ロータス

これぞ究極のライトウェイト! ロータス・セブンはスポーツカーにおける唯一無二のマスターピースだった

ケータハムが継承したことで、現代でも多くのフォロワーを持つセブン。往年のフォーミュラカーを範とするライトウェイト・スポーツの決定版は、今なおスポーツカーファンにとってのマスターピースであり続けている。

旧き佳き時代の熱意と技術が紡いだマスターピース

メイクスや時代、そして国籍まで乗り越えて究極のライトウェイト・スポーツカーとして語られることが多いロータス・セブン。500kgに満たない車重を誇るこのクルマの存在感は、時代が進みクルマの車重が増すほどにクローズアップされていくことになるのだろう。

タイヤが四隅に張り出したセブンの独特のスタイリングは、今日ではロータス・カーズの創始者であり稀代の発明家でもあったアンソニー・コーリン・ブルース・チャプマンのアイデアのように思われているが、戦後のイギリスでは多くのバックヤードビルダーがセブンによく似た“スペシャル”を作り出していた。

戦勝国ではあったが疲弊していた戦後のイギリス人はしかし、古びたオースティン・セブンに大改造を施して、戦中には飛行場として使われていたグッドウッドやシルバーストンといったサーキットに持ち込んで鬱憤を晴らしたのである。

現代ではシンプルの極みとして知られるセブンだが、デビュー当初その簡潔さには違った意味があった。高い税金から逃れるためにキットカーとしてセブンを購入したアマチュア・レーサーたちにとっては組み立てやすい構造こそ重要なものだったのである。

これ以上何も差し引くことのできないロータス・セブンの構造は、アルミモノコック構造が出回る以前のフロントエンジンフォーミュラカーそのものだった。ゲージの細い鋼管をロウ付けの低温溶接でスペースフレームとして組み上げ、そこにストレスメンバーとしても効くアルミパネルをリベット留めしていく。軽量というだけでなく現代では高級なイメージも纏うアルミボディだが、戦後のイギリスでは鉄の方がはるかに貴重でありアルミは配給による入手が容易だった。ちなみにセブンのフレームに塗られたグレーのペイントは英国海軍の使い残しである。

ケントのOHVエンジンは、ウェーバーのキャブを1基搭載する初期型。ロータス製のインマニが備わり、軽やかな吹け上がりを約束する。

1957年に登場した原初のセブン、所謂シリーズ1は、ノーズコーンやウイング(フェンダー)類までアルミ板で構成されており、パワーユニットは消防ポンプを大改造したコベントリー・クライマックス社のシングルカム4気筒が搭載されていた。

今回ブリティッシュ・ライトウェイト・スポーツのスペシャリストであるウィザムカーズから借り出したロータス・セブンは1962年式のシリーズ2で、FRP製となったノーズコーンやダンボの耳のように長い“クラムシェル”タイプのフェンダーに特徴がある。

草創期のロータスは自動車メーカーというよりバックヤードビルダーと呼ぶべき小規模のスペシャリストであったため、様々な大メーカーの部品を使用していた。セブン・シリーズ2にはBMCのAシリーズ・エンジンと英国フォード製のOHV4気筒、通称ケント・ユニットが搭載されており、チューニングによってさまざまなグレードが存在していた。

シリーズ2のうち最強モデルは1500ccのケントをベースにコスワースがチューニングを手掛けたタイプで、2基のウェーバーDCOEキャブレターにより96psの最高出力を誇った。一方今回のセブンは、1基のウェーバーが貴重なロータス製のインテークマニフォールドを介して装着されていることから考えて、セブン・シリーズ2のベーシック版と思われるが、半世紀以上も前に生産されたエンジンで、数度のオーバーホールを経ていると考えるのが一般的であり、現状の性能は不明である。

鋼管とアルミ板でボックス状に組まれたコクピットはセブンのアイコンとして知られる。ソフトなサイドスクリーンと幌を装着することで、最低限の快適性能は担保されている。

フォーミュラカーのモノコックに足を差し入れるようにセブンのコクピットに収まり、足裏でペダル類の感触を確かめる。セブンのフットボックスは最小限なので、レーシングシューズのような幅の狭い靴が必要となるのはセブン乗りの常識である。シートはフロアとリアバルクヘッドにかけて薄いクッションが置かれているだけであり、前後調整機能など付かないが、165センチ以上の身長があればほぼほぼフィットしてしまうから不思議だ。

パワーは限られるがそれにも増して車重が軽いので、セブンを上手く発進させられないドライバーは稀だ。心地よい振動を伴うエンジンは快活で、クルマに促されるままシフトアップを繰り返していくと、すぐにトップギアに行き着いてしまう。ステアリングを通して感じるサスペンションの感触やグリップ感は直線路では心許ないが、コーナリングの荷重が掛かると滑らかに変化し、少しの抵抗感もなくコーナーを駆け抜けることができる。

軽自動車のエンジンを搭載した現代のケータハム・セブン160は、この時代のセブンを範としているが、両者のフィーリングはかならずしも一致しない。フレームが硬く、サスペンションを自由に動かすという現代的な発想のセブン160に対し、セブン・シリーズ2はタイヤ、足、フレーム、そしてシートやステアリングといった全身が適度にしなることで、ドライバーとのこの上ない一体感を創出している。 オリジナルのセブンが発する天衣無縫な感覚は、旧き佳き時代の熱意と技術が紡いだマスターピースなのである。

SPECIFICATION
LOTUS SEVEN SERIES2
全長×全幅×全高:3658×1422×1092mm
ホイールベース:2235mm
トレッド(F/R):1194mm
車両重量:469kg
エンジン形式:水冷直列4気筒OHV
総排気量:1498cc
最高出力:66ps/4600r.p.m.
最大トルク:10.7kg-m/2300r.p.m.
変速機:4速M/T
サスペンション(F):ダブルウイッシュボーン
サスペンション(R):リジッド
タイヤ (F/R):3.5/13

フォト=佐藤亮太 R.Sato

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