ホンダの創業50周年をセレブレートするモデルとして1999年に発売されたS2000。
昨今では往年のエスロク(S600)やエスハチ(S800)などにならって、エスニと呼ばれることが多い。
エスニは発売当初、ホンダらしい高回転型のエンジンと、同社久々のFRとあって過敏までにシュアなハンドリングが賛否両論。マイナーチェンジのたびにソフィスティケートされていくという経緯をたどった。
Honda S2000 (AP1) 1999
エスニの車名の由来である、2Lの排気量も2005年のマイナーチェンジで2.2Lへと変更されたが、これも低~中回転域での扱いづらさが指摘された北米市場の要望を受けての措置でもあった。この排気量拡大を機に車両型式がAP1からAP2に変更を受けるが、切れ味鋭い2L派に拘るファンが多いのもどことなく頷ける話でもある。エスニの販売期間は10年と長く、その間に改良や生産拠点の移動などもあって、各年式に固有のファンがいることでも有名だ。
エスニは販売当初から各ミニカーメーカーが製品化しているが、現在入手が可能なものの多くは2000年前後にリリースされた当時モノはほとんどなく、ここ数年で新たに設計されたものがメインだ。むしろ、昨今の方が、エスニがミニカー化される機会が多く、それは裏をかえせば、エスニがクラシックとして認知されて、再評価されつつある実車の周辺状況とオーバーラップする。
そんなエスニを取り巻く自動車趣味環境の変化をいち早く察知したのが、本稿でも幾度か採り上げている、東京の青山で製品開発を行う『メイクアップ』だ。かつてはミニカーの原型と言えば、実車の3面図や写真撮影などを元に原型の2D、あるいは3Dデータを作成することが多く、良くも悪くも原型設計者の主観が造形に反映されることが少なくなかった。あるいはデフォルメと称して、よりロー&ワイドに見せるように造形にアレンジを加えるのが基本で、むしろそこが原型設計者の腕の見せ所でもあった。
しかし、時代は変わり、現在の主流は“デフォルメレス”。求められるのは客観的な造形で、実車のありのままを再現することに重きが置かれる。それを可能としたのが、実車を3Dスキャンする技術である。また自動車メーカーによってはミニカー化に理解があり、実車の3D設計データ(を簡略化したもの)を提供してくれるケースもあるという。しかし、そのまま原型データに置き換わるわけではなく、3Dスキャンはあくまで点描データなので、それをトレースして面表現などを3D図面化する必要もあり、実車の3D設計データもあまりも情報量が多いため、それをミニカー用に抽出してミニカーとして再設計しなければならい。言わば、参考文献の解像度と正確さが増した程度で、実際はミニカーの設計者の手腕によるところが大きい。
今回、一連のエスニのミニカー化にあたっては、まずその大元となるAP1のノーマル車をスキャンして原型データを作成。その後、AP2や最終フェイズとなるタイプSの実車もスキャン&取材を敢行して、AP1から変更となった部分を描き足していく手法を採っている。実はこれは手間暇から言ったら、AP1、AP2、タイプSと毎回全体データを作り直す手間と大して変わらないが、実車同様に改良部分を描き足した方が、完成したモデルにブレがなく、各車の差異が分かりやすく、一緒に並べて眺めた時の整合性が大きく異なるためだと言う。
今回はまず第1弾としてAP1を写真で紹介するが、今後は各バリエーションを展開予定だという。AP1の初期型ならではの飾りっ気のないスタイルは、すでにエスニがクラシックとなった今は非常に新鮮に見える。高めの車高やホイールのサイズといったクルマ全体のスタンスを左右する部分も非常に客観的で、カタログから飛び出してきた、という表現がピッタリくる。この1台を皮切りに、メイクアップのエスニ蒐集をスタートするのも悪くない。
商品ページ
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取材協力:メイクアップ
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