデス・ベンツEQS SUV』に早くも海外試乗した模様をお届け

メルセデスのEV専用プラットフォームを使ったプロダクトはEQS、EQEと紹介してきたが、待望のSUVバージョンが登場した。日本でも人気のSUVモデルだけに、その仕上がりが気になるところ。アメリカ・デンバーにて行なわれた試乗会からの第一報をお届けしよう。

【写真9枚】SUVならではの高い走破性も披露、メルセデスEQS SUVの詳細を写真で見る

EV専用プロダクトにSUVモデルが登場!

メルセデスのBEV専用プラットフォームであるEVA2は、4種類のモデルが共有するとすでに公表されている。日本でも発表されたばかりの2台のセダン、EQSとEQE、そして今回試乗したEQS SUVとじきに登場するであろうEQE SUVである。

矢継ぎ早にBEVのプロダクトを拡充していくメルセデスを「積極的」と捉える向きもある。確かにそうなのだけれど、メルセデスは実は超が付くくらい保守的で慎重な自動車メーカーである。2030年頃には「市場の準備が整っていれば」BEVに完全移行する「用意がある」と公にしていて、いまはまさにその準備の段階なのだ。彼らにとって量産型のBEVはいまだに海のものとも山のものともつかぬ存在であり、現時点ではとにかく少しでも多くのデータや知見や市場の反応を収集したいのだろう。そういう意味では、EVA2とそれを使う4台は”社会実験車”の側面も持ち合わせていると個人的には思っている。

EQS SUVの3210mmのホイールベースはEQSと同値で、ここに108.4kWhの駆動用バッテリーを搭載、モーターと補機類をひとつにまとめたモジュラー型のパワートレインをリアのみ、あるいは前後に置く駆動レイアウトもEQSに準じている。つまり簡単に言えば、EVA2の上に乗っかっているボディ以外はEQSだろうとEQEだろうとSUVだろうとその中身は基本的にすべて同じである。

EQS SUVはメルセデスGLSのBEV版のような存在と言えるかもしれない。ボディサイズを比較すると実際にはホイールベース以外はすべてGLSのほうがわずかに大きかった。スタイリングのテイストは大きなEQCそのもので、EQSのような先進性はうかがえず極めてコンサバティブである。

仕様は後輪駆動の450+(360ps/568Nm)、450 4MATIC(360ps/800Nm)、580 4MATIC(544ps/858Nm)の3タイプ。航続距離はそれぞれ順に最大671km、610km、609kmと公表されている。EQSの航続距離はおよそ700kmなので、それよりも少ないのは重い車重と空気抵抗の大きいボディが原因だろう。

450+に乗ると「これくらいのパワーで十分だな」と思う。モーターならではの素早いトルクの立ち上がりとスムーズなパワーデリバリーにより、2620kgの車重はあまり気にならないし、前輪の仕事は操舵のみなのですっきりとした操縦性にも好感が持てた。ところが450 4MATICに乗り換えると「これくらいパワーがあったほうがいいかも」と心改める。最高出力は変わらないがトルクは約1.4倍になっているわけで、車重が約100kg増えても力強さを痛感する。そして580 4MATICに乗って「やっぱり本命はこれか」と再び改心した。このクラスのクルマには、スペース的にもパワー的にも余裕みたいなものを求めたくなるのが人間の心情である。乗り心地は今回の試乗車に個体差が散見されたのでなんとも評価しがたいが、試乗したモデルの中では580がもっとも快適だった。減衰がゆっくりとした少しフワッとする乗り心地で、アメリカの道には合っていた。

全車にエアサスが標準で、車高を上げてオフロードモードを選ぶとそこそこの走破性を披露する。実際にこのクルマで道なき道を行くオーナーはほとんどいないだろうけれど、雪道では安定感のある走りが期待できそうだ。

欧州では完全BEV移行に関して懐疑論が高まりつつある。将来が誰にも見えない今、自動車メーカーには全方位で準備を進める選択肢しかないだろう。

【Specification】メルセデス・ベンツ EQS SUV 580 4MATIC
■全長×全幅×全高=5125×1959×1718mm
■ホイールベース=3210mm
■車両重量=2735kg
■最高出力=544ps(400kW)
■最大トルク=858Nm(87.5kg-m)
■バッテリー容量=108.4kWh
■最大航続距離(WLTC)=609km
■サスペンション(F:R)=4リンク/5リンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク

メルセデスベンツ公式サイト

フォト=メルセデス・ベンツ ルボラン2022年12月号より転載

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