










ブラジル産コンビの評価を一変させた「Volkswagen Certificates」とは
クラシックカーの価値は、単なる美しさや走行性能だけでなく、その車両が辿ってきた歴史とオリジナル状態の証明によって大きく左右される。フォルクスワーゲンが発行する「クラシック認定証(Volkswagen Certificates)」、通称「出生証明書」は、まさにその個体の素性を担保する極めて重要な公式文書といえる。ここでは、ブラジルで修復された「コンビ(タイプ2/通称ワーゲンバス)」がアメリカのオークションで高額落札された最新事例を紐解きつつ、日本のクラシックVWオーナーにも有益な、本国ドイツにおける認定証の取得状況についても解説しよう。
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オークションで実証された公式認定証の絶大な威力
クラシックカーの保存において、外観や機械的な修復と同等以上に重要視されるのが、歴史、真正性、調査、そして文書化だ。フォルクスワーゲンの「クラシック認定証」は、各モデルの来歴や工場出荷時のオリジナル仕様を裏付けることで、国際市場において歴史的車両の価値を飛躍的に高める役割を果たしている。
その絶大な威力を如実に物語るのが、2026年1月にアメリカで開催された世界有数のクラシックカー・オークション「バレットジャクソン」での出来事である。ブラジルで「コンビ」のレストアを専門に手がける企業「AJ Revival」が出品した2台の車両が、それぞれ約6万米ドル(約920万円)という高値で落札されたのだ。これらは同様にアイコニックで人気の高い他のクラシックモデルを大幅に上回る価格だった。
同社の創業者であるハイメ・ダニエル氏によれば、国際市場はクルマの来歴に非常に敏感であり、レストアされた車両にVW自身の公式認定証が付属することで、そのクルマの評価は一変するという。車両に明確で文書化された信頼できるストーリーが付与されることで、プロジェクト全体の価値が向上するのだ。同氏はこの公式書類がクラシックカーの価値向上に少なくとも30%は貢献していると見積もっており、実際に出品されたクルマは、同オークションで取引された他のブラジル産モデルの少なくとも2倍の価格で落札されたと語っている。
出荷時の姿を完全再現。オリジナル仕様を担保するデータとの合致
オークションで落札された車両のうちの1台は、ブラジルで完全に修復された1974年式「フォルクスワーゲン コンビ デラックス マイクロバス」である。ツートーンカラーの塗装と慎重な仕上げにより、当時の資料や技術基準、オリジナルのアクセサリーを忠実に守ってクラシックな構成が再現されている。
ここで重要な役割を果たしたのがクラシック認定証である。この文書を通じて、色、エンジン、モデル、その他の技術的特徴など、生産時のオリジナル仕様が確認されたのだ。塗装の色合いは工場出荷時と完全に一致し、シャシーナンバーとの照合によりエンジンや前後アクスルがオリジナルであることも証明されている。
もう1台の落札車両である1975年式「フォルクスワーゲン マイクロバス 23ウィンドウ」も同様である。ドイツの「サンバ・バス」へのオマージュとして1950年代後半のモデルに採用されていた23の窓を再現しつつ、認定証によってブラジル生産のオリジナルな特徴を数多く保持していることが証明された。エンジンや構造、各種コンポーネントが元の構成に沿って維持されているという公式の裏付けが、愛好家たちに確かな安心感を与えたのである。
過去の記録を未来へ。認定証の収益が支える歴史的コレクションの継承
VWのブラジル法人(Volkswagen do Brasil)によるこの認定証制度は、当時の従業員が手書きした記録も含まれるマイクロフィルムの記録カードから、技術データや工場情報、歴史的記録を抽出して発行される。対象となるのは製造から20年以上経過した車両であり、現在はコンビの申請が最も多いという。
さらに、この認定証の発行によって得られた収益は、サンパウロ州サンベルナルド・ド・カンポのアンシエタ工場内にある「フォルクスワーゲン・ガレージ」の歴史的コレクションの維持やレストアに還元されている。同施設ではクラシックカーやプロトタイプなど約100台のモデルを所有しており、ブランドの遺産を未来へ継承する重要な役割を担っている。
愛車の素性を正しく知る。日本のVWオーナーに向けた「出生証明書」取得のすすめ
こうしたクラシック認定証の重要性は、当然ながら日本のクラシックVWオーナーにとっても無関係ではない。通称「出生証明書」と呼ばれるこの認定証は、ブラジルだけでなくドイツ本国のクラシック部門である「フォルクスワーゲン・クラシックパーツ(Volkswagen Classic Parts)」でも以前から取り扱われている。
このドイツ本国発行の認定証は、日本のVWオーナーであってもオンラインで発注することが可能であり、手続きを行うと正式な紙の認定証が手元に送られてくるシステムとなっている。この書類には、対象となるクラシックVWの工場出荷当時の詳細な仕様や、どのようなオプションが装備されていたかといった貴重なデータが記載されている。自らが所有する車両のオリジナル状態を正確に把握し、正しい修復や維持を行う上で、また将来的な車両の価値を担保する上でも、クラシックVWのオーナーにとって非常に重要な第一級の資料となるのである。
ドイツ本国での認定証の発行価格は99.95ユーロ(送料別途)に設定されている。ただし、本稿執筆時点においては、ドイツの当該ウェブサイト(英語:https://www.volkswagen-classic-parts.com/en_uk/service/certificate-data-sheets.html)はシステムエラーによりアクセス不能な状態となっている。日本のオーナーが新たに申請を行う場合は、ウェブサイトの復旧を待つ必要がある点には留意されたい。いずれにせよ、公式な「出生証明書」がクラシックカーにもたらす圧倒的な信頼と価値は、国境を越えて普遍的なものであることは間違いない。
【ル・ボラン編集部より】
これまでクラシックVWの世界で、ブラジル製の価値は低く見積もられてきた。ドイツ本国製なら1000万円超えも珍しくないが、今回ブラジル製コンビが約920万円で落札された事実に驚かされる。正直、旧車の維持は労力を伴う。だが、その系譜を継承し、真価を重んじる愛好家にとって「出生証明書」は絶対的な安心感を与えるはずだ。
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