コラム

スーパーの「袋詰め」はなぜ無駄か。ダイハツ大分(中津)工場で見た「極限の効率化」の凄み【渡辺慎太郎のツベコベイワセテ その8】《LE VOLANT LAB》

アンダーボディ、サイドパネル、ルーフなどを溶接するボディの生産工程。通常なら、正確な位置にスポット溶接できるよう、パーツを治具で固定するが、ここでは溶接用のロボット自らパーツの位置決めも行う。
ダイハツの大分(中津)工場。写真の上に見える積み出し埠頭まで、工場から専用の搬送用道路が整備されている。軽商用車と軽乗用車の多品種混流ラインを持つ第一工場と軽乗用車専用の第二工場と合わせて、年間で最大46万台の生産能力を誇る。
第一工場では特装車も手掛けている。特装車は1台1台の仕様が微妙に異なるので、仕上げの作業はサブラインで人の手によって行われる。
ハイゼット・トラックにパワートレインが締結された工程。よく見ると、キャビン後方の荷台の真下あたりにエンジンが置かれている。“軽トラ”が“農道のフェラーリ”などと呼ばれるのは、このミッドシップレイアウトに由来する。
ダイハツでは、ハイゼットカーゴやアトレーにEV仕様を揃えている。初めてのEVの生産ということで、生産立ち上げに当たっては何度も議論を重ねたそうだ。従業員の安全と負担の軽減、作業工程の効率化、そしてもちろんコスト削減についてである。
アンダーボディ、サイドパネル、ルーフなどを溶接するボディの生産工程。通常なら、正確な位置にスポット溶接できるよう、パーツを治具で固定するが、ここでは溶接用のロボット自らパーツの位置決めも行う。
第一工場は多品種を扱うので、パーツの種類もさまざまだ。写真はリアアクスルを装着する工程で、手前からEV用、軽商用車用リーフスプリング、軽乗用車用リジッドアクスルが並んでいる。
アッセンブリーラインには、サブラインで組み立てられたパーツがオンタイムで運ばれてくる。ハイゼットが流れているのにムーヴのシートがやってくるなんてことは絶対にない。
ラインオフした車両は、従業員が乗り込んで自走でこの最終検査工程まで運ばれる。ラジコンを組み立ててもパーツが余ったりサーボがうまく動かなかったりする自分からすると、数万点の部品が組み付けられたクルマが、ラインオフ時に一発でエンジンがかかってすぐに走り出す光景は、何度見ても奇跡に思えてしまう。

日常の買い物で直面する、小さなイライラと非効率

スーパーマーケットへ行くたびに「なんだかなあ」と思うことがある。

入口で買い物カゴを手に取り、目当ての商品を次々にカゴへ入れ、レジ前の列に並ぶ。自分の番がやってきて、レジにカゴを置く。レジスタッフの方はカゴから品物をひとつひとつ取り出し、バーコードを読ませ、チェック済み商品専用のカゴへ入れる。この時、気を遣ってくださって、ペットボトルなどの重いものは下のほうへ、ポテトチップなどの軽いものはその上に配置してくれる。支払いを済ませ、通称サッカー台と呼ばれるところで持参したエコバッグに商品を入れる。

【画像8枚】数万点の部品が1台のクルマになる奇跡。高品質と低価格を両立するダイハツの生産現場をギャラリーでチェック
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問題はこの時だ。エコバッグにだって重いものから入れたいのに、それらはカゴの1番下に埋もれている。その上に乗っかっている軽いものをいったんカゴから出すか脇によけ、重いものを発掘してから入れ、それからようやく軽いものを収めていく。

3回の「商品移動」がもたらす極めて非効率なロジスティクス

スーパーマーケットなどでは、「商品を入れる」作業が都合3回生じる。欲しい商品をカゴに入れる時、レジスタッフがチェック済み専用カゴに入れる時、そして最後に持ち帰るためのエコバッグや袋に入れる時だ。それぞれの段階でそれなりに考えたり配慮したりしながらやっているのに、1回目と2回目の努力は結局3回目でチャラになってしまう。この、極めて非効率なロジスティクスがどうにかならないものだろうかと、いつも思っている。

ダイハツの大分(中津)工場。写真の上に見える積み出し埠頭まで、工場から専用の搬送用道路が整備されている。軽商用車と軽乗用車の多品種混流ラインを持つ第一工場と軽乗用車専用の第二工場と合わせて、年間で最大46万台の生産能力を誇る。

ダイハツの大分(中津)工場。写真の上に見える積み出し埠頭まで、工場から専用の搬送用道路が整備されている。軽商用車と軽乗用車の多品種混流ラインを持つ第一工場と軽乗用車専用の第二工場と合わせて、年間で最大46万台の生産能力を誇る。

ちなみに某スーパーマーケットでは、専用のエコバッグをチェック済み専用カゴに先に配置してから、レジスタッフの方がそこへ商品を入れてくださる。自分が知る限り、この方法が現時点ではもっとも効率的だ。店内にある数多のカメラがカゴに入れた商品を認識して、そのまま店を出ても後から請求がちゃんと来るような次世代型店舗も存在するようだけれど、自分が生きている間に広く普及するかどうかは微妙である。

ダイハツの軽自動車生産現場で見た「無駄なき世界」

ダイハツの大分(中津)工場の見学会に参加した時に「スーパーマーケットにおける非効率なロジスティクス問題」が思い浮かんでしまった。工場というのは、非効率を絶対に許さないよう徹底的に管理された空間だからである。

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Photo: Shintaro Watanabe, Daitatsu

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