ロータリー復活の夢を乗せて降臨!
このコラムでは、7月に当サイトでご紹介した「ポルシェ 911GT3 ツーリングパッケージ 2021」のモデルカーに引き続き、日本を代表する精密モデルカー・マニュファクチャラー、東京・青山の「メイクアップ」が手がける「アイドロン」1/18新作をご覧に入れる。車種は「マツダ ICONIC(アイコニック)SP 2023」。撮影はいつも通り、モデルカー撮影の第一人者、写真家の服部佳洋氏にお願いした。
【画像11枚】プロポーション、ディテール、カラーまで全てが超一級のその出来栄えを見る
実車のマツダ・アイコニックSP 2023について
世界中の自動車メーカーが効率的なEVシフトに追われる現代において、2023年のジャパンモビリティショーでマツダが披露した「アイコニックSP」は、文字通り異彩を放っていた。これは単なる未来予測のデザインスタディではない。効率や利便性という言葉の裏で、私たちが忘れかけていた「クルマを愛する高揚感」をもう一度取り戻すための、マツダからの熱いメッセージだ。
もしも、この美しいスポーツカーが、あのコンセプト通りの姿で私たちの前に発売される日が来たら……。そう想像するだけで、クルマ好きの胸の鼓動は高まる。そしてマツダ信奉者なら、環境の世紀とはいえ「ロータリーエンジン」の復活を願うことは、ずっと胸に抱き続けてきた特別な夢であり聖域だ。
ローターが滑らかに回転を上げるあの独特のフィーリングと、かつてRX-7やRX-8が鳴り響かせた至高のサウンド。それはマツダの技術者たちの魂そのものであり、ファンがずっと待ち望んできた未来に他ならない。
アイコニックSPが提示した「2ローターRotary-EVシステム」は、その夢の未来形だ。カーボンニュートラル燃料でローターを回し、発電した電気でモーターを駆動する。もしこれが実現し、ワインディングでアクセルを踏み込んだなら、静寂の中にあの官能的なロータリーのハミングが響き渡るはずだ。時代に抗いながら、ロータリーの灯を絶対に消さないというマツダの執念が、最高の形で結実する瞬間をファンは夢見ずにはいられない。
そして、その夢を包み込むボディは、かつて世界を魅了したFD3S型のRX-7を強く彷彿とさせる。現代の厳しい安全基準をクリアしながら、これほどまでに低く構えたボンネットと、夜のストリートで妖艶に開閉するリトラクタブル・ヘッドライトがもし市販車として復活したなら、それは奇跡と呼ぶべきだろう。
バタフライドアを跳ね上げ、ミニマルながら包容力のあるコックピットに滑り込む。そんな未来のロードゴーイング・ロータリーの姿を想像するだけで、ファンがこのメーカーを愛し続けてきた理由がわかる気がするのである。
しかも、この物語は決して遠い幻などではない。発表後の凄まじい反響に突き動かされたマツダは、ロータリーエンジンの開発専門部署である「RE開発グループ」を正式に復活させ、本気でこのアイコニックSPの量産化に向けた挑戦へと舵を切った。独自の骨格構造に関する特許出願の動きも、マツダがRX-7の正統なる系譜を現代に蘇らせようとしている何よりの証拠ではないだろうか。
アイドロン製モデルカーのクオリティについて
机の上に置かれた1/18スケールのアイコニックSPを凝視していると、これが市販前のコンセプトカーであるという事実を忘れてしまう。このアイドロン製1/18モデルが、実車さながらの圧倒的な存在感を放っている背景には、マツダとメイクアップによる深い信頼関係と妥協のない共同開発のプロセスがある。
そもそも、メイクアップはこれまでにも「RX-VISION」や「VISION COUPE」のオフィシャルモデルを手がけており、その圧倒的な出来栄えはマツダ社内でも高く評価されていた。だからこそ、今回のアイコニックSPにおいても、マツダ側から「ぜひオフィシャルモデルとして発売したい」との依頼がメイクアップに直接寄せられ、プロジェクトが始動。これまでの信頼関係があったからこそ、一般発売に先駆けたマツダ公式での先行発売がスムーズに決定したというわけだ。
原型製作にあたっては、マツダから直接供出された実車の3D CADデータをベースに開発がスタート。さらに、メイクアップの開発チームは広島のマツダ本社へと招待され、実車を前にして、エクステリアやインテリア、カラーなどの開発に深く関わったデザイナー陣から直接レクチャーを受けるという貴重な機会を得た。そこで語られた実車へのこだわりや熱い要望を肌で感じ取ったことで、開発チームの「細部まで徹底的に作り込みたい」という想いが、さらに強くなっていったという。
その後もマツダのデザイナー陣による入念な監修や指摘を踏まえて、ミリ単位のディテールや色調のチューニングが施されている。まさにこれ以上はない、文字通りの「お墨付き」がこの一台には与えられているのだ。
とりわけ圧倒されるのが、マツダが「赤を大切にしたい」という情熱を注ぎ込んだコンセプトカラー、「VIOLA RED(ヴィオラ・レッド)」の再現性である。実車はホワイトのベースカラーに多層のクリアレッドを重ねることで、濁りのない鮮やかさと吸い込まれるような深みを両立させているが、アイドロンもハンドメイドならではの近似した塗装工程を忠実にトレースしている。
光の当たり方で妖艶に表情を変えるその佇まいは、熟練の塗装職人が幾重にもクリア層をコントロールして初めて到達できる領域であり、卓上に実車のステージをそのまま再現したかのような強い存在感を放っている。
さらに、見る角度によってデザインそのものが変化して見える凝ったデザインの専用ホイールへのアプローチも白眉だ。この細かな彫刻的造形を歪みなく再現するため、アイドロンは新規に金型を設計。レジン鋳造ではなく、シャープなエッジと高い精度を誇る「ABS樹脂製のインジェクション成形パーツ」を採用した。これにより、角度によって見え隠れする独自の面構成が1/18スケールへと完全に凝縮され、足元からこのモデルの品格を強烈に引き締めている。
美しいボディラインと一体化する三次曲面ウィンドウも、クリアフィルムではなく、贅沢なインジェクション成形の透明パーツで構成されている。実車において、マツダの故郷である広島の海で廃棄されるはずだった牡蠣の殻を白いパーツへリサイクルし、名産の藍染(デニム)をイメージしたインディゴ・ブルーのシートと織りなした、優美でサステナブルな内装世界。アイドロンはその独特なファブリックのツヤ感や陶器のような白さまでも、絶妙な色調で表現してみせた。
コックピットを覗き込むとき、服部佳洋氏のカメラが切り取るファインダーの向こうには、ただのミニチュアカーではない、マツダの未来の夢を共有した者たちだけが辿り着ける「美術品」としての極致が確かに存在していると感じる。入手をご検討の向きは、メイクアップのサイトをご覧になるか、同社に直接お問い合わせいただきたい。













