国内試乗

【長距離テスト】VW ID. Buzzは初代タイプ2の正統後継か。クラシックVW乗りが紐解く「伝統の継承」と長旅で見えた「充電のリアル」《LE VOLANT LAB》

フォルクスワーゲン ID. Buzz Pro
フォルクスワーゲン ID. Buzz Pro
フォルクスワーゲン タイプ2のカタログ図版
フォルクスワーゲン ID. Buzz Pro

現代に蘇った「ワーゲンバス」の現在地

フォルクスワーゲンの完全バッテリーEV「ID. Buzz」をゴールデンウィーク前後の10日間にわたり借り出し、約1800kmに及ぶロングテストを敢行した。1963年式カルマンギアを愛用し、クラシックVW専門誌にも携わった筆者の視点から、名車である初代タイプ2のDNAが最新BEVミニバンにどう受け継がれているかを紐解く。往年のRRを彷彿とさせる走りの質に加え、全幅2m近い巨躯の取り回しや最新の150kW急速充電の実態など、長旅で見えた「EVのリアル」を徹底レポート。

【画像58枚】これが現代のワーゲンバスだ。伝統の色使いと機能性を両立したID. Buzzの全貌をギャラリーで公開

街の視線を釘付けにする「ニュー・ワーゲンバス」と、偉大なる祖先の記憶

試乗と取材の足として各地でID. Buzzを走らせていると、通りすがりの人から「かわいい」「カッコいい」「お洒落なクルマ」という言葉とともに、「ニュー・ワーゲンバスだ!」と歓声が上がる場面に3回ほど遭遇した。周囲からの注目度は抜群に高いが、クラシックVWのイベントへ取材に赴いた際でさえ、車名は知っていても完全なバッテリーEVだと認識している人は少なく、認知度はまだ十分とは言えないようだ。

筆者は1963年式のVWカルマンギアを20年近く愛車とし、過去にはクラシックVW専門誌にも長らく携わってきた。2011年にジュネーブで公開された「ニュー・ブリー」や、2017年のデトロイトでの「ID. Buzzコンセプト」を経て、2022年にようやく市販モデルが発表され、日本発売は2025年6月。上陸直後に少し触れる機会はあったが、これほどの長期間借り出して試乗するのは初めての経験だ。

「ワーゲンバス」として愛された初代VWタイプ2が生まれたのは1950年のこと。純粋な商用車として出発したモデルであり、井桁型のラダーフレームとフロアパネルが一体化した、当時の商用車としても独特なシャシー構造を持っていた。

リアに搭載した空冷水平対向4気筒(フラット4)エンジンによる低重心な構造は、広大な荷室空間を生み出すとともに、ドライブフィールも商用車としては望外なほど安定したものだった。後年のミニバンとは一線を画すこの走りに惚れ込み、空冷タイプ2を愛用し続けるオーナーは多いのだ。

走りはまさに「現代のRR」。低重心プラットフォームが叶えた痛快なハンドリング

現代のID. Buzzは往年のワーゲンバスから随分と大きくなったが、VWのBEV専用プラットフォーム「MEB」はフロアに大容量の駆動用リチウムイオンバッテリーを搭載しており、大柄なルックスからは想像もつかないほどの低重心を実現している。

車両重量はPro仕様で2550kgに達する巨躯であるにもかかわらず、最高出力210kW(286ps)、最大トルク560Nmを発揮する交流同期電動機は、動き出しから加速まで極めてスムーズであり、「意のまま」の走りを楽しめる。さらに駆動モーターがリアアクスルに搭載されているリア駆動レイアウトは、空冷VW伝統のRR(リアエンジン・リア駆動)に通じるところがある。ワインディングを走れば、鼻先からスイスイと軽快に曲がっていく感覚のドライビング・ファンを味わえるのだ。

最新EVらしく航続性能に直結する空力も徹底的に追求されており、Cd値は0.285とミニバンとしてはトップクラスの低さを誇る。走行中はエンジン音も一部EVのような疑似音もなく、風切り音も最小限のため、静粛な車内では前席と後席の間での会話もストレスがない。懸念された重量級EVの乗り心地も、前輪にマクファーソンストラット、後輪に4リンクのサスペンションを採用し、非常にしなやか。市街地でも田舎の荒れた路面でも乗員にストレスを感じさせないのは、フロント235/55R19、リア255/50R19という大径ながらエアボリュームが十分に確保されたタイヤを装着していることも貢献しているだろう。

この記事はLE VOLANT LAB会員限定公開です。
無料で会員登録すると続きを読むことができます。

フォト=竹内耕太/K.Takeuchi、VOLKSWAGEN AG

注目の記事
注目の記事

RANKING