
7年ぶりのモデルチェンジを受け、3代目へと生まれ変わったBクラス。AクラスでデビューしたMBUXをはじめとするソフト面のアップデートに加え、ハード面も先代Bクラスの美点をしっかりと受け継ぎながら進化を果たしている。ファミリーカーやシティコミューターの選択肢として、魅力的な一台が誕生した。
内外装は適度にリフレッシュ、なおかつ高い質感を実現
エンジンを横置きにしたFF系メルセデスの中では、もっとも手堅い選択といえるBクラス。実際、全高が高いモノスペースボディは実寸以上のユーティリティを実現、メルセデスとしては手頃な価格と相まって日本でも安定した支持を集めた。先代はモデルライフ途上でパワフルな2Lターボ仕様や、その4WD版が追加されているが、人気は1.6Lターボを搭載したベーシックな「B180」に集中。晩年はそれのみのモノグレードに整理されていた点からも、堅実なユーザー像が見て取れる。つまり、メルセデスといえども過剰な要素は必要ないと判断されていたわけだ。ちなみにインポーターによればグレードを絞っても販売に衰えはなく、先代B180は末期まで着実に売れ続けたという。
そんなBクラスが、3代目へとスイッチした。7年ぶりのモデルチェンジということでハード面は当然ながら進化しているが、このモデルならではの美点はしっかり受け継がれている。ボディサイズは先代比で全長が25mm、全幅は10mm、全高で20mmといずれも若干ながら拡大。この中で気になるのは、全高が立体駐車場で適応外となる可能性がある1565mmになったこと。しかし、スポーツサスペンションやエアロ外装などをセットにしたオプションのAMGラインを選ぶと車高は1550mmに収まる(全長は5mmプラス)。
そのスタイリングは、Bクラスの特長を継承しつつアップデートした正常進化の出来映え。近年のメルセデスらしくフロントマスクが精悍な面持ちとなる一方、全体の仕立てはスッキリとシンプル。サイド面のキャラクターラインなどがいささか装飾過剰な感もあった先代と比較すると、この3代目は先述のシンプルさがカタマリ感を演出。派手さこそないが、適度な若々しさと上質感を醸し出している。この背の高いモノスペースボディは空力も秀逸で、Cd値は0.24。わずかながら先代を上回る数値を実現している。
基本的に現行Aクラスをベースとする室内も、先代と比較すれば格段に若々しい。タブレット端末を彷彿とさせるワイドスクリーンのメーターは、車外から入る光の加減で多少見えづらい状況がある点は気になるが、多彩な表示機能はそれを補ってあまりある。またAクラスと同様、対話型インターフェイスのMBUXを搭載するだけに、“新しいクルマ”ならではの操作方法も楽しめる。
そして、前席の見ためこそ適度にタイトな室内は歴代Bクラスと同じくゆとりある広さを実現。実際、前席の室内幅は先代比で33mm拡大された1456mmに、同じく前席の頭上空間も5mm広くなっている。絶対的にはコンパクトなボディながら、後席はセダン系メルセデスを凌ぐほどの広さだからユーティリティに不満を抱く人はいないだろう。スクエアな形状が好ましい荷室も、容量は455〜1540Lと十二分な広さだ。
ドライブフィールはメルセデスらしく上品に
日本仕様に用意されたエンジンは、B180が搭載する1.4LガソリンターボとB200d用の2Lディーゼルターボの2タイプ。組み合わせるトランスミッションは前者が7速DCT、後者は8速DCTとなる。今回試乗したのはベーシックなB180だったが、走りはこのクラスのモノスペースとして満足できるものだった。
先代のB180比で排気量を落とす一方、出力が14ps向上している4気筒ターボは品の良さを感じさせるパワーキャラクターが持ち味。同クラスのダウンサイジングターボと比較すると、走る環境によっては繊細に過ぎる場面もあるが、特に日常域ではメルセデスに相応しい質感と静粛性が得られていることが好ましい。また、導入初期のAクラスでは制御の粗さが指摘されたというDCTも試乗車に限れば高効率ぶりとスムーズな変速マナーを披露。最大トルクの発生回転域が先代比で多少だが狭くなった(最大値は200Nmで同じ)ことも意識させない。
試乗車はAMGライン装着車ということで、足回りは標準より1インチ大径の18インチホイールやスポーツサスペンションが装備されていたが、乗り心地は普段使いのコンパクトカーとして納得できる仕上がり。標準より車高が15mm低く、なおかつタイヤが太くロープロファイル化されるだけに路面からの入力を正直に拾う傾向はある。しかし、入力のカドは丸められているので意識はしても不快なほどではない。加えて、それを受け止めるボディがしっかりしているので乗り心地は硬いというよりスッキリと軽快な印象すらある。今回は短時間ながら後席で移動する機会もあったのだが、現状なら長時間の移動も苦にならないという印象だった。どっしりと腰の据わった伝統的メルセデスライドとは趣が異なるが、絶対値としての快適性は上々といえる。

10.25インチの高精細ワイドディスプレイを並べる基本レイアウトはAクラスと同じだが、Bクラスではインパネの中央と助手席側上部を凹形状として室内の広さ感を演出。対話型インターフェイスのMBUXも装備。
この種のモデルにスポーツ性を期待する人は少ないはずだが、新しいBクラスはそうした要求にもしっかり応えてくれる。先代でもすでにハンドリングはナチュラルだったが、新型ではそれに一層の磨きがかかって、多少飛ばすという程度なら背の高さを意識させることはない。さすがにベースとなったAクラスほど軽快とはいかないが、4輪ともに接地感の確かな仕立てなので積極的に走らせた際の安心感も高い。
発売から最初の1カ月ですでに600台を超えるオーダーを受けているという新型Bクラス。その隙のない作りが、先代オーナーだけでなく幅広い層に魅力的に映ることは間違いなさそうだ。

ライト類はすべてLED化。試乗車はオプションのAMGライン装着車でボディにはフロントスポイラーとサイド&リアスカートが装備。ホイールも18インチとなりタイヤは前後225/45R18サイズにインチアップされる。
【Specification】メルセデス・ベンツB180
■車両本体価格(税込)3,840,000
■全長×全幅×全高=4425×1795×1565mm
■ホイールベース=2730mm
■トレッド=前1570/後1560mm
■車両重量=1440kg
■エンジン型式/種類=282/直4DOHC 16V+ターボ
■内径×行程=72.2×81.3mm
■総排気量=1331cc
■圧縮比=10.6cc
■最高出力=136ps(100kW)/5500rpm
■最大トルク=200Nm(20.4kg-m)/1460-4000rpm
■燃料タンク容量=43L(プレミアム)
■燃費=(WLTC)15.0km/L
■ミッション形式=7速DCT
■サスペンション形式=前ストラット/コイル、後トーションビーム/コイル
■ブレーキ=前Vディスク、後ディスク
■タイヤ(ホイール)=前後205/55R17(6.5J)
問い合わせ先=メルセデス・ベンツ日本 0120-190-610