モデルカーズ

JPSカラーのダンディズムにシビレる!ハセガワ製プラモ「ジャガーXJ-S」を1984マカオ仕様にアレンジ【モデルカーズ】

カラーリング以外はETCと共通(らしい)

「東洋のモナコ」の異名を取るマカオで、毎年11月に開催されるグランプリ。そのメイン・イベントはF3世界一決定戦だが、セミファイナルのギア・レースもまた、もうひとつのメイン・イベントと呼ばれて人気が高い。狭く曲がりくねってアップダウンも激しい公道コースを舞台に、命知らずの箱レーサー達が火花を散らす大迫力のレースは、観客を熱狂させる。現在のギア・レースは世界ツーリングカー選手権の1戦だが、元々は地元富裕層の道楽から始まったイベントゆえ、1980年にはまだ単発のローカルイベントだった。1984年、そこにETC(欧州ツーリングカー選手権)からTWRジャガーとシュニッツァーBMWの2大ワークスが、それぞれJPSとマールボロというタバコブランドを背負って乗り込んできた。予選ではジャガーが1・3位、BMWが2・4位と互角。本戦序盤はポールから飛び出したトム・ウォーキンショーのジャガー#7に続き、ハンス・ハイヤーのジャガー#8もハンス・シュトゥックのBMW635CSiをかわして1-2体勢となる。BMWはギア比の関係でコーナーからの立ち上がりが遅いが、果敢に攻め続けたシュトゥックが中盤にはウォーキンショーに追いつく。しかし終盤に下位で多重衝突が発生して赤旗中断、リスタートで再びジャガーがBMWに大差をつけ、1-2で圧勝となった。

このレースに出走したXJ-Sは、同年のETCを戦ったグリーンの個体を黒く塗り変えたものと言われており、翌年には再びグリーンに戻されたため、JPSカラーの個体は現存していない。ローカルイベントゆえ資料も少なく、マカオ出場時のディテールには不明な部分も少なくないが、カラーリング以外に同年のETC仕様と大きな違いは無いと思われる。

さて、ここでご覧頂いているのは、ハセガワ製1/24スケール・プラモデルをベースに、このときのXJ-Sを再現した作品だ。ハセガワのXJ-Sは1986年にリリースされたキットで、同社のカーモデル復帰第1弾にあたる。1983年マイナーチェンジのXJ-S H.E.タイプを再現したもので、ロードカーのクーペとカブリオレ、TWRコンプリートカー(XJR-S 6.0)、そしてETCワークスカーなどレーシングタイプ数種類がある。

ETCレーサーはボディ金型の一部を差し替え、バンパー/前後エプロン/ドアミラーなどの外装部品からホイール/エンジン周辺/サスペンション/インテリアまで専用部品が追加されたもので、ロードカーとはほぼ別物だ。バンパー内側の切り欠きやアウトボード化されたリアブレーキ、金網状のアンダーパネルなど、実車を直接取材しなければ見えて来ないディテールがきっちり再現されている。

マカオ仕様のデカールは数社からリリースされているが、作例には地元マカオのブランド、Auto Colourの製品を使用した。1984年ドニントンとマカオ、1986年インターTECのセットで、品質は非常に良く、貼り易くてクリアーコート耐性も優れている。ただ、背びれのストライプやリアエンドのTWRのロゴが不足する等、考証には少々難があり、塗装で補うなどの工夫が必要だ。

サードパーティのデカールでモディファイ
ホイールアーチのフチは厚みが目立つので、デザインナイフで内側を斜めに削ぐようにして薄く尖らせた。車高が低いレース仕様はタイヤとのクリアランスが狭いので、この部分の厚みが目立つ。リアデッキのフューエルコック取付け穴は、裏側のモールドに沿ってスジ彫り用のタガネで彫り込むと簡単に刳り貫ける。丸めたペーパーを突っ込んでフチをきれいに整えておこう。フロントエプロンは接着一体化しても段差が残るが、これが実車に忠実な形状。ホイールアーチのフチはパテを加えて滑らかに繋げておく。

サイドマーカーのモールドは切り落とし、平らに整えておく。リアエプロンは塗装前にボディに接着し、継ぎ目をMr.SSPパテで平らに埋めた。スジ彫りは全体に浅く、そのままだと塗装で埋まってしまいそう。スジボリ堂製BMCタガネ(0.2mm)で彫り込んでおいた。前後バンパーにもデカールを貼るので塗装前に接着一体化。ボディとの継ぎ目は、目立つ上側のみパテ埋めして隙間を無くしておく。

フロントフードは脱着式だが前後方向の位置決めがないので、フード裏に2mmプラ角棒を接着しストッパーとした。パーティングラインを600番ペーパーで消した後、表面を3Mスポンジヤスリ(800~1000番)でアシ付け。ルーフ中央アンテナ穴の部分は肉が薄くヒケているので、裏の凹みにMr.SSPパテを盛り、表を平らに整える。開口部は全て内側からテープで養生。塗装のミストが内側に入り込むと、そのザラつきでガラスの収まりが悪くなる。ボディ内側に段ボールをハメて、両面テープとマスキングテープで止める。そこにうすめ液のキャップを両面テープとネジで固定すると、持ち手のビンが脱着できるので便利だ。

下地塗装はMr.フィニッシングサーフェイサー1500ブラックを使用、本塗りはガイアの002ピュアブラック。クリアーコートを1回行い、Auto Colourのデカールを貼る。実車はCピラーのヘリにもストライプがあるがデカールに入っていないので、塗装で補った。Mr.カラーC44タンにGX04キアライエローを少々加えて調色。リアエンド左右のTWRロゴもないので、キットの白いロゴのデカールにクリアーイエローを吹いて代用。Exクリアーで4回クリアーコート、中研ぎを入れてオーバーコートし、コンパウンドで磨いて仕上げた。

作例制作・文章=北澤志朗/フォト=服部佳洋 modelcars vol.263より再構成のうえ転載

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