













前衛からの回帰。メルセデスが示した「電気のSクラス」の完成形
メルセデス・ベンツは2026年4月14日、ブランドの電動化を牽引するフル電動高級セダン「EQS」の改良新型モデルを発表した。今回のアップデートでは、新開発の800Vシステムによる充電性能の大幅な向上や、最大926kmに達する航続距離の実現など、電気自動車としての基礎性能を根本から引き上げている。さらに、AIを統合した次世代OSの採用や、伝統のスリーポインテッドスターをあしらった新デザインの導入など、多岐にわたる進化を遂げた。
【画像14枚】伝統のルーバーグリルから革新の800Vバッテリー構造まで。劇的進化を遂げたメルセデス新型「EQS」の詳細写真
10分で320kmの航続分を補充。超急速充電と高密度バッテリーがもたらす「ゆとり」
新型EQSは、次世代の新しい電気電子アーキテクチャを採用し、新たに800Vテクノロジーを導入した。これにより、最大350kWの超急速充電に対応し、わずか10分の充電時間で最大320km(WLTPモード)の航続距離分を素早く補充することが可能となっている。搭載されるバッテリーのセル化学も最適化されており、黒鉛の陽極に酸化ケイ素を混合することで、従来モデルよりも高いエネルギー密度を実現している。
EQS 450+、EQS 500 4MATIC、EQS 580 4MATICのバッテリー容量は、従来の118kWhから122kWhへと引き上げられた。これらの改良により、EQS 450+のWLTP航続距離は従来比で13%増加し、最大926kmに達している。これは、ミュンヘンからパリまでの長距離を途中の充電ストップなしで走破できる計算となる。
2段変速機付きEDUと強力な回生ブレーキ。走りの質感と牽引能力を大幅に強化
パワートレインにはリアアクスルに2段変速機を備えた新開発の電動駆動ユニット(EDU)を搭載し、発進時の力強い加速と高速巡航時の高い効率性を高い次元で両立している。制動時のエネルギー回生能力も強化されており、最大385kWの強力な回生ブレーキにより、日常的な減速の大部分をシステム単独でまかなうことができる。加えて、後輪駆動モデルの牽引能力は従来の2倍以上となる1600kgに引き上げられ、四輪駆動の4MATICモデルが持つ1700kgの牽引能力に迫る実用性を獲得している。
新たなエントリーグレードとして、最高出力270kW、バッテリー容量112kWhを誇る「EQS 400」も設定され、ドイツ本国での価格は19%の付加価値税込みで9万4403ユーロ(約1768万円)からとなっている。
伝統の星型マスコットが復活。Sクラスの風格を取り戻した「エレクトリックアート」
外観デザインにおいても、ブランドのフラッグシップにふさわしい大きな変更が加えられた。「エレクトリックアートライン」では、ボンネット上に直立する光るメルセデス・ベンツの星型マスコットと、クロームのルーバーをあしらったブラックのラジエターグリルが標準装備となり、長年愛されてきたSクラスのような伝統と風格を表現している。
一方、AMGラインを選択すると、星型パターンが背後から光るダイナミックなグリルデザインが採用される。フロントのデジタルライトは最新のマイクロLEDテクノロジーにより高解像度化されており、従来システムからエネルギー消費を最大50%削減しながら、照明領域を約40%も拡大した。
クラウド制御の足まわりと加熱式ベルト。五感を満たす「究極の移動空間」の進化
乗り心地の面では、AIRMATICサスペンションを用いたクラウドベースの新しいダンパー制御が導入され、路面の段差を乗り越える直前に減衰力を電子的に自動調整することで、フラットで快適な移動空間を維持する。室内空間には、フロントシートのシートベルトに加熱ワイヤーを内蔵した革新的なベルトヒーターが採用され、寒い日でも最高44度まで素早く乗員を温めることができる。
後席の居住性も劇的に高められており、33.3インチの大型ディスプレイを備えたエンターテインメントシステムにはHDカメラが内蔵され、移動中の車内からビデオ会議に参加することも可能となっている。さらに、フロントボンネット下には高性能なHEPAフィルターが搭載されており、外気に含まれる微粒子の最大99.65%を捕集して車内環境を極めてクリーンに保つ。
AI OS「MB.OS」が拓く対話の未来。ステア・バイ・ワイヤ導入で見えた次世代の操作感
デジタル技術の面では、AIを利用したスーパーコンピューターである「Mercedes-Benz Operating System(MB.OS)」が新たに搭載され、車両全体を統合的に制御する。新世代のMBUXには仮想アシスタントが組み込まれ、「LittleBenz」を含む3種類のキャラクターアバターを通じて、複雑な対話やよりパーソナルで感情豊かなコミュニケーションが可能になった。141cm以上の圧倒的な幅を持つMBUXハイパースクリーンは標準装備として引き継がれ、車内全体を覆うようなデジタル体験を提供する。
新型EQSには、ドイツの自動車メーカーの市販乗用車として初めてステア・バイ・ワイヤ技術が導入され、本国では市場導入の数カ月後から利用可能となる予定である。ステアリングホイールと車輪の物理的なつながりをなくし、まったく新しい操作感をもたらすこの革新的な技術の詳細については、先週公開した当サイトの記事もあわせて参照していただきたい。
新型EQSは、1915年に設立された伝統あるジンデルフィンゲン工場の「ファクトリー56」において、Sクラスやマイバッハ Sクラスとともに引き続き柔軟な混流生産が行われる。また、車両のバッテリーを柔軟なエネルギー源として活用し、電力を家庭や公共の電力網へ供給できるV2H(Vehicle-to-Home)およびV2G(Vehicle-to-Grid)の双方向充電機能にも新たに対応している。
【ル・ボラン編集部より】
EQSは2021年の登場時、“ワンボウ・デザイン”による極限の空力追求が時に「のっぺりして退屈」とも評されるほどで、旧来のフラッグシップ像とは異なる前衛性を持っていた。しかし今回の改良で、直立するマスコットとルーバーグリルというSクラスの伝統的意匠を標準装備としたのは興味深い。これは単なる懐古趣味ではなく、800VシステムやAIといった最先端の技術を、メルセデスが培ってきた「王者の風格」で包み込む試みだ。未来感一辺倒から脱却し、最高級車に不可欠な“変わらない権威”を提示した成熟のフェイスリフトである。
【画像14枚】伝統のルーバーグリルから革新の800Vバッテリー構造まで。劇的進化を遂げたメルセデス新型「EQS」の詳細写真




