メルセデス・ベンツ

数少ない輸入車ミニバンがマイナーチェンジ。堂々たる体躯から醸し出されるラグジュアリー「メルセデス・ベンツV220dロング」

メルセデス・ベンツVクラスのマイナーチェンジが行なわれた。このクラスのクルマは国産車に目が向きがちではあるが、貴重な輸入車ミニバンとしてさらなる商品力を高めたニューVクラスの魅力に迫りたい。

内外装が大幅に進化した四角いグランドツアラー

現行のメルセデス・ベンツVクラスが登場したのは2014年で、2019年に最初のマイナーチェンジを受けている。そしてデビュー10周年の今年、再びマイナーチェンジが施された。ただし“マイナー”という言葉を使うのがはばかれるほど、変更は多岐にわたっている。

ボディタイプは長さによって標準(4895mm)、ロング(5140mm)、エクストラロング(5370mm)の3つから選択可能。後者2タイプにはラグジュアリー仕様のエクスクルーシブが用意される。

まずは内外装のデザインの変更箇所から紹介したい。ラジエターグリルがガバっと大型化され、新デザインのLEDヘッドランプとの組み合わせで精悍な表情となった。インテリアは外観以上に大きく変わり、最新のメルセデスの流儀にならってメーターパネルとセンターディスプレイがつながった、横長のディスプレイとなっている。

インストルメントパネルは最新のMBUXに準じた仕様に。「ハイ、メルセデス」で起動する音声コントロールなども使用できる。

ボディは、標準(全長4895mm)、ロング(同5140mm)、エクストラロング(同5370mm)の3タイプが用意される。ロングとエクストラロングには豪華装備のエクスクルーシブモデルの設定があり、前者がプラチナムスイート、後者がブラックスイートと呼ばれる。今回の試乗会では、ロングのプラチナムスイートを中心に試乗した。ちなみに、エクスクルーシブモデルとオプションのAMGライン装着車両のボンネットには、スリーポインテッドスターのマスコットが輝く。

多くの部分が変わったなかで、パワートレインは変更なし。従来型と同じ2Lの直列4気筒ディーゼルターボと、9Gトロニックと呼ばれる9速ATの組み合わせで、駆動方式は後輪駆動となる。

2列目のシートはキャプテンシート仕様となっており、リクライニングやオットマンが装備される。

運転席に腰掛けて、「ハイ、メルセデス」と呼びかけると、MBUXが作動、声で目的地とエアコンの温度、さらにラジオの選局を設定して出発する。

今回の試乗で楽しみにしていたのが、ロングとエクストラロングにはエアサスペンションである「AIRMATICサスペンション」が装着されるようになったことだ。これにより、Vクラスの乗り心地はマイチェン前よりも明らかに快適になっていた。エアサスのおかげで乗り心地がよくなったといっても、ふわんふわんするわけではない。路面の凸凹を乗り越える瞬間の衝撃を上手に緩和して、乗り越えた後の上下動も減っている。乗り心地がよくなったというよりも、身のこなしが落ち着いたと書くほうが、このクルマのライドフィールを正確に伝えられるかもしれない。

Vクラスが採用するAIRMATICサスペンションは、路面状況やドライバーの操作に応じて、乗り心地や姿勢変化を瞬時に最適化する仕組み。これだけ背が高くてマスもデカいクルマなのに、きれいなフォームでコーナーをクリアするのも、このエアサスの手柄だろう。

Vクラスではお馴染みのリアハッチに設けられたガラスゲートも健在。狭い中クルマの後部にスペースがない状態でも荷室にアクセスできる便利な装備だ。

ただし弱点がひとつあって、それは直4ディーゼルのノイズだ。高速巡航で一定の回転数で回っているときには気にならないけれど、市街地やワインディングロードでアクセルペダルを踏み込んだ瞬間のノイズはかなりのレベル。音質が耳に不快なものではないのが救いであるけれど、音量はなかなかのものだ。1600rpmから380Nmという大トルクを発生するエンジンではあるけれど、さすがに2.2トンを超えるヘビー級ボディを加速させるには、エンジンを回す必要がある。

プラチナムスイートでは前後245/45R19のタイヤが装着される。

高速道路に入ると、速度を上げれば上げるほどフラットで快適な乗り心地になる。前述したように高速クルーズではエンジンのノイズは気にならなくなるから、このまま地平の彼方まで駆け抜けたくなる。四角いGTだ。

搭載されるエンジンは2L直4ディーゼルターボで9速ATが組み合わされる。

2列目シートに座ると、足が組めるレッグスペースと、乗り心地のよさで快適に過ごすことができる。オットマンなどの装備も充実しているし、レザーの手触りも繊細だ。

ヘッドライトを含めフロントマスクが大幅にリファインされ、より精悍な顔つきになった。

VIPの移動車両ということだと、これまではトヨタ・アルファードの一強だった。けれど、ここにきて強力なライバルが登場したと言えるだろう。

【SPECIFICATION】メルセデス・ベンツV220d ロング
■車両本体価格(税込)=9,750,000円
■全長×全幅×全高=5150×1930×1880mm
■ホイールベース=3200mm
■トレッド=前:1665、後:1645mm
■車両重量=2520kg
■エンジン形式/種類=654/直4DHOHC16V
■内径×行程=82.0×92.3mm
■総排気量=1949cc
■最高出力=163ps(120kW)/3800-4400rpm
■最大トルク=380Nm(38.7kg-m)/1600-2400rpm
■燃料タンク容量=70L(軽油)
■燃費(WLTC)=12.6km/L
■トランスミッション形式=9速AT
■サスペンション形式=前:ストラット/コイル、後:マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前:Vディスク、後:ディスク
■タイヤ(ホイール)=前後:245/45R18

【SPECIFICATION】メルセデス・ベンツV220d エクスクルーシブロング・プラチナムスイート
■車両本体価格(税込)=13,550,000円
■全長×全幅×全高=5140×1930×1880mm
■ホイールベース=3200mm
■トレッド=前:1665、後:1645mm
■車両重量=2530kg
■エンジン形式/種類=654/直4DHOHC16V
■内径×行程=82.0×92.3mm
■総排気量=1949cc
■最高出力=163ps(120kW)/3800-4400rpm
■最大トルク=380Nm(38.7kg-m)/1600-2400rpm
■燃料タンク容量=70L(軽油)
■燃費(WLTC)=12.6km/L
■トランスミッション形式=9速AT
■サスペンション形式=前:ストラット/エア、後:マルチリンク/エア
■ブレーキ=前:Vディスク、後:ディスク
■タイヤ(ホイール)=前後:245/45R19

問い合わせ先=メルセデス・ベンツ日本 0120-190-610

リポート=サトータケシ フォト=郡 大二郎 ル・ボラン2025年1月号から転載

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