






















塗装工程だけで400時間!
ポルシェは2026年6月2日、ポルシェ・モルドバの設立15周年を記念し、同国の文化的ルーツを表現して製作したワンオフモデル「911 GT3 with Touring Package ‘Tree of Life’(911 GT3ツーリングパッケージ『ツリー・オブ・ライフ』)」を発表した。
【画像23枚】ポルシェの特注部門が本気を出したワンオフモデルの圧倒的ディテールを見る
熟成するブドウを表現したグラデーション塗装と手描きのグラフィック
この車両は、顧客の特別な要望に応えるポルシェのカスタマイズ部門「ゾンダーヴンシュ(Sonderwunsch)」を通じて製作されたものである。モルドバ共和国において最も広く認知されている文化的象徴のひとつ「生命の樹(ツリー・オブ・ライフ)」をテーマとし、同国の伝統や持続的な成長を、カラーリングやインテリアデザインの随所で表現している。
まずエクステリアで最大の特徴となるのは、フロントの「ヴィオラパープルメタリック」からリアの「クロマフレアマジックマゼンタ」へと変化する、複雑なグラデーション塗装である。これは熟成していくブドウの過程から着想を得ており、モルドバに深く根付くワイン造りの伝統を反映しているという。このグラデーションは20/21インチのマグネシウムホイールにも施され、車体全体の一体感を高めている。
また、フロントフードからルーフにかけては、「ネオジム・ポルシェ・ゴールド」のカラーによって、「生命の樹」のグラフィックが、手描きであしらわれている。この多層塗装と手描きグラフィックの組み合わせは技術的な難易度が非常に高く、完成までに約400時間が、緻密な手作業で費やされたという。
フロントエプロンのグリル部分には、モルドバを象徴する「M」の文字が金属から精密にエッチング加工されており、さりげないアクセントとなっている。
伝統的要素を現代に落とし込んだインテリア
内装においても、モルドバの文化的なストーリーが素材やパターンを通じて表現されている。リラ(Lila)カラーのレザーを基調とし、ルビースターネオ(Ruby Star Neo)のアクセントやアタカマベージュ(Atacama Beige)のステッチを採用。シート中央やドアパネル、グローブボックスなどには、伝統的な民族衣装の職人技を現代的に再解釈したクラシックな「パシャ(Pasha)」パターンを施した。
さらに、シフトノブやシートのバックレストにはパルダオ(Paldao)材が使用されており、モルドバの自然のルーツや伝統的な職人技の象徴となっている。
関係者のコメントと今後の展示
ポルシェの中央・東ヨーロッパCEOであるマイケル・キルシュ氏は、本プロジェクトについて次のようにコメントを寄せている。
「ポルシェ・モルドバは同国での15周年を記念して『ツリー・オブ・ライフ』の車両を依頼してきましたが、我々はこのプロジェクトを任されたことを光栄に思います。このプロジェクトが、個人のビジョンとポルシェのパーソナライゼーションの提供が組み合わさった時に何が可能になるのかを発見するきっかけとなり、世界中のお客様やブランド愛好家の皆様にインスピレーションを与えることができると信じております」
また、ゾンダーヴンシュ担当ディレクターのクラース・フープス氏は、プログラムの意義について以下のように語っている。
「私たちのゾンダーヴンシュプログラムを通じて、お客様のビジョンを現実のものにし、ポルシェのパーソナライゼーションの頂点を体現することを目指しています。『Tree of Life』のようなプロジェクトは、色や素材、プロセスを根本から見直し、伝統的な職人技と新たな技術的解決策を融合させるという挑戦を私たちに与えてくれます。そうすることで、さらなるアイデアの刺激となるような、唯一無二の車両を創り出そうと努めています」
本モデルは、キシナウにある国立民族学・自然史博物館で開催された顧客限定イベントにて初公開された。同車は今後、同館での専用展示を経て、ポルシェセンター・モルドバにて展示される予定となっている。
【ル・ボラン編集部より】
GT3の剥き出しの狂気と、モルドバの悠久の文化。一見相反する世界が特注部門の手で見事に交差した。ウイングを持たない「ツーリングパッケージ」が選ばれたのは必然だろう。サーキットから切り離されたこのGT3は、もはやタイムを削る機械ではない。ブドウの熟成を模した塗装や伝統のパシャ柄を纏い、走る芸術へと飛躍した。無機質な速さを極めるポルシェが、あえて土着的な「生命の樹」を描く。その哲学的な奥深さこそが、911という器の圧倒的な許容力を雄弁に物語っている。
【画像23枚】ポルシェの特注部門が本気を出したワンオフモデルの圧倒的ディテールを見る


