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【プロトタイプ試乗】すべての進化は戦うために?GRヤリスの新章始まる「トヨタ・GRヤリス」

モータースポーツを起点とする高性能ハッチ、GRヤリスがアップデート。その内容は発売以降、モータースポーツ参戦を経て蓄積されたノウハウが惜しみなく投入。走り好きのマニアを唸らせるものへと仕上げられていた。

進化というより深化? 実戦的改良が目白押し!

モータースポーツ参戦から得たノウハウを元に改善が重ねられたというGRヤリス。その成果は、資料に目を通しただけでもヒシヒシと伝わる。まず、搭載する1.6Lターボはパワー&トルクがそれぞれ32psと30Nm向上しているが、注目すべきは新たに「GR-DAT」と名付けられた8速ATが用意されたこと。これはモータースポーツでもMTと同等に戦えることを目標に開発されたもので、制御はスポーツ走行用に最適化。また変速用クラッチには高耐熱摩擦材を採用、世界でもトップ級の変速レスポンスを実現した。

新採用の8速AT仕様は、サーキットでも満足できるレスポンスの良さを披露。

それを受け止めるボディも、従来比でスポット溶接打点が約13%、構造用接着剤の塗布部分も24%拡大して剛性がアップ。ボディとショックアブソーバーを締結するボルト本数も1本から3本へと増やし、ステアリング操作に対する応答性や操縦安定性が高められた。また、冷却性能も強化。モータースポーツ参戦を想定したオプションの「クーリングパッケージ(サブラジエーターやインタークーラースプレーなどのセット)」が設定されたほか、GR-DATにはATFクーラーも装備される。

今回はダートでも試乗できたのだが、操作量が多い場面だと2ペダルの効能は一層際立つ。

外観も“実戦的”改良が施された。バンパーは損傷の修復を容易にすべく3分割構造となり、ロワーグリルには軽量化と高い強度を両立するスチールメッシュを採用。さらに、従来はリアスポイラー内にあったハイマウントストップランプをリアゲートに移設。カスタマイズ性も拡張されている。
そして、極めつけはインテリア。インパネは専用仕立てとなり、操作パネルとディスプレイはドライバー側に15度傾けて配置。センタークラスター上端は50mm下げられ前方の視界が拡大されたほか、各種スイッチ類のレイアウトもハーネス装着時に使いやすいものへと改められた。また、メーターは12.3インチのフルカラーTFTを採用。情報量増大に加え、スポーツ走行時の視認性も向上した。そして、インパネの大改造に合わせて着座位置は25mmダウン。ドライビングポジションが、一層スポーティなものへと改善されている。

限定車のGRカローラと同じパワー、そしてそれを凌ぐトルクを発揮する1.6L直列3気筒ターボ。従来の6速MTに加え、新たにスポーツ性が際立つ8速ATも用意された。

そんな進化版、試乗して最初に気付かされるのは全体の剛性感が向上していること。従来型と比較すると、ひとつひとつの操作に対する反応が正確なこともあってか軽快感も増している。また、劇的にパワフルになった印象こそないが1.6Lターボもシャープな吹け上がりが印象的。よりスッキリとした乗り味になったシャシーと相まって、乗り手の気分を高揚させてくれる。また、GR-DATのレスポンスは額面通り。サーキットでも不満がないばかりか、ダートでは扱いやすさにも貢献していて、入門者にもピッタリと思える仕上がりを披露してくれた。

レース用ハーネスやヘルメット着用時の使いやすさを考慮したインパネ回りは、新生GRヤリスの専用品。8速ATのシフトセレクターは、現行のCVT仕様(RS)比で75mm高くMTと同等の位置に。

また、今回から4WDのモードセレクトも変更。駆動配分はノーマルこそ前60:後40と変わらないがトラックモードは前後50:50から60:40〜30:70の間で可変するようになり、新たに前53:後47のグラベルモードも設定。実際に試すとサーキットのような環境だとグラベルが扱いやすい感触だったが、走りの気持ち良さという点ではトラックモードも好印象だった。
このように、実戦を通じて走りを深化させた進化版GRヤリス。マニア志向のクルマ好きには、実際の速さだけではなく開発にまつわるストーリー性も気になるポイントとなるかもしれない。

BBS製18インチ鍛造アルミホイールや、ミシュラン・パイロットスポーツ4Sを標準とするタイヤは従来通り。だが、進化版はダンパーの締結方法を変更するなど足回りも進化している。

【Specification】トヨタ・GRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”(GR-DAT)
■全長×全幅×全高=3995×1805×1455mm
■ホイールベース=2560mm
■トレッド=前1535、後1565mm
■車両重量=1300kg
■エンジン型式/種類=G16E-GTS/直3DOHC12V+ターボ
■総排気量=1618cc
■最高出力=304ps(224kW)/6500rpm
■最大トルク=400Nm(40.8kg-m)/3250-4600rpm
■燃料タンク容量=50L(プレミアム)
■トランスミッション形式=8速AT
■サスペンション形式=前:ストラット/コイル、後:Wウイッシュボーン/コイル
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前後:225/40ZR18

問い合わせ先=トヨタ自動車 TEL0800-700-7700

フォト=小林俊樹 ル・ボラン2024年3月号より転載
小野泰治

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