コラム

【インタビュー】「まずはベントレーであること」。初のEV「トルカル」デザイン責任者が語る、革新の中の揺るぎないアイデンティティ《LE VOLANT LAB》

ベントレー・トルカルのエクステリア・デザイン責任者、T.ジョン・メイヤー
ベントレー・トルカルのエクステリア・デザイン責任者、T.ジョン・メイヤー
ベントレー・トルカルのエクステリア・デザイン責任者、T.ジョン・メイヤー
ベントレー・トルカルのエクステリア・デザイン責任者、T.ジョン・メイヤー
ベントレー・トルカルのエクステリア・デザイン責任者、T.ジョン・メイヤー

トルカル・デザイン責任者、T.ジョン・メイヤー氏に訊く

107年におよぶベントレーの歴史において初のBEVモデルとして2026年9月23日に発表された「トルカル」。開発陣が「我々の使命は“電気で走るベントレー”を作ることではなく“次の偉大なるベントレー”を作ることであった」と語るトルカルは、どのような思いをこめてデザインされたのか? 新たにエクステリア・デザインの責任者に就任したT.ジョン・メイヤー(T.Jon Mayer)に話を聞いた。

【画像39枚】ベントレーの品質がひと目で伝わる。初のEV「トルカル」に込められた伝統のグリルとこだわりのアナログ素材を見る

ひと目で伝わる「ベントレーの品質」と、アイデンティティとしてのグリル

建築家であれプロダクトデザイナーであれ、誰もがまず3つか4つのステップで物を捉えます。1つは遠距離(15m〜100m先)から見たときの第一印象。2つ目は近づいたときに見える「顔」や「目」、そのクルマ独自の表情。3つ目は「ボディの骨格」やフォルム、全体の形状。そして4つ目がさらに接近したときに見える、目(ライト)の奥、グリルの色、細部のディテールです。

まず考えたのは、ひと目で「ベントレーの品質」が伝わることです。長く堂々としたボンネット、そこから1本の長いラインが後方へと繋がっていく。このエンドレス・ボンネットがラグジュアリーの象徴で、このデザイン最大の革新的な特徴です。

ベントレー・トルカル:ライトに使われるダイヤモンド状のパーツ

次にフロントに目を向けると、2つのライトがあります。これが「顔」であり「目」です。ベントレーでは伝統的に常にグリルが存在します。今回はそのグリルを少し広げました。そこに1990年代のコンチネンタルTの顔つきや目の部分を再現しつつ、トルカル独自の表情へと昇華させました。昨今の新しいEVにはグリルがないものも多いですが、私たちにとってのアイデンティティはグリルにあるのです。

確かに空力的に不利になりそうですが、ちゃんと透明のカバーでシールドされているので、空気抵抗の低減には配慮されています。ただそういったエアロダイナミクスに関しては、一番に追求した、一番優れているクルマではないですね。それよりもクルマの個性、キャラクター、デザインという方を重視しています。

効率を度外視してでも守るべき「重厚感」というベントレーの特徴

クルマの開発において我々としては数字をただ追っているだけではありません。それはただのディレクションにすぎないと思うんです。我々が追っているのは「エクスペリエンス(体験)」です。

それはインテリアにおいても同じです。私たちが常に最初に行うのは、素材を変更することです。より重みを持たせ触感を高めるため、たとえば金属パーツには本物の金属を使用します。そして同時に操作時の手応えも追求しています。

ベントレー・トルカル:オンブレヴェニア

なぜなら、ラグジュアリーとは「重厚感」そのものだからです。もちろん現代のクルマには軽量化も必須なので、なるべくメタルを薄くするなど工夫はしています。しかし元々重いクルマだということが、ベントレーの特徴でもあるので、効率とかはある程度度外視して、重厚感を出していこうと考えています。

革を叩くウインカー音。徹底してナチュラルな「アナログ」へのこだわり

今回のトルカルには他に様々な新しい試みも行っています。例えばディスプレイに出てくるクリスタルの画像。最初はコンピューターでダイヤモンドの影を作ってみたのですが、あまりにも人工的だったので、カンブリアクリスタルに行き、職人が手作業でカットした本物に光を当てて再現しました。

ベントレー・トルカル:モード変更のときにスクリーンに現れるクリスタル

また駆動系の音は、伝統の6.75L V8 OHVの音をサンプリングし、ドラムで再現したもの。ウインカーの音は革をハンマーで叩いたもの。警告音はフルートの音色。またデジタルアシスタンスの音はクリスタルのグラスの縁を指でなぞった時の共鳴音を使うなど、電子音ではなく、ナチュラルであることにこだわりました。

ベントレー・トルカル:ウインカー音の革とハンマー

これを思いついたのは、UX(ユーザーエクスペリエンス)デザインチームです。実は私が2年間、このチームを率いていたのですが、クルマに乗った時にいい気分になる。そして降りる時には、乗る前の時よりも気分良く降りられるようにという発想で考えられたものです。

それはトルカルの特徴であるキュレーション・エンジンもそうです。顔認証とかバイオメトリックセンサーを使って、ドライバーがいまどういう状態なのかを検知して、ウェルビーイングに繋げていこうという発想です。

ちなみにUXチームのライティングデザイナーは日本人女性なんです。とても才能ある方です。

「まず第一にベントレーであること」。どのパワートレインでも保証される最高峰の品質

このように「優れたデザインには、必ず素晴らしいストーリーがある」というのが、私の考えです。もちろんデザインするのは決して簡単ではなかったですけれども、ベントレーというのはどういう存在なのか、何を強みにしているのかが明確だったので、そこを軸にデザインを考えていきました。

ベントレー・トルカル:メリノウール

私たちはあくまで「まず第一にベントレーである」というアプローチで捉えています。ですからディテールへのこだわり、デザイン、クラフツマンシップ、そしてラグジュアリーな体験は、それがEVであれ、ICEであれ、ハイブリッドであれすべて同じでなければならない。それこそが、お客様が自由に選べるというラグジュアリーの本質だと思います。ベントレーである以上、どんなベントレーであっても等しく最高であるべきなのです。我々が提唱する「luxury of a customer’s choice」とは、「どのパワートレインを選んでも、ベントレーとしての最高峰の品質が保証されていること自体が、お客様にとっての究極の贅沢である」という深い意味を持っているのです。

【画像39枚】ベントレーの品質がひと目で伝わる。初のEV「トルカル」に込められた伝統のグリルとこだわりのアナログ素材を見る

Photo: Bentley Motors

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